あなたは無地派? 模様派? ヴィンテージ腕時計で分かれる美意識
時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。
ヴィンテージ腕時計の世界では、シンプルな「無地」文字盤を好む人もいれば、模様や装飾が入った個性的な文字盤に惹かれる人もいる。今回の対談では、FIRE KIDSのスタッフ芦野と三好が「無地vs模様入り」をテーマに本音トークを展開。無駄のない美しさと、無駄があるからこその面白さ、その狭間で揺れる時計愛好家たちのリアルをお届けする。
シンプルの極み“無地”に宿る職人技
「僕は無地・シンプルな時計が好きなんですね」と語る芦野さんが選んだのは、パテックフィリップの『ラウンドケース Ref.3520/D』。ホワイトのローマンダイヤルに18KWGケース、クルドパリのベゼルというミニマルな構成ながら、圧倒的な品格を放つ。

「これはもう、究極の1本。これに勝るものはない」と芦野さんが言い切るこの時計。三好さんも「周りのフチが生きてくるよね」「クルドパリの仕上げが素晴らしい」と共感を寄せる。模様入りを好む三好さんでさえ、この1本には一目置く。
「シンプルな時計こそ、職人技が光る」と芦野さん。無地の文字盤は「飾らない=ごまかしが効かない」。パテックのような時計でこそ、仕上げの精度や造形の繊細さが際立つという。
また、シンプルな時計はスーツなどのフォーマルにも馴染みやすく、TPOを選ばず使える。「一生もの」として長く愛用するには、やはり無地の時計が選ばれる傾向にあるようだ。
無駄こそ美学? 模様入りの時計が語る個性
一方、三好さんが強く推したのが「無駄の美」を象徴するカルティエ 『パシャC(カッパーダイヤル/グリッド入り)』。風防にはメタルのグリッド、リューズには装飾カバー、インデックスも凝ったデザインだ。実用性とはやや離れているかもしれないが、そこにこそ魅力があると語る。

「“見づらいよ”って思うような文字盤でも、時計好きからすると“それが良い”ってなる。模様や装飾の無駄が、むしろ時計の味なんです」
パシャCのような1本は、賛否が分かれるのも事実。芦野さんも「すごく洒落ていて良いと思うけど、服に合わせづらい」と正直な感想を漏らす。しかし三好さんは「白じゃないからこその魅力もある」という。King Gnuの常田大希さんも愛用しているというストーリー性も、所有欲をそそる。
「万人受けしない時計こそ、造形物としては面白い」と三好さんは語る。ファッションや美術と同様、“ハレーション”が生まれるものは、記憶にも残る。
結局、時計選びは好みやライフスタイル次第
無地派の芦野さんも、「柄物ありだな」と最後には共感を示す。「無地の時計を数本持っている方は、次は模様のあるモデルにチャレンジしても良いかもしれない」と語るように、時計コレクションが進むと冒険したくなる気持ちも芽生える。
また、三好さんは「無地好きな人ほど、柄物を1本持つと馴染む」とも言う。無地の時計を着けてきた人は、ファッション全体もシンプルにまとまりがちだが、そこに模様が施された時計を一点投入するだけで、全体のスタイルが際立つ。
一方で、時計を初めて購入する人には「まずは無地が良い」と芦野さん。無地の方が服を選ばず、汎用性も高いためだ。高級時計であるパテックなどを選ぶ際も、「長く使いたい」ならばシンプルなものがベストというのが2人の共通見解である。
無地の潔さに惹かれるか、模様入りの遊び心に惹かれるか、それはその人の美意識やライフスタイルに直結する。どちらが正解ということはない。両方の魅力にも触れることで、時計選びがより楽しく、深くなるということだ。
「シンプル=上品」「無駄=面白さ」どちらも、ヴィンテージ腕時計だからこそ許される幅の広さ。その中で自分らしい1本を見つけてみてはいかがだろうか。
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