ロレックス『デイトナ』は王道。身につけることは心構えとしてもいい影響がある
文=青山鼓
時計好きに「あなたの時計、見せてください」という企画。今回、時計を見せてもらったのは、Webコンサルタントと企業の橋渡しをするWeb支援事業会社「StockSun」代表の岩野圭佑(いわの・けいすけ)さん(33歳)。愛用モデルはロレックス『デイトナ』だ。
政治家になりたかった
「時計は好きですが詳しいというわけでもなく……、僕で大丈夫ですか?」とインタビューに少し緊張した面持ちの岩野さん。リラックスしてもらうために、まず話しやすいご自身の経歴から伺うと「政治家になりたかったんですよね」というインパクトのある言葉が飛び出す。ありきたりな人物ではない雰囲気がのっけから漂う。
岩野さんは京都大学法学部出身。法曹界へ進もうと入学したものの、在学中にとあるきっかけで政治家への道を志すと、大学院では安全保障を研究しながらインターンで政治家秘書を経験。卒業後は古くからの友人の誘いでウェブ制作の会社を立ち上げ、3年後には自身で立ち上げたウェブコンサルティングの会社を始める。
ここで、現在代表取締役を務める「StockSun」との繋がりができ、2018年からコンサルとして活躍。StockSunでは2020年から2年連続で社内売上げ一位を獲得し、当時の代表である「フリーランスの王」株本祐己さんの片腕的存在になると、2022年8月に株本さんからの打診を受けて代表取締役に就いた。
「めちゃ省略して話すと、そんな感じです」と爽やかに笑う岩野さん。結果を出しながらステップアップを果たした優秀なビジネスパーソンである岩野さんにとって、時計とはどのような存在なのだろうか。
「時計の世界を知ったのは26歳のころに銀座の時計店のコンサルティングに従事したのがきっかけです。オーナーは歯医者も経営しているお金持ちだったのですが、その人が時計や絵画をたくさん持っていたんです。時計が人から人へと渡っていくなかで価値を高めていく、とてもおもしろい世界だと感じました。当時貧乏だった自分にはまったく理解できない世界でしたが(笑)」
29歳で自らの会社も立ち上げる
はじめて起業してから仕事のことを考えない日は一日もなかったというハードワーカーの岩野さん。その後29歳の頃には自らの会社も立ち上げて「生活水準も以前よりだいぶマシになったので」、自分へのご褒美としてジラール・ペルゴの『ワールドタイム』を購入。当時の購入金額は70万円ほど。
「いまお話した時計店で仲良くなった鑑定士の方に予算はこれくらいで、良い時計はないですか? と聞いて選んでもらったうちの一本です。おしゃれな時計だなと感じましたし、なによりも鑑定士さんが“岩野くんの人柄にも合ってると思うよ”と言ってくれた言葉が響いて、購入を決めました。初めての機械式時計は仕事に挑む気持ちを引き締めてくれましたし、当時ITの業界ではアップルウォッチをつけて服装もTシャツで、というスタイルが流行っていましたが、あえて自分はスーツを着てエレガントな機械式時計をつけるという、人が選ばない方法をとることに傾倒していた時期でもあって。ジラール・ペルゴの時計はそんな自分のスタイルを象徴する時計でした」
そしてコンサルとして実績をあげるにつれて、2020年には30歳でオーデマ・ピゲの『ロイヤルオーク』を購入。このときも鑑定士の勧めに素直に従った。
「ITの世界には、もちろん優秀な方も多いんですが、その一方で自分のことを誇大に吹聴する人もたくさんいます。そんな人たちの中に自分もいるわけですが、自分がきちんと実績をあげていることの証明が時計でした。その上で日常使いができて、過度にこれ見よがしなものでもない時計を身につける。勧めていただく時計も、自分のビジネススタイルを表現してくれそうなものが多くて。当たり前のことをちゃんと当たり前にやる。実績を吹聴しない、背伸びしすぎない、そんな姿勢ですね。派手すぎず、でも品質がしっかりしていて、時計としての価値が認められているところが気に入りました」
代表取締役に就任してロレックスを
2018年にStockSunの代表取締役に就いたことをきっかけに、ロレックスの『デイトナ』を購入。このときにも、会社の規模を拡大することを自らのミッションとしたことと、選んだ時計に繋がりを持たせていた。
「会社として立ち上げから拡大へとフェーズが切り替わり、そこで自分が代表に就いたわけですが、まっとうに、そしてしっかりと拡大することを見据えて経営を行っていこうと考えているんです。その意味で、『デイトナ』って誰もが認める王道の時計ですよね。そんな時計を身につけることは、心構えとしてもいい影響があるのかなと思っています」
ちなみに選んだモデルは現行品ではなく、廃盤になってしまったモデル。これから希少性がどんどん上がり、価値を高めていく。
「その点もStockSunに通じるものがあると思っているんです。成長とともに価値を高めていく、そんな時計を選びました」
そのとき自分が目指すもの、自分自身のスタイルを理解して、自分に合う時計を選ぶ。岩野さんのことを深く理解してくれる慧眼の持ち主との出会いも幸運だった。岩野さんのストーリーからは、よい時計店を選ぶことの大切さをあらためて感じる。
writer
青山鼓
1974年生まれ。2005年よりフリーランスのライターとして、雑誌『POPEYE』『BRUTUS』でファッション、カルチャーの分野での編集・執筆活動を開始。現在は『Forbes JAPAN』『PEN』『GQ Japan』『Business Insider Japan』などのライフスタイルメディアや『トヨタイムズ』など企業のオウンドメディアで、ビジネス、自動車、時計、ファッション、酒、旅など幅広い領域における、海外取材やVIPインタビューなどを手掛ける。