ファーストを超えた? グランドセイコー『57GS』が通に選ばれる理由

2025.06.09
Written by 編集部

時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。

グランドセイコーのファーストモデルがヴィンテージ市場で脚光を浴びる一方、その後継機『57GS』も注目を集めている。防水性の向上、カレンダー機能の搭載、そして国産初の金無垢ケースモデルなど、実用性と高級感の両立を果たした“セカンドモデル”。FIRE KIDSでも長年ヴィンテージを扱ってきた野村・松浦の両氏は、「むしろ完成度ではファーストを超えている」と口を揃える。今回は『57GS』の魅力を深掘りする。

ファーストを超えた実用性と完成度

「実用性が高いのはやはりセカンドだよね」と語るのは野村さん。確かにファーストは裏蓋がスナップバックというはめ込み式だったために、水に弱いという弱点があったが、『57GS』ではスクリューバック構造になり防水性が高まった。「実用機」としてはやはりこの改良は大きい。

加えて、カレンダー機能が新たに搭載されたのも大きな違いだ。「当時の高級時計はやはり日付付きなんだよね、スマホがない時代の話だから」と野村さんは話す。見た目はクラシックなまま、機能性が加わったセカンドは、実用機としての完成度が格段に上がっている。

さらに、ファーストには存在しなかった18金無垢ケースを採用したモデルも登場した。Ref.5722-9000はその代表格で、当時の国産時計としては異例の高級仕様。「グランドセイコーの金無垢セカンドモデルは極端に少ないですよね」と松浦さんが話すように希少性の高いモデルでもある。グランドセイコーが目指した“高精度かつ高品質”を体現した1本といえるのではないだろうか。

GS規格とロゴ誕生の転換点

初期のセカンドモデルには「Chronometer」の表記が残っているが、途中からこの表記が消え、6時位置に「GS」のロゴが入るようになる。これはセイコーがスイスのクロノメーター検定に代わり、自社独自の精度基準(GS規格)を設けたことに伴うデザインの変化だ。

「すごいですよね、クレームが入って引き下がるだけじゃなくて『上行っちゃおうぜ』というセイコーの精神が」と松浦さん。GSの文字をブランドの象徴として打ち出すことで、グランドセイコーが独自路線を歩み始めたことを意味している。

「初期はRef.43999という型番からスタートして、特に初期はSDダイヤルが混在している。製造期間がすごく短くて狙い目な時計だよね」と野村さん。SDとは“Special Dial”の略で、インデックスやロゴ部分に金属を使った特別仕様のこと。製造期間が短く、存在数も少ないため、コレクターの間では今も根強い人気がある。

ファーストに比べ、セカンドGSはまだ語られ尽くしていない。「セカンドが良いというのは、ファーストのムーブメントのCal.3180がすごく良かったから。Cal.430という機械もカレンダーを追加したくらいだからね」と野村さんは語る。後期型になると振動数を上げてくるが、基本的に見た目は似ており、非常に良くできた機械だと言える。

ヒット作だからこそ市場に出回っている数も多く、値段が上がりすぎていないところも嬉しいポイントだ。まだギリギリ20万円台でも状態の良いものが出てくると言う。グランドセイコー ファーストが注目されがちではあるが、実用性が高い“セカンドモデル”も選択肢の1つにいかがだろうか。

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