防水性能について知っておきたいこと

2024.09.15

文=赤井幸平

時計に防水性能は必要なのか

 皆さんがお持ちの時計にはどの程度の防水性能がありますか?、また普段から必要と感じているでしょうか?
 腕時計には防水性能がないものも多くあり、特に水にさらされる状況がなければ防水性能というのはそこまで重要ではないように思えますし、クロノグラフやカレンダーなどの能動的な機能ではないため防水性能が役に立ったと実感する場面も少ないかもしれません。しかし腕時計にとって水分はいつも大敵。時計を買うときや、お持ちの時計もぜひ一度防水性能を確認してみてください。
 先に述べた通り、防水性能が役に立ったと実感する場面は、日常生活においては多くはないかもしれません。逆に必要と思われるシーンですぐに思い浮かぶのは、水泳やダイビングなどのウォータースポーツでしょうか。ウォータースポーツなどの中でも特にダイビング向けに作られた時計はダイバーズウォッチと呼ばれ、人気の高い時計のジャンルの一つでもありますが、より身近に防水が重要となるシーンは手洗いなどを含めた家での水仕事や、特別な状況ではなくとも汗や湿気といったその時計が使われる環境など、ほぼ常と言ってもいいほど存在します。
 特に非防水の時計を使う場合であれば、些細な水分であっても気を付けたほうがよいでしょう。

防水性能には規格がある

 防水性能は国際規格ではISO、国内製品においてはISOの他日本産業企画であるJIS規格などが採用されています。
 それぞれの規格で防水時計と潜水時計を分けて規格を定めていますが、一見すると潜水時計(Divers watch)の方がより防水性能が良いイメージがありますが、実際には圧力基準の防水性能に関しては重複する部分もあります。
 その違いはというと防水性能プラス帯磁性や、タイムプリセレクティングと説明されている時間を計測することができる機能を有するなどの潜水用の付加機能が十分に揃っているもの、とそういった機能がなく、シンプルに防水性能があるものという形で分けられています。
 参考までにそれぞれの規格の該当ナンバーです
・JIS B 7021一般用防水携帯時計の種類及び防水性能
・ISO 22810 Water-resistant watches
・JIS B 7023:潜水用携帯時計-種類及び性能
・ISO 6425:Diver’s watch

 ちなみにJIS B 7023:潜水用携帯時計-種類及び性能に国際規格であるISOとの比較が”附属書JA”に記されていて、見た限りは概ね技術的差異はない、となっているが、例えば1種潜水時計、2種潜水時計といったような分け方の違いなども記載があるため参考になる。

防水機能には様々な表記がある

メジャーなブランドの防水性の基準となっている規格自体は上記の2種といってもよいものの、様々な表記がされているため、いくつか代表的なものまとめてみましょう。

1.圧力の単位による表記
-アトム,Atm, Atomsphereの略で、気圧を表す単位です。例:10ATM
-バー,Bar 圧力を表す単位で1気圧=1ATMとほぼ同じですが、厳密には1ATM=1.01325BARとなります。例:10BAR
ほか分野では圧力の単位にpsiなども使われますが時計の防水性能においては上記の2つがメジャーですね。

2.深さの単位による表記
-メートル,M,Meterなど 日常的にも使われる長さの単位なので想像もしやすいですね。例:100M
-フィート,ftなど ヤード、ポンド法に基づく長さの単位で、約1メートルは3.28フィートです。例:330ft
 ちなみに上記の単位について、圧力の単位による表記が行われているものが防水時計で、深さ表記のものが潜水時計、と記載されている記事も散見されますが、JIS規格上ではそうなっていて、ISO規格では特に規定がないため注意されたい。

※単位の互換性について
10気圧=10ATM≒10BAR≒100M≒330FT
単位ごとの差異があるものはニアイコールとしましたが、おおむね上記の通り表記には互換性があります。
そのため併記されているものもありますね。

防水機能の表記

-日常生活用防水 (JIS規格における1種防水時計)
 2気圧から3気圧程度の防水性能と同義です。
-日常生活用強化防水 (JIS規格における2種防水時計)
 5気圧から20気圧までの防水性能を差しますが、20気圧防水であっても潜水用の仕様とは異なるため、あくまで日常生活用と考えられるとよいでしょう。
-空気潜水時計-1種潜水時計
 10気圧~20気圧の防水性能を有し、スキンダイビングなどのための機能を有している時計を指します。
-飽和潜水時計-2種潜水時計
 20気圧以上の防水性能を有し、かつ飽和潜水用にヘリウムエスケープバルブなど飽和潜水が可能な時計につけられ、HE-GAS DIVER’Sなどと記載されることもあります。

本当の防水性能を知るべき

 表記の防水性能はあくまで静止状態のテスト環境における防水性能であるため、例えば3気圧の防水性能がある腕時計について、30メートルの水深まで潜ることができるかというと、基本的にはNOです。
 例えばシャワーを例にとってみると、シャワーの一般的な水圧は0.2〜0.4MPaで、これは概ね2気圧~4気圧になります。
日常生活用防水であればシャワーを直接当てるのはもちろん、継続的に浸水させたりするのも、よっぽどではないかぎり避けたほうがよいでしょう。
 また防水の要でもあるパッキンは熱や洗剤などで劣化する場合も多いので、例えば100M防水であっても、濡れた後の水分のふき取りなどを含めて気を付けて使用されるとよいでしょう。

防水テストのプロセスを知る

 時計の防水性能の基準について書きましたが、時計の防水性能は時計に使われているパッキンが経年で劣化するなどの理由から、最高の、あるいは表記通りのパフォーマンスを出すためには定期的な検査とメンテナンスが必要です。
 一部の防水テストに関しては修理業者などが行っている場合もあり、気になる方は相談してみてもいいですが、定期的にオーバーホールなどをされているかたはオーバーホール時に防水テストを一緒に行われていることも多いです。
 以下には主な防水テスト、空気圧による防水テスト、実際に水を用いた水圧によるテストについて紹介いたします。

1.空気圧による防水テスト 
 
 チャンバー内の空気圧を高めて検査する方法で、ケース内の気密性が保たれていない場合、既定の気圧がかからないため防水性能が保たれているかわかる。
 万が一気密性が保たれていない場合でも、水が入り込むということがないため、ムーブメントを入れたまま検査ができます。手間がかかりづらいため、修理業者などが防水テストを受け付けている場合このタイプでの防水テストをしていることも多い。
 デメリットとしては基本的に不良箇所がわからないため、空気圧による防水テストで不良が出た場合には水圧によるテストに移行したりする場合も多い。 
 また30気圧までしか測定できないものがほとんどかつ、風防の破損などを避けるため実際には10気圧程度の防水テストのみとするところも多いようです。

2.水圧による検査
 実際に水を用いて行う検査で、気密性が保たれていない場合不良個所から気泡が出てくるため、不良個所がわかる、という最大のメリットを持ちます。
 また気圧テストよりも高い防水テストが行えるものも多く、飽和潜水時計などにおける30気圧以上の防水テストにはこちらが使われることが多い。

防水テストの注意点としては、例えば30気圧に耐えてもより弱い圧力で気密性が失われる場合や、過度な設定により時計の故障、破損という可能性が出てくるため、仮に防水テストをされたい場合は正規メーカーやオーバーホールも任せてよいと思える修理業者に依頼するとよいでしょう。

 上記を踏まえて、どのようなシーンで使いたいか、普段着用するシーンにあった十分な防水性能があるか、防水性能がない場合、あるいは少ない場合はどのような場面で気を付けるか、など、新しい時計を選ぶときなどに参考していただければ幸いです。

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