【FKオーナーインタビュー】ビンテージ顔でありつつ、メンテナンス性が優れたモデルを探して

2024.10.03
Written by 長谷川剛

時計好きに「あなたの時計、見せてください」と依頼するこの企画。今回はファイアーキッズ 中野ブロードウェイ店にてウォッチメイトを務める宮崎 航さんに話を聞いた。聞けば宮崎さんは、本邦きっての繁華街である銀座にて長く飲食業経験を積んだ変わり種。そしてビンテージスタイルにも傾倒する当店を代表するファッションリーダーである。ワイルドな風貌を持つスリックバック&ヒゲ男子であるが、そういった人物は一体どういう時計に惹かれるのだろう。実は意外(?)な時計選びを貫く人物だった。

時計店で働くお客さんとの出会い

ファイアーキッズに務める以前は、銀座で働いていたという宮崎さん。

「そうですね、夜の銀座でバーテンダーをしていました。バーに来店するお客さんをあれこれ観察するうちに、時計を気にするようになりました。なかでも一番の切っ掛けは、ある時計店にて働くお客様との出会い。いろいろお話をうかがううちに、時計というアイテムに強く興味を抱くようになり、実際にその方のお店にもお邪魔するまでになりました。そのお店は新品とビンテージの両方を扱うスタイルでしたが、僕は特にロレックスのバブルバックが気になりました。あまりにも気に入ったので、一時は購入を決意しかけましたが、リダン品であることが判明し断念。どうせならオリジナルを手に入れたいと考えたのです」

そして夜の世界に一段落つけて、昼間に働きたいと人材派遣会社の事務員となった宮崎さん。しかし、あまりに平凡な業務の日々に疑問を抱き、改めて就職先を探すことになったという。

「いわゆる一般的な事務職を経て、やはり接客業こそ自分にマッチした仕事だと再確認しました。そしてビンテージウォッチにも関わりある仕事なら、より楽しめるだろうと考えて。いろいろ探すなかでファイアーキッズの募集に出会い、扉を叩くこととなりました」

そんな宮崎さんのファースト・ビンテージウォッチはオメガの『シーマスター』。ワイルドなルックスの人物でありながら、時計のチョイスは意外にも(?)シンプルかつ手堅いSSケースの3針式。

シーマスターは万能性が気に入る

「時計に関してはあまりサイズが大きいものが好きではないんです。どちらかというと控えめな定番型が僕の好み。このシーマスターは、ファイアーキッズに入る前に購入した一本であり、個人売買にて入手しました。当初はジェラルド・ジェンタのCライン・コンステレーションと迷いましたが、若干このシーマスターのほうが、良いコンディションだったように見えて最終的に決めました。非常にシンプルな自動巻きのシーマスターは1965年製。冠婚葬祭を含めてどんなシーンでも使える万能性が気に入っています」

その後、ファイアーキッズのスタッフに加わったことで、時計の見方も少し変化したと話す。

「まずムーブメントにもこだわるようになりました。気に入ったモデルを長く使いたいと考えているので、メンテナンス性が優れているかを今は気にします。たとえば樹脂パーツがカレンダー部分に使われているモデルは、耐久性に難ある場合が少なくありません。また、自動巻き時計も初期のモデルだと手巻きの際に機械に負担を掛けてしまうムーブメントもあるんです。とはいえ現代的な高機能モデルが好きかというとそうじゃない。しっかりビンテージのテイストを残したものであることは、僕にとって重要です」

思い描いていた理想の時計

そんな宮崎さんが次に選んだ一本が、ロレックスの『デイトジャスト サンダーバード』。コンビスタイルというのがとても洒落ている。

「当初は単なる憧れで、実際に手に入るなんて思っていませんでした。野村さん(ファイアーキッズ スーパーバイザー)に相談しても“すぐはムリじゃない”と言われていたので。しかしその話をした次の日に、まさかの入荷が決定して……。自ら欲しい欲しいと相談していた手前、購入しないという選択肢はありませんでした(笑)。ただ、このサンダーバードは僕が思い描いていた理想の時計だったので、不満はまったくありません。先日実物を目にして、このチョイスが正解だったことを確信しました。1961年製のサンダーバードはシャープなくさび型インデックスが特徴で、径36㎜のこぢんまりしたサイズ。夜光回りの変色も少なく非常に良いコンディションです。ポイントのひとつが、しっかりcal.1560を搭載しているところ。いわゆる1000番台系の自動巻きを改良したこのムーブメントは、耐久性も抜群です。でありながらフィフティーズ風のビンテージ感も残している。非常に長く楽しめる一本だと思っています」

ということで、めでたく手堅いビンテージウォッチの二本体制となった宮崎さん。新たに入手した『サンダーバード』は、どういったスタイルに合わせて着けこなす予定なのなのだろう。

「いえ、このサンダーバードもシーマスター同様にマルチに使える一本なので、特別な着用スタイルなどは考えていません。服装も今日のようにミッドセンチュリー的なカジュアルスタイルが自分のスタンダード。こういった装いに合わせて普段使いするだろうと思います。自分は『スカーフェイス』や『グッドフェローズ』などの米国のアウトロームービーが大好き。そういったオールディーズな着こなしに、コンビのサンダーバードはよく似合うのは間違いありません。ただ、新たに少しずつアクセサリーを買い足したりはしています。今日、身に着けている時計はSSのシーマスターなのでブレスレットもリングもシルバー系。しかし、これからはゴールドのものも買ってコンビ時計に寄せていこうかと。結構、散財しているかもしれません(笑)」

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長谷川剛

長谷川剛

1969年東京都生まれ。エムパイヤスネークビルディングに所属し、『asAyan』の編集に携わる。その後(有)イーターに移籍し『asAyan』『メンズクラブ』などを編集。98年からフリー。『ホットドッグプレス』『ポパイ』等の制作に関わる。2001年トランスワールドジャパンに所属し雑誌『HYBRID』『Warp』の編集に携わる。02年フリーとなり、メンズのファッション記事、カタログ製作を中心とする編集ライターとして活動。04年、エディトリアルチーム「04(zeroyon)」を結成。19年、クリエイターオフィス「テーブルロック」に移籍。アパレル関係に加え時計方面の制作も本格化。

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