ヴィンテージクロノグラフ4選!流行に左右されない魅力を備えた腕時計
文=戸叶庸之
複雑機構の花形であるクロノグラフはかつて自社でのムーブメントの開発・製造が困難であったことから、外装・内装ともに各社の創意工夫が見受けられる。第5回はファイヤーキッズの店頭から一際個性を放つ4本を紹介する。
1.ホイヤー『モナコ』Ref.Ref.1133(19710年代前半)
1969年に誕生したホイヤーの「モナコ」は、世界初の角型防水時計であり、世界初の自動巻きクロノグラフである。
この偉業を可能にしたのが、搭載された自動巻きクロノグラフムーブメントCal.11(クロノマティック)である。左にリュウズであったため、初代モナコは当時の人々にとって、アヴァンギャルドなデザインに見えたはずに違いない。
それゆえ、発表当初はセールスで苦戦したのだが、1971年に『栄光のル・マン』で俳優のスティーブ・マックイーンが着用したことで状況は一変し、人気モデルのひとつとなる。
こちらの1970年代に製造されたRef.1133の個体は、Cal.11の左リュウズを受け継ぐ後続機Cal.12を搭載していることからヴィンテージテイストが非常に高い。トータルコンディションも上々でオリジナルのレザーストラップと尾錠が揃っている。
2.ミネルバ クロノグラフ(1940年代)
3時位置に30分積算計、9時位置にスモールセコンドを持つ2レジスターのクロノグラフは、非常にヴィンテージ色が強いデザインのひとつの数えられ、手巻きクロノグラフ全盛期の1940~1950年頃の時計でよく見かけられる。
今回紹介するミネルバのクロノグラフも該当する。1856年に創業したミネルバは自社でクロノグラフムーブメントを開発できるこの当時では数少ないメーカーであった。
主なディテールの特徴は、大きなアラビアインデックス、ゴールドの針、文字盤のタキメーターとテレメーターなどだ。枯れた風合いのミラーダイヤルはヴィンテージならではの味わいである。
注目すべき点は36mm径のケースサイズ。この時代のクロノグラフでは標準的なサイズであり、現代のファッションとフィットする。真逆に難点を挙げると、スナップバックであることから防水性能はほぼ期待することができない。汗ばむ季節や雨の日の着用はなるべく避けるように心がけたい。
3.ジン クロノグラフ Ref.144.M.SA(2000年)
2000年製造と“ヴィンテージ”と呼ぶには若い時計かもしれないが、ジンのミリタリー仕様のクロノグラフは様々な魅力を備えてる。
まずは外装に目を向けてみよう。時計に明るい方ならひと目で分かるドイツのメーカーらしい無骨なスタイリングは、ミリタリーウォッチであることを想起させる特徴にほかならない。チタンのような梨地仕上げを施されたマットな質感のケースとブレスレットのデインの魅力をより一層引き立てている。オレンジの針のほか、トリチウムを多用した針とインデックスは程よい具合に変色し、ヴィンテージ感を醸し出している。
40mm経のケースサイズやメンテナンス性も含め、実用面に関して言えば、現行の時計に近い感覚で扱うことができる。唯一気を配りたいのが防水性能だ。スクリューバッグであるが、細心の注意を払いたい。
4.ユニバーサル・ジュネーブ『スペースコンパックス』 Ref.885104/01(1960年代)
最後の紹介するのは、クロノグラフの名門ユニバーサル・ジュネーブ逸品、『スペースコンパックス』だ。ダイヤル、ケース、ベゼル、ブレスレットにいたるまで、新旧のどんなブランドとも異なるデザインが楽しめる。こちらの個体は、オリジナルのブレスレットが装着される点も評価の対象となっている。
このモデルの特徴を語る上で外せないのが、バルジュー社の名機Ca.72の存在だ。このCa.72はロレックスの『コスモグラフ デイトナ』のエボーシュムーブメントとしても有名だが、ユニバーサル・ジュネーブも独自のチューンナップを加えてCal.85というムーブメントに仕上げている。
扱いやすい36mm径の手巻きクロノグラフにおいて、スクリューバッグを備えているのは高ポイントだと言わざるを得ない。
ヴィンテージらしい独特のデザインを堪能できるユニバーサル・ジュネーブの製品は時代を超えた魅力に溢れている。
writer
戸叶庸之
神奈川県出身。大学在学中に出版社でのアルバイトからマスコミ関係の仕事に携
わる。その後、カルチャー誌、ファッション誌で編集・ライターとして活動をスタート。Web媒体は黎明期から携わり、藤原ヒロシ氏が発起人のWebマガジン「ハニカム」、講談社「フォルツァスタイル」などの立ち上げに参加。現在は、各種メディアで執筆、編集、ディレクションのほか、Webマーケティングや広告案件に従事。時計については、趣味でヴィンテージロレックスを収集しつつ、年代やジャンルを問わず、様々な角度から高級時計のトレンドを常に追いかけている。