プラスチック風防とは?ガラス風防との違いと魅力

2025.06.30
Written by 編集部

時計の風防にはいくつかの種類がありますが、なかでも「プラスチック風防」はヴィンテージ時計によく使われている素材です。見た目に柔らかさや温かみがあり、レトロな雰囲気を楽しめるのが特徴です。一方で、ガラス風防に比べると傷がつきやすいといったデメリットもあります。そこで、プラスチック風防とはどんなものなのかを基本からご紹介しつつ、ガラス風防との違いや、それぞれの魅力についてもわかりやすく解説していきます。

プラスチック風防とは?

プラスチック風防とは?

プラスチック風防とは、時計の文字盤を覆う風防(ふうぼう)の素材のひとつで、主にアクリル樹脂などのプラスチックが使われています。なかでもアクリル風防は、透明度が高く、軽くて加工しやすいことから、1950〜70年代の多くの時計に採用されてきました。

当時はサファイアガラスなどの高硬度ガラスがまだ一般的ではなく、アクリルは割れにくく形状の自由度も高いことから、時計メーカーにとって非常に扱いやすい素材でした。丸みのあるドーム型風防など、柔らかなフォルムを実現できるのもアクリルならではです。

一方で、アクリル風防は傷がつきやすいという弱点もあります。ただし、表面の細かな傷であれば専用の研磨剤で磨いて目立たなくすることができるため、自分でメンテナンスを楽しむという魅力もあります。

現在では高硬度ガラスが主流となりましたが、アクリル風防のもつレトロな見た目や温かみのある質感は、ヴィンテージ時計を語るうえで欠かせない要素です。見た目の雰囲気を重視したい方や、昔ながらのデザインが好きな方には、今でも根強い人気があります。

ガラス風防とプラスチック風防の違い・メリット・デメリット

ガラス風防とプラスチック風防の違い・メリット・デメリット

時計の風防には大きく分けて「ガラス風防」と「プラスチック風防」があります。ガラス風防はさらに「サファイアガラス」と「ミネラルガラス」に分けられ、それぞれ特徴が異なります。

まず、サファイアガラスは非常に硬度が高く、モース硬度9という硬さを持っています。これにより、日常生活でのちょっとした接触や摩擦による傷がほとんどつかないのが最大のメリットです。透明度も高く、クリアで美しい見た目が特徴的です。ただし、硬い分だけ割れやすく、落としたり強い衝撃を受けると割れてしまうことがあります。割れた場合の修理費用は比較的高額になるのがデメリットです。

一方、ミネラルガラスはサファイアガラスほど硬くはありませんが、一般的なガラスより強化されているため、割れにくく傷もある程度防げます。価格面でも比較的リーズナブルなので、普及しているモデルも多いです。ただし、傷つきやすさではサファイアガラスに劣り、長期間使うと細かな傷が目立ってくることがあります。

これらのガラス風防に対して、プラスチック風防(主にアクリル風防)は特徴が大きく異なります。プラスチックはガラスに比べて柔らかいため、どうしても傷がつきやすい素材です。ですが、逆に割れにくく、落としたりぶつけたりしても割れてしまうリスクが低いのがメリットです。さらに、アクリル素材は軽量で加工がしやすく、丸みを帯びたドーム型の風防を作りやすいため、独特のレトロなデザインを生み出すことができます。

また、小さな傷であれば専用の研磨剤で自分で磨いて目立たなくすることも可能です。これがプラスチック風防のもう一つの大きな魅力で、時計を使い込む楽しみやメンテナンスの手間を味わいたい方には特に好まれています。

ただし、プラスチック風防は経年で劣化しやすく、長く使うと曇りや黄ばみが出ることがあります。こうした場合は交換やクリーニングが必要になってくるので、その点は注意が必要です。

総合すると、サファイアガラスは圧倒的な耐傷性と美しさを持つ一方で割れるリスクがあり、ミネラルガラスはバランスの良いコストパフォーマンスを提供します。プラスチック風防は傷がつきやすいものの割れにくく、軽くて加工しやすい特徴があり、温かみのあるレトロな雰囲気を楽しめる素材です。

そのため、時計を選ぶ際やメンテナンスを考えるときは、それぞれの素材の特性を理解し、自分の使い方や好みに合ったものを選ぶことが大切です。ヴィンテージ時計のファンにとっては、プラスチック風防の味わい深さやメンテナンスの楽しさも大きな魅力となっています。

プラスチック風防のメンテナンス方法

プラスチック風防のメンテナンス方法

プラスチック風防は傷がつきやすい素材ですが、きちんとメンテナンスすることで見た目や機能を長く保つことができます。ここでは、主なケア方法として「ポリッシュ(研磨)」と「交換」について紹介します。

ポリッシュ(研磨)

表面にできた細かな擦り傷は、専用の研磨剤を使うことである程度目立たなくすることができます。市販されているアクリル専用のポリッシュ剤をやわらかい布につけて、優しく円を描くように磨くだけで、透明感が戻ってくる場合もあります。

ただし、深い傷や割れには効果がないため、無理に磨かず、状態を見ながら判断することが大切です。ポリッシュは、あくまで軽度の傷に対応するケアと考えておきましょう。

交換

風防にひびが入っていたり、黄ばみや曇りが目立つようになった場合は、交換が必要です。ただし、風防は時計本体に圧入(はめ込み)されていることが多く、無理に外そうとするとケースを傷つけたり、防水性を損なうおそれがあります。

そのため、交換作業は基本的に時計修理の専門店やメーカーに依頼するのが安心です。ブランドやモデルによっては純正部品が必要になることもあり、正確な作業には専門的な知識と工具が求められます。

交換費用は時計の種類によって幅がありますが、ガラス風防に比べると比較的リーズナブルなことが多く、古い時計のリフレッシュとしてもおすすめの方法です。

プラスチック風防が使われている有名モデル

プラスチック風防は、今では珍しくなりつつありますが、独特のやわらかい光の反射やレトロな雰囲気で根強い人気があります。ここでは、そんなプラスチック風防が使われている代表的な時計モデルをご紹介します。

ロレックス サブマリーナー(Ref.5513)

サブマリーナー

ロレックスを代表するダイバーズウォッチであるRef.5513は、プラスチック風防ならではの柔らかな光の反射と、ふっくらとしたドーム形状が特徴です。現行のサファイアモデルにはない、レトロな雰囲気や味わいを楽しむことができます。傷がつきやすい一方で、軽く磨くことで見た目を整えられるのも魅力のひとつ。プロフェッショナル仕様でありながら、温かみのある佇まいがヴィンテージファンに根強い人気を誇ります。

オメガ スピードマスター プロフェッショナル

スピードマスタープロフェッショナル

「ムーンウォッチ」として名高いスピードマスターには、プラスチック風防(ヘサライト)をあえて採用したモデルが存在します。宇宙空間での安全性を考慮し、割れにくい素材として選ばれたこの風防は、視認性が高く光の反射もやわらかです。磨くことで傷を取り除ける実用性もあり、使いながら育てる感覚を楽しめます。メカニカルなデザインと、クラシカルな風防の組み合わせが絶妙な一本です。

セイコー ロードマチック

ロードマチック

セイコーが誇る自動巻きドレスウォッチで、プラスチック風防による優しい印象がケース全体の雰囲気と調和しています。薄型で着け心地がよく、控えめながらも上品な存在感があります。風防はドーム形状になっており、角度によって文字盤の見え方にニュアンスが生まれるのも魅力のひとつ。手入れもしやすく、磨くことで透明感を保つことができるため、長く愛用したい一本です。

ハミルトン カーキ

ハミルトンカーキ

ミリタリーデザインを象徴するフィールドウォッチには、プラスチック風防が非常によく似合います。視認性を最優先に設計された無駄のないダイヤルと、風防のわずかな湾曲が相まって、道具としての美しさが際立つ仕上がりです。軽量で扱いやすく、傷がついても自分で磨いて整えることができるため、日常使いにも適しています。素朴で堅牢な魅力が光るモデルです。

チューダー オイスター

チューダーオイスター

ロレックスの姉妹ブランドとして知られるチューダーのオイスターシリーズには、プラスチック風防を採用したモデルが多く存在します。風防は丸みを帯びており、ケース全体にクラシカルで落ち着いた雰囲気を与えています。ロレックス譲りの堅牢な作りと、プラスチック風防ならではの優しい表情が調和したデザインが魅力。高級感と親しみやすさを兼ね備えたバランスの良い一本です。

プラスチック風防の時計はこんな人に向いている

プラスチック風防の時計は、ヴィンテージならではの柔らかい風合いや温かみを大切にしたい人にぴったりです。丸みのあるフォルムや光の反射の美しさを楽しみたい方に向いています。また、自分でポリッシュをしてメンテナンスを楽しめる人におすすめです。使い込むほど味が出る時計を好み、長く愛用したい方にも合っています。

一方で、傷を気にせずガンガン使いたい人や、耐久性を重視する場合は、ガラス風防のほうが適していますが、プラスチック風防の持つ独特の魅力は、ヴィンテージ時計の楽しみを深めてくれます。

よくある質問

Q1. プラスチック風防は現在でも新品の時計に使われていますか?

A1. はい、一部のブランドではヴィンテージ調のデザインや、軽さ・雰囲気を重視して、あえてプラスチック風防を採用している新品モデルも存在します。

Q2. プラスチック風防の交換は可能ですか?

A2. 可能です。ほとんどの時計店や修理業者で交換対応ができますが、モデルによっては入手が難しい場合もあるため、事前の確認が必要です。

Q3. 傷を防ぐために何か対策はありますか?

A3. 通常使用で完全に傷を防ぐことは難しいですが、時計を着用しないときはクロスで巻く、ハードな作業時には外すなどの配慮で、傷つきを最小限に抑えられます。

Q4. プラスチック風防の時計はコレクションに向いていますか?

A4. はい、特にヴィンテージや復刻モデルを好む方にとっては、独特の風合いや経年変化を楽しめる魅力的なコレクション対象となります。

まとめ

プラスチック風防には、少し曇ったようなやわらかさや、手で磨きながら育てていくような楽しさがあります。キズすら味に変わっていくその表情は、ガラス風防にはない魅力のひとつです。もちろん扱いに気を使う場面もありますが、それも含めて時計と向き合う時間になるのかもしれません。無機質な完璧さではなく、少し不器用で、人の手に馴染むものを選びたいと感じたら、ぜひプラスチック風防の時計を手にとってみましょう。

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