リシュモングループ傘下の時計ブランドをわかりやすく解説

2026.02.19
最終更新日時:2026.02.16
Written by 秋吉 健太

高級時計の分野において、リシュモングループは大きな存在感を持つ企業グループです。カルティエやIWC、ジャガー・ルクルトなど、歴史ある時計ブランドを傘下に擁し、時計業界の中でも独自の位置を築いてきました。

一方で、リシュモングループがどのような時計グループであり、他の大手グループと何が異なるのかを整理して理解している方は多くありません。特にヴィンテージ時計の視点で見ると、現行モデルの印象だけでは、その特徴を十分に捉えることは難しいと言えます。

そこで、リシュモングループの時計事業を基礎から整理し、ヴィンテージ時計市場の観点から同グループの特徴を解説します。

リシュモングループとはどのような時計グループか

リシュモングループとはどのような時計グループか

リシュモングループは、スイスを拠点とするラグジュアリー分野の企業グループです。時計や宝飾品を中心とした事業を展開しており、世界的に知られる高級ブランドを数多く傘下に持っています。時計業界においては、機械式高級時計を主軸とするブランド構成が特徴です。

同社グループはもともと南アフリカのルーツを持つ企業体から発展し、1990年代以降に本格的に時計ブランドの統合を進めてきました。その過程で、IWCやジャガー・ルクルト、ヴァシュロン・コンスタンタンなど、伝統あるマニュファクチュールを次々と傘下に収めています。単に規模を拡大するのではなく、各ブランドの独自性や歴史を尊重する姿勢を取ってきた点が特徴です。

リシュモングループの時計事業は、大量生産を前提としたものではありません。長い歴史を持つブランドの技術やデザインを継承しながら、高級機械式時計を中心に展開してきました。そのため、同グループの時計は実用性だけでなく、工芸性や文化的価値の側面から語られることも少なくありません。

このような背景から、リシュモングループは時計業界において独自の存在として認識されています。

リシュモングループの時計ブランド一覧

リシュモングループには、スイスを中心とした高級時計ブランドが複数属しています。これらのブランドは、機械式時計を軸としながらも、歴史や製造思想、価格帯においてそれぞれ異なる特徴を持っています。以下では、リシュモングループ傘下に属する主な時計ブランドを紹介します。

カルティエ

カルティエ

カルティエは宝飾ブランドとして広く知られていますが、腕時計の分野でも長い歴史を持っています。デザイン性を重視した時計作りを特徴としており、角形ケースや独自の意匠は時計史の中でも重要な存在です。ヴィンテージ時計市場においても、年代やモデルを問わず安定した評価を受けています。

IWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)

IWC

IWCは実用性と技術性を重視してきたスイスの時計ブランドです。耐久性や視認性を意識した設計が多く、計測機器としての思想が色濃く反映されています。ヴィンテージ市場では、機械式時計としての完成度の高さから継続的に注目されています。

ジャガー・ルクルト

ジャガー・ルクルト

ジャガー・ルクルトは、ムーブメント製造に強みを持つマニュファクチュールです。自社で多数のキャリバーを開発してきた実績があり、時計製造の技術的側面で高く評価されています。ヴィンテージ時計市場においても、技術志向のブランドとして認識されています。

ヴァシュロン・コンスタンタン

ヴァシュロン・コンスタンタン

ヴァシュロン・コンスタンタンは18世紀に創業した歴史ある時計ブランドです。伝統的な製造技術と装飾性を重視しており、高級機械式時計を象徴する存在とされています。ヴィンテージ市場では、歴史的価値と製造背景が評価の軸となっています。

パネライ

パネライ

パネライは軍用時計をルーツに持つブランドとして知られています。視認性や堅牢性を重視したデザインは、他ブランドとは異なる個性を形成しています。ヴィンテージ時計市場では、特定の年代や用途背景を持つモデルが注目されています。

ピアジェ

ピアジェ

ピアジェは宝飾分野と時計製造の両面を展開してきたブランドです。特に薄型ムーブメントの開発で知られており、技術と美観の両立を追求してきました。ヴィンテージ市場では、時計史の一側面を担うブランドとして評価されています。

A.ランゲ&ゾーネ

A.ランゲ&ゾーネ

A.ランゲ&ゾーネはドイツを拠点とする高級時計ブランドです。再興後は精密な構造と仕上げの美しさで評価を高めてきました。ヴィンテージという文脈では、生産背景や製造思想が重視される傾向があります。

なお、リシュモングループにはこのほかにもボーム&メルシエやロジェ・デュブイなどの時計ブランドが存在します。ただし、本記事ではヴィンテージ時計市場での評価や情報の蓄積という観点から、言及頻度の高いブランドを中心に取り上げています。

ヴィンテージ時計市場から見たリシュモングループ

時計業界には複数の大手グループが存在しますが、ヴィンテージ時計市場では、それぞれ異なる評価軸で語られます。リシュモングループの時計が安定した評価を受ける背景には、グループ全体の時計事業の方向性が関係しています。

高級機械式時計を中心としたブランド構成

リシュモングループ傘下の時計ブランドは、多くが機械式時計を中心に発展してきました。クォーツ化が進んだ時代においても、機械式時計の価値を重視してきた点は、ヴィンテージ市場で評価される要素の一つです。設計思想や製造背景が明確であることも、時計としての信頼性につながっています。

スウォッチグループとの方向性の違い

時計業界を代表するグループの一つにスウォッチグループがありますが、その展開は幅広い価格帯と量産体制に特徴があります。一方、リシュモングループは高級機械式時計を中核としたブランド構成を維持してきました。この方向性の違いが、ヴィンテージ市場における評価のされ方にも影響しています。

ヴィンテージ市場で評価されやすい背景

ヴィンテージ時計では、製造年代やブランドの継続性、修理や整備のしやすさが重視されます。リシュモングループ傘下の時計は、長期的なブランド運営が行われてきた背景があり、こうした条件を満たしやすい傾向があります。

なぜリシュモングループの時計はヴィンテージで注目されるのか

なぜリシュモングループの時計はヴィンテージで注目されるのか

リシュモングループの時計がヴィンテージ市場で注目される理由は、単に高級ブランドを多数擁しているからではありません。各ブランドが長年にわたり機械式時計を中心に開発を続け、時計そのものの完成度を重視してきた姿勢が、市場評価の土台となっています。

リシュモングループ傘下の多くのブランドは、自社またはグループ内でムーブメント開発を行い、安定した品質と技術継承を重視してきました。この背景により、製造から年月が経過した個体であっても、構造や精度の面で評価されやすい特徴があります。

また、軍用時計やスポーツ用途、日常使用を前提としたモデルが多く、装飾性よりも実用性を優先した設計が採用されてきました。こうした設計思想は、ヴィンテージ時計において重要視される耐久性や修理のしやすさにも直結します。

さらに、流行に左右されにくいデザインを採用してきた点も、価値が長期的に維持されやすい要因です。結果として、リシュモングループの時計はコレクション対象としてだけでなく、実用品としても評価され、ヴィンテージ市場で安定した注目を集めています。

ヴィンテージで評価されやすいリシュモングループの時計

リシュモングループの時計は、すべてのモデルがヴィンテージ市場で高く評価されるわけではありません。その一方で、誕生背景や設計思想が明確で、長期間にわたり実用されてきたモデルは、現在でも安定した評価を受けています。

ここでは、リシュモングループ傘下ブランドの中でも、ヴィンテージ市場で特に評価されやすい代表的な時計を取り上げ、それぞれの特徴や評価される理由について解説します。

IWC マーク11

IWC マーク11

IWCのマーク11は、軍用時計としての実用性を極限まで追求したモデルとして知られています。1940年代後半に英国空軍向けに採用された背景を持ち、耐磁性や視認性、精度の安定性を重視した設計が特徴です。

シンプルな文字盤構成と堅牢なケースは、華美な装飾を排した純粋な計器としての完成度を示しています。ヴィンテージ市場では、軍用由来の信頼性と設計思想が評価され、時計としての本質を重視する層から安定した支持を集めています。

ジャガー・ルクルト レベルソ

ジャガールクルト レベルソ

レベルソは、1930年代にポロ競技用として誕生した反転ケース構造を持つ時計です。ケースを反転させることで風防を保護するという発想は、当時としては非常に革新的でした。

デザイン性の高さが注目されがちですが、その背景には明確な実用目的があります。

さらに、ジャガー・ルクルトがムーブメント製造において長い歴史を持つ点も、ヴィンテージ評価を支える要因です。構造と機構の両面で独自性があり、時代を超えて評価されやすいモデルといえます。

カルティエ サントス

カルティエ サントス

サントスは、1904年に誕生した実用腕時計の先駆けとして知られています。飛行家アルベルト・サントス=デュモンの要望を受け、飛行中でも時間を確認しやすい時計として開発された経緯があります。

スクエアケースやビス留めベゼルといったデザインは視覚的な特徴として語られますが、本質は日常使用を前提とした合理的な設計にあります。宝飾ブランドのイメージが強いカルティエの中でも、サントスは時計としての実用性が評価されやすく、ヴィンテージ市場でも安定した人気を保っています。

モデル本来の用途選ばれる理由価格帯
IWCマーク11軍用・航空時計耐磁性と精度を重視した計器としての完成度150万円〜180万円
ジャガー・ルクルト レベルソポロ競技用反転ケース構造と独自性の高い設計75万円〜160万円
カルティエ サントス実用腕時計初期腕時計としての歴史的価値と合理性100万円〜300万円

※価格帯はR8年2月時点

リシュモングループの時計に関するよくある質問

リシュモングループの時計については、ブランド構成や他の時計グループとの違いなど、基本的な点が分かりにくいと感じる人も少なくありません。ここでは、リシュモングループの時計に関してよくある質問を取り上げ、ヴィンテージ時計の視点も踏まえながら解説します。

Q: リシュモングループとはどのような時計企業グループですか

A: リシュモングループは、スイスを拠点とする高級ブランドを中心とした企業グループです。時計分野では、機械式時計を主軸とする伝統的なブランドを多数傘下に持ち、長期的な視点でブランド価値とものづくりを維持している点が特徴です。

Q: リシュモングループの時計ブランドにはどのような特徴がありますか

A: リシュモングループの時計ブランドは、実用性や設計思想を重視したモデルが多い傾向にあります。流行に左右されにくいデザインや、機械式ムーブメントを中心とした構成により、長期間にわたって評価されやすい点が特徴です。

Q: IWCはなぜリシュモングループに含まれているのですか

A: IWCは耐久性や精度を重視した機械式時計づくりで評価されてきたブランドです。2000年にリシュモングループの一員となって以降も、こうした技術志向を継承し、グループの時計部門を支える存在となっています。

Q: スウォッチグループとリシュモングループの違いは何ですか

A: スウォッチグループは、幅広い価格帯のブランドを含む多層的な構成が特徴です。一方、リシュモングループは高級機械式時計を中心に展開しており、長期的な価値や品質を重視したブランド構成に違いがあります。

Q: リシュモングループの時計はどのような人に向いていますか

A: リシュモングループの時計は、デザインだけでなく、その背景にある歴史や設計思想を重視する人に向いています。特に、ヴィンテージ時計に関心があり、長く使い続けられる時計を探している人に適した選択肢といえます。

まとめ

リシュモングループの時計は、高級ブランドを多数抱えるだけでなく、機械式時計を軸とした一貫したものづくりの姿勢を持っています。その背景には、実用性や設計思想を重視し、長期的に価値を築いてきた歴史があります。

こうした姿勢は、ヴィンテージ時計市場でも評価されやすく、時代や流行を超えて支持される理由となっています。単に古い時計だから価値があるのではなく、背景や思想が現在でも通用している点が、リシュモングループの時計の強みです。リシュモングループの時計の特徴を理解したうえで、背景や設計思想を意識しながら、ヴィンテージ市場の魅力やデザインの面白さを感じてみましょう。

福留 亮司

記事の監修

福留 亮司

『流行通信』を経て1990年に『エスクァイア日本版』編集部に参加し、1995年に副編集長に就任。
1997年よりフリーとして活動し、ファッション・時計・ライフスタイル領域を中心に幅広い取材・編集を手がけてきた。
2011年には『GQ Japan』シニアエディターを務め、雑誌・Web双方で豊富な実績を持つ。

時計分野では1990年代後半から企画・ブランド取材・モデルレビューを担当し、バーゼルワールドやジュネーブサロン(現 Watches & Wonders)などスイスの主要時計展示会を長年取材。ヴィンテージから現行モデルまで横断的な知識と深い造詣を有する。

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秋吉 健太

秋吉 健太

秋吉 健太(あきよし けんた)
編集者/クリエイター

雑誌編集20年、Web編集10年。『東京ウォーカー』編集長、Yahoo!ニュース エキスパートとして多数の記事を制作し、インタビュー企画・レビュー・解説記事など一次情報に基づくコンテンツを数多く手がけてきた。時計分野では5年以上にわたりブランド取材、モデルレビュー、専門家インタビューを担当し、ヴィンテージと現行の両領域に精通している。

FIREKIDSマガジンでは、ヴィンテージ時計の入門記事から専門的な取材記事、SEO構成の設計まで幅広く担当。正確な年代表記、モデル背景、真贋情報など、時計専門店として求められる一次情報と正確性を重視した記事づくりを心がけている。

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