【バイヤーズ・コラム】90年代のヴィンテージ時計がオススメな理由

2023.06.12
Written by 赤井幸平

文=赤井幸平

90年代のロレックス『サブマリーナー』

このコラムはバイヤーであり、現在も時計販売に関わっている人物によるもの。買い付け、売る側の視点から、ヴィンテージ時計の魅力について語っていく。

偏見と個人的認識による90年代

「おすすめの時計ありますか?」とよく聞かれる。

もちろん趣味好みによって違うので、接客的な正解は質問してきたお客様へのヒアリング、深掘りとなっていくことになる。ただ、偏見と、個人的な認識(これまた足りない知識で恐縮だが)において、是非おすすめしたいのが90年代の時計である。

おすすめな理由は次のように3つある。

①ヴィンテージ感

②良いコンディション

③入手難易度

①ヴィンテージ感

いくつかの要素があるが、ここでは夜光について言及したい。

おおむね97年まで多くのブランドで使用されたトリチウム。正確に言うとトリチウムガスが封入されたガラス管やカプセルの内側の発光塗料に、トリチウムから発せられるβ線があたることで発光するという仕組みだ。ただトリチウムからのβ線については、その多くが生産から20年以上経過しているため発光量は少なくなっているか全く光らない個体が多いのが現状だ。

そこで注目すべきは経年変化による色味の変化だ。本来の白っぽいカラーから少しアイボリーがかった色味からより黄味がかったものや、オレンジっぽいものなど個体差が大きい。またその経年変化からムラが出るものも多々あり、色味やバランスなどを考慮すると個体別に非常にさまざまな表情を見せてくれる。

現在では一部のブランドにおいてはトリチウム系の夜光塗料を採用しているが、ほとんどのブランドは蓄光型のルミノバやクロマライトが採用されている。

当時使用された夜光塗料が現代になり、その経過した時を色という形で示してくれているのがおもしろいところだ。

②良いコンディション、性能

当然のことながら製造から時間が経てば経つほど経年による変化は大きくなり、使用年数が長ければ使用傷は多くなる(可能性がある)。そのため単純に新しいものの方が状態は良い可能性が高いと言えるだろう。これがそれ以前の年代比べ新しい90年代の時計を推す理由の一つだ。

またキャリバーや素材などについても近年のモデルと大きく違わぬ物が使われている。ということは実用性の側面で非常に安心感があるのだ。

たとえば2020年まで製造されていたロレックス『サブマリーナデイト 16610LN』に使用されていたCal.3135は89年に登場したものだし、ケース素材においても現在まで採用される904Lステンレスは86年に『サブマリーナ』に採用されており、かつての316Lステンレスよりも耐摩耗性や耐食性に優れるとされる。

90年代になると、ヴィンテージの風合いが出てくる外装とは逆に、非常に実用的と言えるスペックが備えられているのである。

③入手難易度

こちらも流通量の多いロレックスの『サブマリーナー デイト』を例に挙げてみたい。

某通販サイトで検索すると2023年5月時点でRef.1680が約30本、Ref.116610は200本ヒットする。

この数字を見ると希少な1680の方が、とも思えるが、良いコンディションのものは既に一部しかなくなっており、間違いなく価格が非常に高くなっているので大変である。

以上が、90年代のヴィンテージ時計をおすすめする理由だ。欲しい時計に悩んでいたら、一度90年代という切り口で見てみるのも面白いだろう。

オススメの90年代ウォッチ

最後におすすめの90年代ウォッチを紹介したい。どちらも定番のため入門機としてもおすすめだが、こだわると沼れるいいモデルだ。

ロレックス『エクスプローラー1 14270』

①ロレックス『エクスプローラー1 14270』

88年に登場したモデル。ブラックアウトと呼ばれる初期個体も非常に面白いが、おすすめは95-97年ごろのモデル。プライスレンジはおおむね80万円から100万円ほどでフルセットのダメージが少ない個体を見つけることが出来るだろう。

②オメガ『スピードマスター プロフェッショナル デラックス 3592.50』

89年から95年まで販売されていたモデル。ソリッドバックの3590.50の裏スケバージョン、となるのだが、ただ裏蓋が交換されただけでなくムーブメントに金メッキの加工がされており、魅せるムーブメントとなっているのが特徴だ。

先行して『スピードマスター20周年記念モデル』として345.0808が販売されているが、製造数が1000本と極めて少ないことやメッキ加工の色味が異なることから入手難易度が跳ね上がる。3592.50も比較的に見つけやすい。

保証書などの付属品がついていること自体が珍しいためこちらはフルセットとはなかなかいかないが、プライスレンジとしては60万から80万円ほどとなる。

現行品の裏スケモデルにはない金メッキ加工は3572.50に変わるまでの6年間ということ、当時の製造数の少なさを考えるとコストパフォーマンスの高い一本と言えるだろう。

90年代のオメガ『スピードマスター プロフェッショナル』

writer

赤井幸平

91年福井県出身。大学卒業後某中古時計店にてバイヤー兼販売員として7年ほど勤務。この度は、時計好きつながりでファイアーキッズにコラムを書くことになった。好きな時計は90年代ロレックス全般 、オーデマピゲ『ロイヤルオーク』、IWC『ポルトギーゼ』

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