<30万円台で手に入る>ヴィンテージロレックスの魅力と選び方
出演:野村店長×藤井(販売スタッフ)
ちょっと頑張れば“一生もの”が手に入る30万円台
今回は、野村店長が「入門だとこのくらいの価格が良いよね」と話す、30万円台のロレックスを紹介する。30万円はけっして安い金額ではないが、“一生もの”として考えると高くはないといえるだろう。
「一生ものが20万円台で買えた時代があるけれど、もう少し高くてもいいよね?」と野村店長。藤井さんも「もうちょっと出した方が満足度が高くなりそうな……」と語る。そこで、ちょっと頑張れば買える価格帯として浮上するのが30万円台。時計市場全体が高額になっている今、古いロレックスならば30万円台でより良い“一生もの”が手に入る。
それでは、30万円台で買えるロレックスを3本紹介しよう。どれもシンプルでありながら個性的なヴィンテージだ。
王道でシンプルな『オイスター』
まずは、王道の『オイスター』(1966年製 エンジンターンドベゼル Ref.6427 リベットブレス)。大きな特徴は、放射線状に模様が施されているエンジンターンドベゼルであることだ。そして、リベットブレスが付いている。
「リベットブレス付きで30万円台のロレックスはなかなかないですもんね。これは良いんじゃないですか!」と藤井さん。「なかなかないね」と野村店長も唸る1本だ。
「一番シンプルな手巻きモデルで入門者に優しい。『手巻きの時計ってどうなの?』という声があるけれど、やっぱり自分で巻いてあげるって楽しいよね」(野村店長)
「僕も最初に買ったのが6694の手巻きだったんですけれど、苦にならないですね」(藤井さん)
野村店長はサラリーマン時代に「職場に着いたら巻く」をルーティンにしていたようだ。なぜなら、当時のパソコンは立ち上がるのが遅かったから。持て余している時間を手巻きの時間に当てていたという。そんな一手間も時計好きには愛おしい。
ロレックス嫌いを公言している野村店長だが、今回は「守備範囲だ」と語る1940年代の『オイスター』を着けている。どうやら売れ残ってしまったものらしい。売れ残ったものの安売りはしたくないと思っているうち、愛着が湧いてきて迎え入れたようだ。
冒頭で述べたように、エンジンターンドベゼルとリベットブレスが付いているところは、人と違うものが欲しいと思っているなら注目すべきポイント。野村店長はリベットブレスについて「薄っぺらい。悪口言っちゃった(笑)」と話すが、付け心地は良いもよう。
「古いタイプの良いところですよね。だんだん自分の腕にフィットしてくる感じ。良い靴を買うと自分の足の形になっていくみたいな感覚があると思うんだけれど、それに近いかな」(野村店長)
手巻きを楽しみながら、自分の時計として育てていく——。そんな感覚を持ちたい方にはオススメの1本だ。
上品でエレガントな『オイスター スピードキング』
続いて紹介するのは『オイスター スピードキング』(1963年製 Ref.6430 純正リベットブレス)。ファイアーキッズの2022年ウェブサイト閲覧ランキングで2位にランクインした『オイスター』と同様、少々小ぶりなボーイズサイズのものである。
珍しく文字盤の下半分には何も印字されておらず、見た目はとてもシンプルだ。通常は“PRECISION”や“CHRONOMATER”と表記されているが「忘れちゃったんじゃない?(笑)何か事情はあったんだと思いますけれど」と野村店長。
当時の時計は何も書いていないものも散見されるため、シンプルな時計が好まれていたタイミングだったのかもしれないと分析する。“SPEEDKING”と入っているが、モデルによっては後から印字することもあった時代で、文字盤は通常の『オイスター』と共用していたのではないかという。
そして、特筆すべきはボーイズサイズであることだ。
「今だとちょっと考えられないサイズですね」(藤井さん)
「このサイズは当時、欧米の男性が着けていた。1940年代だとこのサイズが主流。これは1963年のモデルなんだけれど、たぶん年齢層が上の人たちはまだこのサイズを好んでいた時代だよね。若者はワンサイズ・ツーサイズ大きいものを着けるけれど、おじさんたちにはこのサイズ感が支持されていたんだと思う」(野村店長)
「エレガントですよね。針もアルファですし」(藤井さん)
この日、藤井さんが着けていたのはロレックスの『デイデイト』(1960年製 18KYG Ref.1830 剣針 ギャランティー付き)。藤井さんはアルファハンドが好きで、紹介している『オイスター スピードキング』もアルファハンドで好みだという。
「『オイスター スピードキング』あたりを入門として買った人が『デイデイト』に行っちゃうんですよね」と野村店長。藤井さんは「まさにその道を歩んでいますね」と笑う。
ラグ幅はリベットブレスとしては珍しい17mm。実際に着けてみるとどのような印象があるのだろうか。
藤井さんの身長は188cmあるが、腕が細いため収まりはいいようだ。『オイスター スピードキング』は、着けるとさらにドレッシーで上品な印象を与える。アルファハンドであることや“PRECISION”の文字がないことで「ドレスウォッチっぽい雰囲気がある」と藤井さん。野村店長は「クロコとかのお洒落な革ベルトをつけても格好良いね」と提案する。いずれにしてもエレガントに着けこなしたい人にオススメだ。
藤井さんに続き、「こういう時計は僕みたいな腕が細めで、五十肩も経験して重いのはちょっと……という人が着けると合うんだよね」と言いながら着けてみる野村店長。
「やっぱり合いますね、野村さん!」(藤井さん)
「ごちゃごちゃっと文字が入っているのもそれはそれで格好良いけれど、すごくシンプルなものがよく見えるタイミングはある。その極みみたいな時計だよね」(野村店長)
『オイスター スピードキング』もリベットブレス付きで30万円台と、貴重でお買い得な1本となっている。
ロレックスらしくない?『プレシジョン』
3つ目は、藤井さんが「ロレックスらしからぬ感じ」と語る『プレシジョン』(1974年製 Ref.34.110 手巻き)を紹介する。ロレックスではほかに『チェリーニ』が多く作られていた頃の時計だ。
1974年には安くて正確なクォーツが出始めており、それに対してロレックスがどう進んでいくか画策を練った製品。当時のクォーツはまだ厚みがあったため、それに対抗するため薄型に作られているという。
「オイスターケースでゴツくて頑丈みたいな時計は、あまりこの時代は流行らなかったんですかね?」(藤井さん)
「流行らなかったんだと思うよ。今更ロレックス買うの?という時代じゃないのかな。その金額を出すならクォーツを買わない?みたいな」(野村店長)
ロレックスらしく見えない『プレシジョン』だが、シンプルゆえに王冠のロゴが光る。前述した『オイスター スピードキング』同様、シンプルさが際立ち上品で使いやすい時計だ。針もシンプルなバータイプで、ロレックスの中でも珍しいデザインである。
野村店長が「人がしていない時計が欲しいという、アンティーク(ヴィンテージ)を求めて来る人たちには嬉しいんじゃないかな」と語る『プレシジョン』。価格は32万8千円。買いやすい、人と被らない、そしてロレックスとわかりやすい王冠ロゴの三拍子が揃っているため、ヴィンテージ&ロレックス初心者にも狙い目の時計だ。
「1970年代半ばは、ロレックスも生き残りがかかっていたんでしょうね。それがちょっと垣間見られる時計。このメーカーがそんな時計を作っちゃうの?という本当に面白い時代だった」(野村店長)
「この時代は各社が不思議なモデルを出していますもんね」(藤井さん)
現行モデルでは30万円台で探すのは難しいが、ヴィンテージであれば個性的で珍しいモデルが選べる。すべて手巻きではあるが、それを含めて楽しめる人の手に渡ってほしいという。
「時計ライフを送るうえでは、自分で巻くのが楽しいと感じられる人が良いかなと思います。自動巻きは楽だけれどね(笑)」(野村店長)
ヴィンテージファンはもちろんのこと、ロレックスが欲しいけれど現行モデルは高すぎる……そう感じている人は、30万円台で楽しめる古いロレックスを探してみてはいかがだろうか。