【スタッフ対談】 野村一成(店長)×松浦祐二郎(新店舗プロジェクトリーダー)編 #1 ロレックス以外のアンティークウォッチは決して高額ではなく、むしろ安定している!

2022.11.01
Written by 編集部

野村店長と新店舗プロジェクトリーダーを務める松浦さんという、アンティーク時計の経験も豊富な二人。いま時計界において懸念されている新作ウォッチの価格高騰や円安などを踏まえて、現在のアンティークウォッチの価格など、その状況について忌憚なく語り合ってもらった。

市場は変わったのか?

松浦:アンティークウォッチも、価格は上がっているものはしっかり上がっていて、でも、ブランドによってはそこまで上がってないというのはあるんですけど。でも昔に比べれば市場は変わったのかなと思ってますね。

野村:値段が上がった、上がったって言われるんですけど、新品の値段を見るとね。

松浦:新品の値段を見ると途轍もない。

野村:あれ?アンティーク安くない?って感じですよね。

松浦:それは思いますね。

野村:衝撃的だったのが、IWCのオフィシャルを見てて『ポートフィノ』が60万円台なんですよ。革ベルトのモデルが。90年代のモデルが20万円、30万円出せば十分買えるわけじゃないですか。

松浦:そうですね。

野村:いっとき、中古は10万円台だな、と言ってたのが、20万円になり、30万円になり、ちょっと値段が上がりすぎたかな、と思ってたら、新品は60万円台。そうするとアンティークも中古価格なんですよね。

松浦:中古価格として、やっぱりバランスは取れている。むしろ、新品の上がるスピードが早いもので、アンティークとかはそこについていってる。引っ張られているっていうイメージですね。

野村:ブライトリングとかも、『ナビタイマー』は100万円台ですからね。100万円台だからアンティークの70万円って安くない?みたいな。オールドムーブメントの方がいいな、みたいな感じになりますね。

ブライトリング『ナビタイマー』1966年製

 >>ブライトリングナビタイマーを探す

松浦:そうですよね。最近は税込表示になっており、90万円台後半のモデルの表記は100万円台になってしまいますから。

野村:そういうのありますよね。税金って高いですね。

松浦:10%ですからね。

アンティークが高いという認識はない

野村:アンティークはちょっと高くなったなという感覚を持っているんですが、お客さんにはそういう感覚ではないようです。僕らの感覚ですと、10年前ロレックスの『デイトジャスト』が29万8000円だったので、現在の50万円、60万円は高くなったという印象なんです。そう思って接客していると「なんでこんなに安いんですか?」と言われるんです。『デイトジャスト』も新品は軒並み100万円台ですから。結構、こちらの感覚もズレてきているんだろうなということも感じたりしてます。

ロレックス『デイトジャスト』1955年製

>>ロレックスデイトジャストを探す

松浦:確かにアンティークウォッチの中だけで考えてると、高くなったな、高いな、ということになるんですが、アンティークウォッチの沼を飛び出ると、周りがもっと高くなっていて、実はそうでもなかったなと。

野村:結局、20万円台で『デイトジャスト』を売っていた時代は、新品も50万、60万であったので、それを考えると、やっぱりアンティークは中古価格なんだなと。一生ものなので、中古でも全然構わないっていう人は、ちょっと人のものと違うし、そういう見方ができるのかなと思いますね。

松浦:あとはロレックスとかに代表されるような、ちょっと飛び抜けて高いものとか、そういったものがフォーカスされていて、そこに引っ張られてるっていうのもあるかもしれないです。

野村:赤サブとかね。

松浦:それとか『デイトナ』関係は1000万円とかを超えてくるような金額になってくるんで。そう考えると昔の100万円台とか200万円台だったモデルが、もう10倍くらいになっているわけで、そこを思うと高くなったなと思うんですけど、そこだけではなくて、全体を見れば、実はアンティークはそこまでおかしな状況ではなくて、健全な状況なのかな、と思います。

アンティーク時計は中古価格

野村:ほとんどのアンティーク時計は中古価格なんです、設定が。

松浦:ロレックスだけがちょっと異常な感じ。飛び抜けた状態ですね。

野村:でもオメガのアンティークって異常に安いじゃないですか。

松浦:そうですね。いまだに10万円台で探し出せて、10万円切るモデルもあったりします。時々ですけどね。

野村:コンディションが悪いとかは特別なことですが、そういうのがなくても10万円台でいろいろ選べます。当時はロレックスよりも数売れたのでしょう。だから仕入れでも、探そうとしたら、5本、10本集めるのは、そんなに大変じゃないんです。それだけ当時は人気があったってことだと思うんですけど。そういうところが逆に、新品との価格差が出てますね。いま300m防水の『シーマスター』も70万円とかしますから。

オメガ『シーマスター』1986年製

 >>オメガシーマスターを探す

松浦:リミテッドとかになると100万円を超えてきますからね。

野村:そう考えると非常に安いですね、オメガは。

松浦:確かに異常に安くなるんですよね。新品の値段が上がってますけど、実はオメガは、そんなに引っ張られてないという感覚はありますね。『スピードマスター』のレア物とか、一部のモデルは高くなってますけど。

野村:それ以外は、完全に中古価格ですからね。

松浦:なんて健全な世界なんだ!

野村:オメガはメンテナンスもしやすいし、一生ものという部分ではロレックスとそんなに変わらないのに格安です。

松浦:そうですね。

野村:値段の話になると、オメガがいかに得かっていう感じになりますね。

松浦:実際的なところでいうと、パフォーマンスはロレックスよりも高いですよね。価格ではなくて。

野村:満足度とかですね。

松浦:ある程度知名度もあって、100年以上の歴史も余裕であって、いい時計だってみんなに認められていて、優等生的な感じです。

野村:それでもロレックスがいいというのも、なんとなくわかるんですが。

松浦:わかります。それはなんとなくというか、どうしても惹かれてしまう。それはよくわかるんですよ。でも時計に限らず、他の商品も上がり方が尋常ではないので。ブランド戦略としては、そういう方向に行きたいんでしょうけど。

writer

ranking