セイコーが誇る国産初のクロノグラフ『クラウン クロノグラフ』
今回紹介するのは、セイコーが手がけた国産初のクロノグラフ『クラウン クロノグラフ』。東京オリンピック時に販売された貴重な個体の魅力を解説する。
東京オリンピックに合わせて開発された手巻きのワンプッシュクロノグラフ
ダイバーズウォッチやクオーツウォッチの大躍進に隠れてあまり知られていない事実だが、セイコーはクロノグラフの分野においてもパイオニア的存在である。
その歴史は、1964年に開催される東京オリンピックに合わせて開発された手巻きのワンプッシュクロノグラフ『クラウン クロノグラフ』から始まった。ワンプッシュクロノグラフではあるものの、ストップウオッチの確実な制御を可能とする「ピラーホイール」を採用するなど、随所に妥協なきモノづくりを感じさせる国産初のクロノグラフとして、現在も語り継がれいる。
いくつかの派生モデルがある中で今回紹介する1964年製の個体は、東京オリンピックに合わせて販売されたモデルで裏蓋に聖火マークが描かれているモデルだ。プラスチック製の回転ベゼルと2時位置のプッシュボタンでクロノグラフの操作を行い、当時では珍しいかった金属製のブレスレットも標準していた。
オリジナリティやコンディションにも優れており、割れやすいプラスチックベゼルの状態も良く、裏蓋の青いシールも所々に残っている。
記念碑的な手巻きムーブメントCal.5719Aは、手巻きや針回し、クロノグラフの操作も申し分ない。2時位置のプッシュボタンを押すごとにセンターのクロノグラフ針を、「スタート」「ストップ」「12時位置へリセット」できる機構を備えている。
状態の良さもさることながらスタイリッシュな外装ゆえ、幅広いファッションと合わすことができることも嬉しい限りだ。