ヴィンテージマニア必見!ユニバーサル・ジュネーブの至宝『トリ・コンパックス』の魅力と重要性を解説
文=戸叶庸之
クロノグラフはヴィンテージ時計を掘り下げていくと必ずと言っていいほど突き当たる興味深いジャンルだ。市場には、ロレックス『コスモグラフ デイトナ』やオメガ『スピードマスター』などの手巻きモデルを筆頭に、ミュージアム級のレアピースから無名ブランドまで、多種多様な選択が広がっている。今回紹介するユニバーサル・ジュネーブの『トリ・コンパックス』は、ヴィンテージマニアから絶大な支持を得る傑作であり、いくつものバリエーションが存在する。
ユニークな複雑機構を搭載する傑作クロノグラフ
『トリ・コンパックス』の解説をする前に、まずはユニバーサル・ジュネーブの歴史について簡単に触れておこう。同社の前身となるユニバーサル社は、1884年にスイスのル・ロックルで創業し、1937年に社名をユニバーサル・ジュネーブに変更。19世紀後半から腕時計式クロノグラフは製造を開始する。1934年に登場した『コンパックス』を皮切りに、『エアロ・コンパックス』や『トリ・コンパックス』などが評判を集め、クロノグラフの名門としての地位を築き上げた。
全3種類のコンパックスシリーズのなかでも『トリ・コンパックス』は最も複雑なムーブメントが搭載されている。3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドというクロノグラフの機能に加え、12時位置にムーンフェイズと日付表示、その両側には曜日と月表示が配置されている。
黒文字盤に白いインダイヤルを配したRef.881101/02は、ミュージシャンのエリック・クラプトンがこのモデルの反転カラーを愛用していたことにちなんで、通称“エヴィル クラプトン”と呼ばれている。非防水が多い手巻きクロノグラフにおいて、スクリューバック仕様の防水ケースであることも人気の理由。35.5mm径という現代のクロノグラフではまず見かけないコンパクトなサイズ感も魅力だろう。こちらの個体については貴重な当時のボックスが付属する。
以上のように、複雑機構としての優れたパフォーマンスに加え、薀蓄満載な1本であることに違いはないが、腕に馴染みやすいアキュレイトフォルム製のレザーストラップとともに、ファッションアイテムとして楽しんでみても面白い。あまり気難しく考えずに見た目重視で時計を選ぶ。「トリ・コンパックス」はそんな期待に十分応えてくれる魅力的なヴィンテージウォッチなのである。
writer
戸叶庸之
神奈川県出身。大学在学中に出版社でのアルバイトからマスコミ関係の仕事に携
わる。その後、カルチャー誌、ファッション誌で編集・ライターとして活動をスタート。Web媒体は黎明期から携わり、藤原ヒロシ氏が発起人のWebマガジン「ハニカム」、講談社「フォルツァスタイル」などの立ち上げに参加。現在は、各種メディアで執筆、編集、ディレクションのほか、Webマーケティングや広告案件に従事。時計については、趣味でヴィンテージロレックスを収集しつつ、年代やジャンルを問わず、様々な角度から高級時計のトレンドを常に追いかけている。