【今月の1本】野村一成(店長)シンプルで普通っぽいが、どうしても惹かれてしまう魅力の“オールドインター”

2022.07.05
Written by 編集部

30年経った現在でも時々使う

 やはりオールドインターですね。オールドインター(IWC)のオートマティック、1960年代前半のものです。

 僕はこれと同様のモデルを20歳の時に買ったんですけど、30年経った現在でも時々使います。やはり年数が経って、時計のことをより知るようになっても惹かれるものがある腕時計なのです。

 僕が購入した90年頃、『mono magazine』にオールドインターの特集が組まれていて、そこに掲載されていたのです。それで知って、惹かれました。当時はかなり安かったので、今考えると良いものが安い時代だったんだな、とつくづく思います。そのインターの自己満足度はすごく高いのですが、誰も褒めてくれなかったという、少し寂し思い出もある腕時計です。

 当時、インターは、時計が好きな人は知っているけど、一般の人だと10人聞いて1人知っているかどうか、というレベルでした。シンプルで、見た目も普通といえば普通なので、そこがいいのですが。ただ、機械を見るとつくりの良さがわかります。

 搭載のムーブメントは、ペラトン式のCal.8531。カチカチという音も独特で、まさに“機械”という感じがします。その機械にはかなり磨きが入っていて、手間がかかっていることがうかがえます。

 このペラトン式のオートマティックは、50年にIWCの技術責任者であるアルバート・ペラトンによって製作されたキャリバーです。つめレバー式で、両方向巻上げというのが特徴で、IWCの代名詞的キャリバーにもなっています。

ドイツ語圏の時計メーカー

 またIWCはスイスでも、パテック フィリップやロレックス、オメガなどのようにフランス語圏のメーカーではなく、シャフハウゼンというドイツ語圏に本社を置いていることが腕時計の特徴に現れているようです。機械もデザインもドイツっぽいのです。質実剛健という感じのつくり方も魅力のひとつになっているのだと思います。

 さらにオールドインターは文字盤に表記されるメーカー名が、現行商品のような「IWC」ではなくて「International Watch Co.」と筆記体で描かれています。その時代性にも魅力を感じる人が多いのではないでしょうか。僕はいま50歳ですが、この年代以上の時計好きは、親しみを込めてIWCのことをいまでも“インター”って呼んでいます。

 文字盤を見ると、やはり「International Watch Co.」に目がいってしまうのですが、よく見ると、文字盤や針などディテールの仕上げがとてもいいのに気がつきます。それに加え、先ほども述べましたが、機械が抜群の仕上がりなのです。

 そう考えると、あらためていい時計だと思うのですが、ファイアーキッズでの価格は20万円前半に抑えられています。ペラトン式のオートマティックで、この価格というのは本当にお買い得だと思います。

 やはり自分が好きな時計にはどうしても目がいってしまうので、コンディションのいいインターがあると、高くても仕入れてしまいます。なので、ファイアーキッズには常時1、2本のストックはある状態です。

 腕時計にはメンテナンスがつきものですが、このオールドインターは部品も肉厚につくられており、品質もいいので、ゼンマイや風防などに交換の必要性は出てきますが、非消耗部品が壊れるケースはほとんどありません。そういう面でも扱いやすいアンティークウォッチだと思います。

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