【オーナーインタビュー】注目の時計YouTuberが選んだ思い入れ深い5本~時計YouTuber Yoshiki

2023.06.24
Written by 長谷川剛

文=長谷川 剛

時計好きに「あなたの時計、見せてください」と依頼するこの企画。今回は「Yoshiki Watch Channel」の名義にて動画配信し注目を集めるYoshikiさんにインタビュー。公私共に(?)自身の時計ライフを支えるお気に入りの5本を、特別に披露していただいた。時計YouTuberとしてメキメキ頭角を現しているYoshikiさん。昨今時計にまつわるYouTubeコンテンツは数多く存在しているが、一体どういったテーマの動画をYoshikiさんはアップしているのだろうか。

5年くらい前から機械式時計の魅力に

「そもそも配信自体をスタートさせたのは2021年12月ころ。5年くらい前から機械式時計の魅力にハマりだしており、この奥の深いシーンを色々な人と広く共有したいと考え、動画を撮り始めました。基本的に配信内容は大まかに分ければ2系統。“現代版”と“ビンテージ”といったカテゴリーに分けられると思います。“現代版”に関しては機械式時計のビギナーに対しエントリーモデルを取り上げ、購入の糸口になるような情報をまとめてみたり。また、“ビンテージ”に関しては1960年代以前の、いわゆる機械式時計の全盛期に作られたモデルのなかで、自分の気に入った時計を深掘りする内容。現在は具体的な一本を選んで実機を見せつつ語る方式にシフトしていますが、動画をスタートさせた時点では、ブランドのヒストリー解説やロレックスに関する洋書解説動画なども上げていました。しかし、そういった“お勉強動画”はイマイチ閲覧回数が上がらなくて……(苦笑)。また、その他には高級モデルの高額な理由を探ってみたり、オーバーホールやメンテナンス系の話題を取り上げたり、現在も色々と試行錯誤をしながら配信を続けています」

そんなYoshikiさんだが、コンテンツ製作用とは別に、個人用として購入する時計はビンテージが多くなってきたと語る。そして以前はデカ厚モデルだったりクロノグラフやミリタリーウォッチにも手を出してきたが、昨今は好みが固まりだしており、ドレスウォッチばかりが気になっていると言う。

ドレスウォッチの魅力

「ドレス時計の持つ研ぎ澄まされた美感に惹かれているように思います。シンプルで薄い時計は装着感も良く、しかも見ていて格好がイイ。また、ビンテージの機械は作りもしっかりしており、メンテナンス次第で現在でも十分使えるところがポイントです。なかでも昨今はケース径35㎜以下のモデルに強い興味を持っています」

そう語りつつ、まず1本目に見せていただいたのがIWCの自動巻き。いわゆるオールドインターと呼ばれるモデルだ。

「まず、ドレス系ビンテージウォッチにおけるひとつの頂点として、パテック フィリップのカラトラバが挙げられます。先日、5196を腕に載せる機会があったのですが、37㎜径のケースは自分にとってやや大きめな感じ。そこへ行くとこのIWCは35㎜。たった2㎜の差ですが、装着したときの収まりが抜群だったのです。筆記体ロゴも非常に流麗で素敵。そしてペラトン式の自動巻き機械搭載も大きなポイントです。実用性を重視し、上層部の要請を跳ねのけ堅牢さにこだわったという技術者の高い志を感じる一本です。そして、砲弾型インデックスやドットマーカー、ドーフィン針はクンロクに通じる美観があります。そういったことも実は大事な要素なのです(笑)」

2本目に見せていただいたのは、オメガのシーマスター。恐らく製造年は1960年代のノンクロノメーター。

「こちらは馴染みの時計店で偶然見つけた一本です。僕の考える理想的なドレスウォッチの要件である、シンプル美を過不足なく揃えているところがポイント。スッキリしていて見やすいデザインと、大きすぎないケース。このときは確かグランドセイコーのSBGW231を探していたのですが、希望の品が見つからず考えあぐねていたのです。そうしたら店主がショップの奥から“こんなのもありますよ”と見せてくれたのがコレ。非常にコンディションも良く、自動巻きの名機であるcal.565を積んでいるところも購入の決め手に。しかし、大きな切っ掛けは店主がわざわざ奥から出してきてくれたこと。時計購入は出会いも大切だと思っているのです(笑)」

時計たちの共通点とは?

3本目は昨今、加速度的にドレスなビンテージ沼にハマりつつあるYoshikiさんの面目躍如たる高級モデル。しかし、これまで拝見してきた時計たちには何かしら共通点があるようだが……。

「そう、シンプルな三針ということに加え、シルバーを含めた白っぽい文字盤がひとつのポイントです。これは自分のパーソナルカラーが白色ということで、色々な面において馴染みが良いという診断からチョイスしています。このオーデマ ピゲは2002年製、ジュール オーデマの手巻き式。それまで集めてきたロレックスなど複数のコレクションを整理売却して手に入れたもの。お気に入りのポイントは多々あるのですが、強いて言えば……“オーデマ ピゲ”という優雅な語感でしょうか(笑)。それはまあ冗談ですが、すべてのディテールが美しいのです。当然のことですが、針ひとつとってもプレスなどではなく職人的な削り出しなど手間が掛かっています。自分の所有時計のなかでもひときわ高額な一本ですが、しまっておくことなく普段使いしています」

4本目はYoshikiコレクションのなかでも「異色」と言えるハミルトン。それもそのはずで、この一本は自分一人で選んだモデルではないと言う。

「実は奥さんとの婚約の際、結納返しで贈られたもの。いつもとは違うものをということで、黒文字盤だったりブレスレット仕様をチョイスしています。個人的に僕はこの一本を“部長時計”と呼んでいますが、スチールのズシッとした重みや引き締まった雰囲気が、どこなく部長を感じさせるのです(笑)。それにしてもハミルトンは機械式のエントリーモデルとして非常に優秀。 研ぎ澄まされた美観という意味においては、高額なドレスウォッチに譲る部分もありますが、実用時計としてのスペックはほぼほぼ網羅しています。こういったブランドが、すたれることなく長く継続していってほしいですね」

ラストの5本目は「Yoshiki Watch Channel」で言うところの現代版カテゴリーに属する一本。動画製作のために実際に購入したものだそう。

「 セイコー5はリーズナブルにして一定のクオリティを備えているところが実に優秀。初めて機械式時計を買ってみたいと考える人に、うってつけのシリーズです。すでにそういった切り口の紹介動画はたくさんアップされているのですが、それだけに自分の動画ではタイトルからこだわりました。“全力前向き 機械式時計入門に最適!ラグスポ風SEIKO5をレビュー!”と銘打っているのですが、このタイトルのお陰もあって、なかなかの再生数を稼ぐことができました(笑)。というコトで、大変思い入れのある一本となっています」

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長谷川剛

長谷川剛

1969年東京都生まれ。エムパイヤスネークビルディングに所属し、『asAyan』の編集に携わる。その後(有)イーターに移籍し『asAyan』『メンズクラブ』などを編集。98年からフリー。『ホットドッグプレス』『ポパイ』等の制作に関わる。2001年トランスワールドジャパンに所属し雑誌『HYBRID』『Warp』の編集に携わる。02年フリーとなり、メンズのファッション記事、カタログ製作を中心とする編集ライターとして活動。04年、エディトリアルチーム「04(zeroyon)」を結成。19年、クリエイターオフィス「テーブルロック」に移籍。アパレル関係に加え時計方面の制作も本格化。

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