「国産最高!」ヴィンテージ歴1年のアメリカ人が思わず買ってしまったグランドセイコーファースト
今回は、ヴィンテージウォッチ歴1年目のクリスさんが購入した時計を紹介する。「国産最高!」と強く主張するクリスさんのお気に入りの1本は、『グランドセイコー ファースト 彫文字盤 山針 Ref.J14070』だ。
1年弱しか製造されていない彫り文字盤『グランドセイコー ファースト』
1960年製のグランドセイコー ファーストの希少な初期モデルは、文字盤の「Grand Seiko」が彫文字で、針は山針。諏訪精工舎から12型のクラウンをベースに開発され、25石仕様の手巻きムーブメントを搭載している。初期モデルはヴィンテージライクなデザインで、グランドセイコーのなかで見た目が1番好きだと熱く語るクリスさん。
「ヴィンテージの世界に入って、初めて購入したのがロレックスのバイセロイ金無垢だったんですけれど、FIRE KIDSのYouTube動画で野村店長と、グランドセイコーについて何回も紹介していくなかで国産Peopleになったので、やはりグランドセイコーが1本欲しい! という気持ちが出てきて、インスピレーションで買いました」(クリスさん)
「他のグランドセイコーにはないようなスタイルというか、見た目というか。金最高! 金張りも良いですよね」(クリスさん)
「かなりヴィンテージライクですよね。年代は?」(髙橋さん)
「これは1960年の12月のモデルですね。彫が製造されて3ヶ月、半年しないぐらいのモデルですね」(クリスさん)
文字盤は、彫り文字盤でわずか1年未満しか製造されていないと言われてる希少な1本だと言う。しかもグランドセイコー ファーストモデルは、1960年から3年間だけつくられたレア度の高い時計だ。
個体の良さが光る。初期モデルの尾錠と文字盤について語る
「これはセイコーの尾錠です。たぶん当時のレザーベルトとかに付いてきたものなんじゃないかな」(クリスさん)
「時計に比べるとちょっと新しい感じしますもんね」(髙橋さん)
「80年代ぐらいじゃないですか。オリジナルの尾錠は角張った大文字の『S』に、小文字の『eiko』、合わせて『Seiko』、SEIKO最高! この角張ったスタイルより見た目がすごく丸っこくて、like a puppyで、可愛いじゃないですか」(クリスさん)
ベルトの付け替えが好きなクリスさん。質感のある赤やFIRE KIDSオリジナルの黒の裏ラバー、そして寒い季節にぴったりなスエード調など、その日のスタイルに合わせて付け替えられるのも推しポイントだ。
「白文字盤、金張り、もしくは金無垢の時計、あとスエード調、このコンビネーション、Perfect!」とテンション高く語る。
「インデックスも彫の初期の方は、スプリットといって、12時のところが2つのバーに分かれているモデルなんですけど、これはその少し後なので、1つのバーになっているんです」(クリスさん)
インデックスの太さはモデル違いでもほぼ変わらないが、12時のインデックスをよく見ると、均等に真ん中で割れずにバーの太さが非対称なところも好きだと言う。
「個体が良いからダイヤルのエナメル感がより分かるというか」(クリスさん)
「残っているという感じ。グランドセイコー ファーストは、基本はこのエナメルの艶のあるダイヤル。マットというか、パウダーホワイトみたいなのはない?」(髙橋さん)
「そういう質感もありますね。ADダイヤルとかになってくると、ロレックスじゃないけど、IWCみたいなラジアル的なダイヤルになりますよね。やはり文字盤の種類が10通りぐらいあるそうなので、質も若干違うんじゃないですか」(クリスさん)
ひとつひとつの部位の良さを熱く語るクリスさんに対し、若干引き気味の髙橋さんの掛け合いが続く。
この時計はグランドセイコーの象徴でもある、裏ぶたの金ライオンメダリオンも希少ポイントだ。「プリントや彫は、接着面が甘かったりするので、メダリオンが剥がれ落ちないように保護シールを貼っています」と、クリスさんの几帳面さも伝わる。
人気の高い山針に、80ミクロンと質感の良い金張り
「もっと質問をくださってもいいんですけど(笑)山針と平針どちらの方が好きですか?」(クリスさん)
「モデルにもよるんですけど、ディテールとしては山針が好きです。基本的に僕の中では、山針の方が古くて、後期になると平針になるみたいなイメージなので、山針の方がヴィンテージとしては上みたいなイメージがあります」(髙橋さん)
「たしかに実用的な感じで、頑張っていくにつれて平針になっていくので、エレガントさで言ったら、私は山針の方が少し華奢な感じに見えて、エレガントかなって思います。これは金無垢じゃないんですけれど、金張りでも最高ですね」(クリスさん)
「質感が良いですよね。この金張りは結構厚いんですか?」(髙橋さん)
「80ミクロンなので、他のスイスの金張りより分厚めにできています。どうしてもグランドセイコーは、年代が年代なので剥がれているモデルとかありますよね、ラグ裏とか仕方ないんですけどね」(クリスさん)
個体の良さを見分けつつも、歴史の味わいを楽しむのもヴィンテージウォッチの醍醐味だ。
ゼンマイを巻かずに10時9分に。ヴィンテージウォッチの楽しみ方は自由
グランドセイコーファーストの尾錠は15mmで、ラグ幅が18mmなのでベルトを選んでしまうというが、クリスさんは「ただ、私はそういったところを全く気にしないので、頑張ってグイッと入れてます」と言う。
「あ、15mmを16mmにねじ込んでいるんですか?」(髙橋さん)
「ねじ込むというか、少し温めて押しているんですよ」(クリスさん)
「16mmを15mmに入れると、意外と綺麗に収まるものですね。キュッキュキュッキュ言ってますけど(笑)」(髙橋さん)
「可愛いんじゃないですか。そして時計を見て気づいたことありますか?」(クリスさん)
「ありますよ。クリスさんは時計を巻いていない。ゼンマイを巻かずに10時10分に合わせている」(髙橋さん)
巻きたい時に巻いて、それ以外では最も時計が美しく見える針の位置にして、時計を楽しむスタイルのクリスさん。
「10時9分、たまに10時11分ぐらいまで来るんですけど、これがクリススタイルです!」(クリスさん)
ブランド、機能、デザインなど、ヴィンテージウォッチを選ぶ基準は人それぞれ。皆さんも誰かに語りたくなる1本を見つけてみてはいかがだろうか。