FIRE KIDS顧問・野村氏が語る、36年のヴィンテージ時計人生
時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。
「ロレックスが3万円台で買えた時代があった」今となってはなかなか信じがたいが、FIRE KIDS顧問であり、ヴィンテージ腕時計歴36年の野村が実際に体験してきた現実だ。
数え切れないほどの時計を見て、触れて、買い、そして買い逃してきた野村のエピソードには、これからヴィンテージ腕時計を楽しみたい人にとっての本質的なヒントが詰まっている。今回は三好との対話を通じて、衝撃的な価格の話から、時計とどう向き合うべきかまでを紐解いていく。
一番長く使っている時計は「普通にカッコいい」IWC
FIRE KIDSのスタッフ・三好がまず尋ねたのは、「一番長く使っている時計」についてだった。
「IWCかな。Cal.8531を積んだ、いわゆる『寄り目』。横浜のカドヤ質屋さんで買ったんだよね」

今も手元にあり、現役で使っているというそのIWCについて、野村は驚くほどシンプルな理由を挙げる。
「普通にカッコいいから。シンプルで飽きないし、長く使える」
思い入れや希少性ではなく、使い続けられるデザインであること。2〜3年着けない時期があっても、結局また腕に戻ってくるという。
また、最近は30mm前後の小径ケースを好み、1930年代後半のオイスターを雨の日に着けることもあるというから驚く。
「家に簡単な防水検査機があるから試したことがあって。ちゃんとパッキンを交換したら大丈夫だからね、3気圧とか」
FIRE KIDSで購入した時計も、オーバーホール時に追加料金で防水検査が可能なため、実用面での安心感が欲しい方にはおすすめだ。
ロレックスが3万5,000円だった頃の話
話題は一気に過去へ遡る。
「18歳の頃だから、35年くらい前かな。フリーマーケットだったり、そういう店で買ったんだよ。ロレックスの『オイスターデイト Ref.6694』が3万5,000円くらい」

当時でもロレックスは高級時計だったが、バブル末期という時代背景もあり、中古市場には今では考えられない価格の個体が普通に並んでいた。
「新品は高くて買えないから、質屋とかフリマで探してた」
16歳の頃にはOMEGAを1万2,000円ほどで購入していたというから、現在の相場感からするとまさに別世界だ。
「ただ、情報は今より圧倒的に少なかった。だから足を使って、見て回るしかなかった」
ネットで何でも調べられる今の環境は、経験値を積みやすい一方で落とし穴も多いと語る。
「ネット上なんて、ウソも多い。結局は自分で精査できる目を持つことが大事」
買い逃したTUDOR薔薇サブが教えてくれたこと
「後悔している時計は?」と聞かれて、野村が挙げたのがTUDORのバラサブだ。

「初めて見た時は9万8,000円。でも18歳には高かったから、貯金して戻ったら売れていた」
その後、19万8,000円、39万8,000円、60万円と倍々で価格が上がり、現在では200万円前後が相場となっている。
「教訓として残ってる。頭金1万円でも置いて、取り置きしてもらえばよかった」
この経験があるからこそ、野村は縁がなかった時計として、今も私物ではバラサブを買わないという。
「仕事では仕入れとして買うけどね。本当は欲しいけど、教訓だから」
時計は投資でもあるが、それ以上に決断の積み重ねだということを、このエピソードから感じることができる。
「健全な趣味」としてのヴィンテージ腕時計
数十万本の時計を見てきた今でも、「初めて見る時計」に出会うという野村。
「だから楽しい。毎週時計を買ってるしね…」
そんな野村が、初めて時計を買う人によく伝えている言葉がある。
「こんなに健全な趣味はないよ。ちゃんとしたものを、ちゃんとした店で買えばね」
ネットオークションやフリマでの失敗談も多く聞いてきたからこそ、保証があり、実物を見て話ができる店の価値を強調する。
「FIRE KIDSはものすごい数の時計がみられるから、勉強になるよ。それだけで目が育つ」
決して安くはない買い物だからこそ、しっかりと自分の判断能力を養い、いいものを手に入れることができれば「損をしない」と野村は語る。
これからヴィンテージ腕時計を買う人へ。知っておきたいQ&A
「欲しいと思った時が買い時なのか」「ネットで買っても大丈夫なのか」。初めてヴィンテージ腕時計に向き合う人が抱きがちな疑問に、野村顧問の考えを交えながら答えていく。
Q1.ヴィンテージ腕時計は「欲しい」と思った時が買い時?
A.基本は“欲しいと思った時が買い時”。野村顧問が語る「バラサブ」のように、迷っているうちに価格が跳ね上がったり、売れてしまったりするのがヴィンテージの現実。特にコンディションの良い個体や付属品が揃った個体は再会が難しい。もちろん勢いだけで買うのではなく、状態や相場感を理解したうえで「逃すと後悔しそうか」を自分の基準で判断すると良い。
Q2.ネットで買うのはやっぱり危険? 初心者は避けるべき?
A.初心者ほど“いきなりネット一本”はおすすめしない。野村顧問が言う通り、ネットには正しい情報もあるが、誤情報や都合のいい説明も混ざっている。真贋やパーツの整合性、オーバーホール履歴など、画面越しでは見抜けない要素も多い。まずは実店舗で実物を見て、違いを体感しながら見る目を育てるのが近道。そのうえで、ネットも選択肢として活用していくのが健全。
Q3.ヴィンテージでも雨の日に着けていい?
A.条件付きで可能だが、“点検前提”で考えるべき。野村顧問は1930年代のオイスターでも、パッキン交換などの整備をしたうえで防水検査を行い、生活防水レベルで使っている。ただし個体差は大きく、過信は禁物。購入後のオーバーホール時に防水検査を依頼するなど、状態確認をセットで考えると安心だ。ヴィンテージは「防水性能」よりも「コンディション管理」が満足度を左右する。
ロレックスが3万円台だった時代は、もう戻らないが、ヴィンテージ腕時計の本質「良いものを、理解して、決断する」という価値は今も変わらない。
FIRE KIDSには、その判断を支えてくれる実物と経験、そして野村のような“生きた知識”がある。もし、次の1本に心が動いたなら、ぜひ一度足を運んでみて欲しい。
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