
日本の時計を欧州レベルに引き上げた
グランドセイコーが人気である。ビンテージ市場においては、セイコーの『グランドセイコー』モデルで、まだまだ世界に遅れをとっていた日本の時計を欧州レベルに引き上げた実績を持つ、良質なものが多い。
そのグランドセイコーも2017年よりブランド化され、現在はグランドセイコーブランドとなっている。とはいえ、その基礎となっているのは60年代のグランドセイコーなので、今後、グランドセイコーブランドから誕生する新作も、まったく同じDNAを持ち合わせているのだ。
ただ、少し趣は変わってきているようだ。
1960年の誕生以来、最高峰の腕時計を目指してきたグランドセイコーは、ブランド化した2017年あたりから「THE NATURE OF TIME」というブランドフィロソフィーを掲げている。これは、自然や季節の移ろいからインスピレーションを受ける感性と、それぞれの道を究めて時の本質に迫ろうとする匠の姿という、2つの日本の精神性を表現しており、グランドセイコーの時計づくりに活かしていこうということだ。
メカニカルモデルの製造を担う工房にも、その環境は整えられている。その「グランドセイコースタジオ 雫石」は、勇壮な岩手山を臨む地にあり、そこで製作に勤しむ時計師たちは日々移ろいゆく豊饒な自然と共に時を過ごしている。泰然と構えた岩手山に日々励まされながら時計作りの本質と向き合っているのだ。

自動巻き、エバーブリリアントスティール、40㎜径 146万3000円(世界1200本限定)
GSの真髄と日本の美意識を高い次元で融合
2025年は『エボリューション9 コレクション』から、ブランドの革新と進化を示す限定モデルが登場した。『エボリューション9 』だが、これは2021年に誕生したコレクション。グランドセイコーの真髄と日本の美意識を高い次元で融合させて腕時計の本質を追求する、ということでつくられたものだ。タイトルにある「9」とは、一桁の最大の数字であることから、完璧を追い求める、終わりのない進化への意志が込められているという。
その造形は、デザイン文法である「グランドセイコースタイル」を基にして、視認性や装着性などの本質を一層進化させることを目指した新たなデザイン文法を確立したものだ。セイコーでは、これを「エボリューション9スタイル」と呼んでいる。

ケースはヘアライン仕上げを主体としたケースは調和のとれた輝きを放ち、深く溝を入れたインデックスと、形状や太さをはっきりとさせた時分針は、とても見やすい。実用時計においてもっとも重要な視認性の高さは折り紙付きである。ケースは、重心を低く抑えて設計されており、腕なじみ良く、装着性も向上している。
また、このモデルには10振動/秒のハイビートメカニカルムーブメントが搭載されており、高い精度を保つことができる。この「キャリバー9SA5」は、デュアルインパルス脱進機(高効率な脱進機)やツインバレル(2つの動力ぜんまい)を採用することによって、毎時36,000振動のハイビートを実現。さらに最大巻上時には約80時間のパワーリザーブを達成している。

さらに、これだけのスペックを揃えながら薄型というのもいい。これはセイコー独自の水平輪列構造によって達成されており、裏ぶたから精巧なメカニカルハイビートの動きを見ることができる。そこには工房がある雫石の自然から着想を得た繊細なストライプ模様をあしらった「雫石川仕上げ」が施されている。
writer
