エルプリメロは手巻きなのか自動巻きなのか
ゼニスの「エル・プリメロ」は、時計史において高精度の自動巻きクロノグラフとして名高いムーブメントです。その誕生から現在に至るまで、多くの時計愛好家に支持されてきました。しかし、その技術的な特徴や歴史的背景を正確に理解している方は意外に少ないかもしれません。
そこで、エル・プリメロの誕生背景や高振動クロノグラフとしての技術、例外的な手巻き仕様の存在、そしてヴィンテージ市場での価値まで、専門家の視点で詳しく解説します。
エルプリメロとはどんなムーブメントか

ゼニスが誇るエル・プリメロは、時計史の中でも特別な存在です。誕生から現在に至るまで、多くの時計愛好家やコレクターに評価され続けており、ヴィンテージ市場でも高い人気を誇ります。エル・プリメロがどのような背景で生まれ、どんな技術的特徴を持つのかを理解することで、自動巻きと手巻きの関係や例外的な手巻き仕様も自然に整理できます。
エルプリメロ誕生の背景と位置づけ
エル・プリメロは1969年にゼニス社が発表した、世界でも屈指の高精度自動巻きクロノグラフムーブメントです。当時、クロノグラフは手巻きが主流で、自動巻きクロノグラフは開発が難しいとされていました。その中でゼニスは、毎時36,000振動という高振動を実現しながら、自動巻きのクロノグラフを量産することに成功しました。
この成果は、単なる技術的快挙にとどまらず、ゼニスのブランド価値を飛躍的に高め、時計史におけるエポックメイキングな出来事となりました。ヴィンテージ市場でも、オリジナルの初期モデルは非常に高い評価を受けています。
高振動クロノグラフとしての技術的特徴
エル・プリメロの特徴は、まずその高振動にあります。毎時36,000振動(10振動/秒)により、クロノグラフの計測精度を1/10秒単位まで高めることが可能です。また、ゼニスは一体型クロノグラフ設計を採用しており、従来のモジュール式に比べてムーブメントの安定性と耐久性が向上しています。
さらに、自動巻き機構を組み込むことで、日常的な使用においても巻き上げの手間を最小限に抑えられます。これらの技術的な特長は、現代の時計ファンから見ても十分に魅力的であり、エル・プリメロが今なお評価され続ける理由のひとつです。
エルプリメロは手巻きなのか自動巻きなのか

エル・プリメロのムーブメントは、多くの時計愛好家の間で「手巻きなのか?」という疑問を呼び起こすことがあります。しかし実際には、エル・プリメロは自動巻きとして設計され、日常使用における利便性を重視しています。ここでは、基本的な自動巻きの仕組みと、手巻きと混同されやすいポイントについて整理します。
基本は自動巻きムーブメントである理由
エル・プリメロは発表当初から自動巻きクロノグラフとして設計されました。自動巻き機構により、腕に装着するだけでローターが回転しゼンマイを巻き上げるため、毎日手で巻く必要はありません。この設計は、当時のクロノグラフの常識を覆す画期的なものであり、日常使いの利便性と高精度を両立させています。
また、高振動クロノグラフであることに加え、一体型クロノグラフ設計を採用しているため、モジュール式に比べて安定性と耐久性が高く、長期間の使用にも耐えられる仕様になっています。
手巻きと混同されやすいポイント
一部の情報や歴史的資料の中で、エル・プリメロは手巻き仕様のムーブメントが存在したと誤解されることがあります。これは1960年代末に開発されたCal.420の存在や、ヴィンテージ時計に手巻き機構を備えた例外モデルがあることが理由です。しかし、これらは例外的であり、量産モデルとして市場に流通したのは自動巻きが中心です。
そのため、現行やヴィンテージ市場で流通しているほとんどのエル・プリメロは自動巻きであり、手巻きとして扱えるモデルは非常に限定的である点を理解しておく必要があります。
例外として存在した手巻き仕様エルプリメロ
エル・プリメロは基本的に自動巻きとして知られていますが、例外的に手巻き仕様のムーブメントも存在しました。その代表例がCal.420です。これは、ゼニスの自動巻きムーブメントCal.400をベースにローターを取り除き、手で巻き上げる仕様として成立させたモデルです。量産品というより、特別な試みや限定的な歴史的仕様として開発されました。
Cal.420は自動巻き版と同じ高振動設計(毎時36,000振動)を維持しており、高精度クロノグラフとしての性能は損なわれていません。この手巻き仕様は非常に限定的で、ヴィンテージ市場においても希少価値が高く、コレクターの間で注目されています。
手巻き仕様の開発は、技術的実験や特別モデルとしての意図が背景にありました。自動巻き機構を省略することで、クロノグラフの精度や操作性を検証する目的があったと考えられています。また、一部の時計メーカーやコレクター向けに特注された個体も存在し、現在でも話題になることがあります。
こうした例外的手巻きモデルの存在は、検索行動や誤解にも影響しています。「エルプリメロ 手巻き」と検索されるのは、Cal.420や特別モデルの情報が残っていること、そしてヴィンテージ市場で手巻きに触れられる機会があることが理由です。基本的には自動巻きですが、こうした歴史的な例外があることを理解することで、エル・プリメロの全体像を正確に把握できます。
現在評価されているエルプリメロの本質

エル・プリメロは単なる歴史的名作ではなく、半世紀以上を経ても時計愛好家やコレクターに熱狂的に支持されるムーブメントです。その理由は、当時としては革新的な高振動クロノグラフであること、腕に装着するだけでゼンマイが巻き上がる自動巻きの利便性、そしてヴィンテージ市場での価値の高さが揃っているからです。
歴史的価値だけでなく、現代のユーザーが実際に手に取り、日常で使える精度と信頼性を兼ね備えている点が、エル・プリメロの本質です。現代における評価やヴィンテージ市場での価値を整理することで、読者が自分にとっての魅力を正確に理解できる視点を提供します。
自動巻きエルプリメロが支持される理由
自動巻きエル・プリメロは、毎時36,000振動という高精度クロノグラフであり、1/10秒計測が可能な性能を持っています。発表当時から先進的なムーブメントで、今でも機械式時計ファンにとっての基準となる存在です。腕に装着するだけでゼンマイが巻き上がる自動巻き機構により、毎日の手巻き操作を必要とせず、クロノグラフ機能を安定して使用できます。
さらに、一体型クロノグラフ設計により、モジュール式よりも耐久性と安定性が向上しています。ヴィンテージモデルでも、高振動により計測精度が高く、現代の時計愛好家から十分に信頼される性能を保持しています。
ヴィンテージ市場における価値の見方
ヴィンテージ市場では、エル・プリメロ初期モデル(例:A386やトリコロールダイヤルモデル)は、希少性と歴史的・技術的価値の両面で高く評価されています。流通量が限定されていることや、元の自動巻きムーブメントが安定して機能する点も価値を決める重要な要素です。
正規の自動巻きムーブメントであるため、手巻きの例外モデルより流通量が多く、比較的入手しやすいことも評価に寄与しています。このため、ヴィンテージ市場の評価は安定しており、コレクターや時計愛好家にとっても手に入れる価値が明確に存在します。
代表的自動巻きエルプリメロ搭載モデル
エル・プリメロ搭載の時計は、ゼニスの技術と歴史の象徴であり、ヴィンテージ市場や現行コレクションで高い評価を受けています。ここでは、特に代表的な3つのモデルを紹介し、それぞれの特徴や魅力を詳しく解説します。
A386

A386は1969年に発表されたトリコロールダイヤルのオリジナルモデルで、エル・プリメロの象徴的存在です。当時の技術水準としては革新的な毎時36,000振動の高振動クロノグラフを搭載しており、1/10秒単位の計測が可能でした。
ヴィンテージ市場では、希少性とデザインの完成度が評価され、コレクター間で高値で取引されることもあります。特にオリジナルの文字盤やケースの保存状態が価値を大きく左右するため、細部まで注目されるモデルです。
また、A386は現代クロノマスターシリーズのデザイン的・技術的ルーツであり、トリコロールカラーやラウンドケース、エル・プリメロの高振動自動巻きクロノグラフ機構は現行モデルに引き継がれています。
A384

A384はA386と同時期に登場した角型ケースの初期モデルで、ゼニスがクロノグラフ設計において実験的なデザインを取り入れたモデルです。一体型クロノグラフ構造を持ち、安定した精度を実現しています。
このモデルはヴィンテージ市場で高い人気を誇り、角型ケースやシンプル文字盤を好むコレクターに評価されています。また、A384は独自のデザインとして個性を持つため、A386とは異なる魅力を楽しむことができるモデルです。
クロノマスター

クロノマスターシリーズは、A386のデザインと高振動自動巻き技術を受け継いだ現行モデル群です。トリコロールカラーやクラシックな要素を継承しつつ、現代的にブラッシュアップされています。
このシリーズは高振動自動巻きクロノグラフとしての精度や耐久性を保持し、現代の使用環境に合わせた防水性やケース素材、装着感も備えています。ヴィンテージ要素と実用性を両立させたモデルとして、現行コレクションの中核を担い、時計愛好家からも高い支持を受けています。
エルプリメロを選ぶ際に押さえておきたい視点

エル・プリメロ搭載モデルを選ぶ際には、デザインや価格だけでなく、ムーブメントの特徴や使用目的、ヴィンテージとしての保存状態など複数の観点を総合的に考慮することが重要です。現代のクロノマスターシリーズは高振動自動巻きクロノグラフを搭載しており、精度と耐久性に優れているため、日常使いを重視する場合は現行モデルや整備済みのヴィンテージモデルが安心です。
ヴィンテージモデルを選ぶ場合は、ケースや文字盤、針の状態が価値に直結するため、オリジナル部品が残っているか、リダイヤルや再研磨が行われていないかを確認することが大切です。加えて、A386のトリコロールダイヤルやA384の角型ケース、クロノマスターの現代的デザインなど、モデルごとの特徴も踏まえて、使用シーンや好みに合わせて選ぶと長く愛用できます。
さらに、価格や流通量も選定の重要な要素です。ヴィンテージモデルは希少性により価格が高騰している一方、現行モデルは安定した流通があり、入手しやすさやメンテナンス面でもメリットがあります。これらの視点を総合して、自分に最適なエル・プリメロモデルを選ぶことが求められます。
エルプリメロに関するよくある質問
エル・プリメロに関しては、自動巻きか手巻きか、ヴィンテージモデルの扱い方、精度や使い勝手など、初心者から愛好家までさまざまな疑問が寄せられます。ここでは、特に多くの人が抱く代表的な質問を整理し、わかりやすく解説します。
Q:エルプリメロに手巻きモデルは存在するのか
A:エル・プリメロは基本的に自動巻きクロノグラフですが、ごく少数例外として手巻きに改造されたモデルも存在します。一般的に販売されているものは自動巻きであり、手巻き仕様は特別なカスタムや限定ケースに限られます。
Q:エルプリメロは毎回手で巻く必要があるのか
A:通常のエル・プリメロ搭載モデルは自動巻きなので、腕に装着して使用すれば自動的に巻き上がります。使用頻度が少ない場合はリューズで巻き上げることもできますが、日常使用では毎回手で巻く必要はありません。
Q:手巻きクロノグラフと何が違うのか
A:エル・プリメロの自動巻きクロノグラフは、巻き上げ機構が自動で動作する点が最大の違いです。手巻きクロノグラフは定期的にリューズで巻く必要がありますが、エル・プリメロは高振動の精度を維持しつつ、利便性も高い構造になっています。
Q:ヴィンテージのエルプリメロで注意すべき点は
A:ヴィンテージモデルを選ぶ際は、ケースや文字盤、針の状態、オリジナル部品の有無を確認することが重要です。また、定期的な整備履歴があるかどうかも価値と使用感に直結します。
Q:エルプリメロはどんな人に向いているムーブメントか
A:高振動クロノグラフの精度を楽しみたい方、歴史的価値やヴィンテージ時計の魅力を理解している方、そしてデザインや技術を重視する方に向いています。日常使いの実用性とコレクション性の両方を兼ね備えている点も特徴です。
まとめ
エルプリメロは、ゼニスが誇る高振動の自動巻きクロノグラフとして、精度と耐久性、そして歴史的価値を兼ね備えています。ごくまれに手巻き仕様の例も存在しますが、基本は自動巻きとしての利便性が大きな魅力です。ヴィンテージモデルから現行モデルまで、その魅力は幅広く、多くの時計愛好家に支持されています。
その上で、ムーブメントの特性やデザインの魅力を理解し、腕時計としての実用性や長く愛用できる点を踏まえれば、選ぶ際の判断もより納得感のあるものとなります。ぜひ、エルプリメロの世界に触れたうえで、時計の歴史や技術、デザインの深みを楽しみながら、その価値をじっくり味わいましょう。
記事の監修
福留 亮司
『流行通信』を経て1990年に『エスクァイア日本版』編集部に参加し、1995年に副編集長に就任。
1997年よりフリーとして活動し、ファッション・時計・ライフスタイル領域を中心に幅広い取材・編集を手がけてきた。
2011年には『GQ Japan』シニアエディターを務め、雑誌・Web双方で豊富な実績を持つ。
時計分野では1990年代後半から企画・ブランド取材・モデルレビューを担当し、バーゼルワールドやジュネーブサロン(現 Watches & Wonders)などスイスの主要時計展示会を長年取材。ヴィンテージから現行モデルまで横断的な知識と深い造詣を有する。
writer
秋吉 健太
秋吉 健太(あきよし けんた)
編集者/クリエイター
雑誌編集20年、Web編集10年。『東京ウォーカー』編集長、Yahoo!ニュース エキスパートとして多数の記事を制作し、インタビュー企画・レビュー・解説記事など一次情報に基づくコンテンツを数多く手がけてきた。時計分野では5年以上にわたりブランド取材、モデルレビュー、専門家インタビューを担当し、ヴィンテージと現行の両領域に精通している。
FIREKIDSマガジンでは、ヴィンテージ時計の入門記事から専門的な取材記事、SEO構成の設計まで幅広く担当。正確な年代表記、モデル背景、真贋情報など、時計専門店として求められる一次情報と正確性を重視した記事づくりを心がけている。

