昔は選ばなかった。でも今、大人になって刺さるヴィンテージ腕時計3選

2026.02.19
最終更新日時:2026.02.16
Written by 編集部

時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。

昔は正直、ピンと来なかった。むしろ「なぜこれが評価されるのだろう」と思っていたモデルもある。だが、ヴィンテージ腕時計と向き合う時間が増え、経験を重ねるにつれて、不思議と見え方が変わってくる時計があるのも事実だ。

今回は、FIRE KIDSの中根、松井、佐藤が、「昔なら選ばなかったけれど、今なら良さが分かりすぎる時計」をテーマに、それぞれ1本ずつをセレクト。

金無垢、12角ケース、そしてスピードマスター。かつては距離を置いていたはずの時計たちが、なぜ今、心に引っかかるのか。その理由を、会話とともに紐解いていく。

UNIVERSAL GENEVE ポールルーター デラックス 18金無垢

佐藤が選んだのは、ユニバーサル・ジュネーブ『ポールルーター デラックスの18金無垢』。1950年代製、バンパー式自動巻きという、クラシックな要素が詰まった1本だ。

「もともとステンレスが好きだった。今も好きだけど、最近は金無垢もいいなと思うようになってきた」(佐藤)

価値観が変わったきっかけは、海外での体験だったという。香港などを訪れ、街中で金無垢の時計を日常使いしている人たちを目にしたことで、金無垢=特別な場のもの、という先入観が崩れた。

「普通にご飯を食べに行ったら、店員さんが金無垢のピアジェを着けていたりする。気取らず、ナチュラルに着けている姿がすごくよかった」(佐藤)

金無垢はハードルの高い存在ではなく、日常に溶け込むもの。そう捉えられるようになったことで、『ポールルーター』は佐藤の選択肢の中に自然と入り込んできた。

さらに近年は、ユニバーサル・ジュネーブの復刻話もあり、ブランド自体の注目度も上昇中。ただし、佐藤は焦らない。

「時計としては十分すぎるほど完成されている。あとは自分のタイミングだけ」(佐藤)

“欲しい”と“買う”の間にある距離感もまた、ヴィンテージ時計の楽しみ方なのだ。

OMEGA コンステレーション ハートインデックス

中根が選んだのは、オメガ『コンステレーション ハートインデックス Ref.2852-7SC』。1950年代製、通称“パイパン”と呼ばれる12角ダイヤルが特徴だ。

「自分は丸より角張っているものが好き。ザクよりジム派というか(笑)。」(中根)

スクエアではなく、あくまで12角。その微妙な違いにこそ、中根の美意識がある。クロスラインにハートインデックスという、当時ならではの意匠も、この年代ならではの魅力。

実は中根、昔からコンステレーション自体は好きだったという。ただし、最初から強く惹かれていたわけではない。

「ヴィンテージに触れるようになってから、だんだん良さが分かってきました」(中根)

印象的なのは、かつてFIRE KIDSに並んでいた金無垢ブレスレット一体型のコンステレーションの話だ。価格は当時で約198万円。店内でもトップクラスの高額モデルだった。

「ずっと飾ってあって、委託だったんだけど、めちゃくちゃかっこよかった」(中根)

手にすることはできなかったが、その記憶が今も残っている。ヴィンテージ腕時計は、こうした持てなかった経験すら、後々の価値観を育ててくれる。

OMEGA スピードマスター プロフェッショナル

松井が選んだのは、オメガ『スピードマスター プロフェッショナル Ref.3590.50』。1992年製、Cal.861搭載の王道モデル。

かつて松井は、小径のドレスウォッチを好み、40mmクラスの時計は視野に入っていなかった。しかし、ヴィンテージ腕時計業界に入り、接客や商品知識を深めていく中で、その認識は大きく変わる。

モータースポーツ由来の時計が、NASAの厳しいテストを経て宇宙へ行ったというストーリー。そして、1960年代に完成されていたからこそ、変わらず作り続けられているデザイン。

「掘れば掘るほど情報が出てくる。底が知れない」(松井)

佐藤も「違いが分かってくると、めちゃくちゃいいモデルだと気づく」と頷く。完成度が高いがゆえに、最初は違いが見えない。それもまたスピードマスターらしさだ。

松井自身は、サイズ感や服装との相性から、まだ手にしてはいない。だが、白シャツをたくし上げ、春夏にさらっと着けるイメージは、すでにできている。

「今じゃない」も、正解のひとつ

3人が共通して語ったのは、「良さが分かっているからこそ、今は買わない」というスタンスだった。

資金、ライフステージ、手持ちの本数、そしてフィーリング。どれかひとつでも噛み合わなければ、無理に手を伸ばさない。

ヴィンテージ腕時計は、知識が増えるほど待つ理由も増えていく。だからこそ、店頭で時計を見ながら悩む時間そのものが、楽しみなのではないだろうか。

昔なら選ばなかった時計が、ある日ふと心に引っかかる。その瞬間を迎えたとき、きっとその時計は長く付き合える1本になってくれるはずである。

ヴィンテージ腕時計Q&A|「今になって良さが分かる」理由とは?

ヴィンテージ腕時計は、経験やタイミングによって見え方が変わる存在です。最後に、今回の内容に関連して、店頭でもよく聞かれる疑問をQ&A形式でまとめました。気になり始めている方は、ぜひ参考にしてみてください。

Q1.昔はピンと来なかった時計が、急に良く見えるのはなぜですか?

A.多くの場合、時計そのものが変わったのではなく、ご自身の「見る視点」や「経験」が変わっているからです。着る服やライフスタイル、時計の知識が増えることで、以前は気づかなかったデザインや背景、使いどころが自然と見えるようになります。ヴィンテージ腕時計は、そうした変化に応えてくれる懐の深さを持った存在だと言えるでしょう。

Q2.金無垢や大きめサイズの時計は、普段使いしても大丈夫ですか?

A.もちろん可能です。重要なのは「特別な場で使う」と決めつけないことです。海外では金無垢の時計を日常的に着けている人も多く、サイズについても服装や季節によって自然に取り入れているケースが少なくありません。最初は少し勇気が要りますが、一度慣れると意外としっくりくることも多いです。

Q3.良いと思っているのに、まだ買っていないのは間違いでしょうか?

A.いいえ、決して間違いではありません。ヴィンテージ腕時計は「今じゃない」と感じる直感も大切にすべきものです。資金やタイミング、手持ちの時計とのバランスなどが整ったとき、その1本はきっとより特別な存在になります。迷っている時間も含めて楽しめるのが、ヴィンテージ時計の醍醐味です。

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