渋さと優美さを兼ね備えた長方形ケースの傑作、ジラール・ペルゴ『ヴィンテージ1945』
根強い人気を誇る老舗ブランド
ロレックスやパテック フィリップのような一般的知名度はないが、スイスには愛好家に根強い人気を誇る老舗ブランドが数多存在する。ジラール・ペルゴはそんなブランドのひとつ。完全自社生産のマニュファクチュールブランドでもあり、その技術力には定評がある。
1791年に創業されたジラール・ペルゴは、世界で4番目に古い時計ブランドといわれている。当初はポッド社という名で工房をジュネーブに構え、腕時計の量産を行っている。これは時計初の試みだった。
そんなポッド社がジラール・ペルゴとなったのは1856年のこと。スイスの時計職人コンスタン・ジラールが52年にジラールを設立。その後マリー・ペルゴと結婚し、夫婦の姓を合わせジラール・ペルゴとしたのだ。そして、ポッド社の工房を引き継ぎ、その伝統をも受け継いだわけだ。その際に、工房をジュネーブからラ・ショード=フォンに移転している。
高度な技術により多くの名作ムーブメントを生み出したジラール・ペルゴは、67年のパリ万国博覧会において”スリー・ゴールド・ブリッジ付きトゥールビヨン”を出展。金賞を受賞し、世界中から注目を集めている。現代の腕時計の看板にもなっている複雑機構を150年以上前に開発していたという、とんでもない技術力である。
また、この時期(日本は幕末)にマリー・ペルゴの弟であるフランソワ・ペルゴが来日し、横浜に時計商社を設立。日本で初めてスイス時計を正規輸入している。
ジラール・ペルゴのフラッグシップ
そのジラール・ペルゴが、現在フラッグシップとしているのが『ヴィンテージ1945』である。1995年に誕生したこのモデルは、文字通り“1945年”に製作されたモデルをモチーフにしている。
直線や幾何学模様を多用したアール・デコスタイルのデザインで、上品で落ち着いた長方形デザインが魅力。ケースは風防ガラスから針、文字盤に至るまで手首に沿ってカーブしており、抜群の装着感を持っており、サイドも鋭角的にデザインされたラグの美しさが目を惹いている。
95年当時、CEOの職にあったルイジ・マカルーソは、後に「復刻したのはデザインが素晴らしいから。当時はアール・デコを基調としたデザインがモダンデザインと受け止められると思ったから」と語っている。
そも目論見はバッチリと当たり、「ヴィンテージ1945」は大成功。当初、限定生産の予定だったのをレギュラー化に切り替えている。
もちろん、技術力定評のあるジラール・ペルゴのモデルなので、ムーブメントは安定感があった。さらに抜群の評価を得たのが、仕上げの美しさだった。部品にはペルラージュ仕上げが、ローターにはコート・ド・ジュネーブ装飾が施されており、これらすべてが職人の手作業によっておこなわれている。その美しさは間違いなくスイス時計界でもトップクラスと言っても過言ではない。
「ヴィンテージ1945」は、ヴィンテージ感溢れるデザインながら、現代的な耐久性や防水性を備えた傑作。華美な装飾や主張はないが、時計通の愛好家からの支持が非常に高いモデルだ。状態にもよるが、2000年代のモデルが30万円前後という価格なので、かなりオススメである。