買って後悔しない!実用的なチューダーのヴィンテージモデル
文=戸叶庸之
ご存知のように、ロレックスの創業者ハンス・ウイルスドルフによって、1926年に創業されたチューダーは、ロレックスのディフュージョンブランドという立ち位置で立ち上げられた。ところが、蓋を開けて見ると、単なるディフュージョンブランドでは終わらないユニークなブランディングがあり、そこが多くの時計ファンの心をくすぶらせたのだ。第6回は実用的なヴィンテージウォッチを4本を紹介する。
1.チューダー プリンス デイトデイ Ref.76200 (2002年製)
ここのところ、ロレックスのプレステージモデル『デイデイト』の人気が急速に高まっている。『デイデイト』の主な特徴は、ケースやブレスレットの素材に貴金属しか使わないこと(例外として、プロトタイプでステンレススチールのモデルが存在する)、そして日付に加えてフルスペルの曜日を2つの小窓にそれぞれ表示した世界初腕時であることだ。
かつてチューダーには、フルスペルの曜日を2つの小窓を文字盤に配した『デイデイト』と同じ機能を持つ『プリンス デイトデイ』というモデルがあった。『デイデイト』との大きな違いを挙げるなら、第一に素材使いが挙がる。貴金属のみを使用する『デイデイト』に対して、『プリンス デイトデイ』はステンレススチールを中心にコンビケースも使用していた。この点から『プリンス デイトデイ』とは、『デイデイト』と よりもむしろ『デイトジャスト』に近いポジションのモデルだったと考えられる。現在、チューダーでは『チューダー ロイヤル』の42mmのみ、これに近いデザインを採用している。
ここで紹介するチューダー『プリンス デイトデイ』は、2002年製とヴィンテージと呼ぶには若いかもしれないが、普段使いには最適だろう。小ぶりの36mm径のケースサイズ、スムーズベゼル、そしてチューダー純正のジュビリーブレスレットが装着されている。使い勝手が良いので1本押さえておくと非常に便利だろう。ロレックスの『デイデイト』はもちろん、『デイトジャスト』よりもこなれた価格で入手できるのも魅力だろう。
2.チューダー クロノタイム Ref.79180 (1991年製)
ロレックスのクロノグラフの主戦力である「コスモグラフ デイトナ」に、「オイスター デイト」から始まるチューダーのクロノグラフは独自の進化を遂げてきた。
たとえば、通称“ホームベース”や“モンテカルロ”と呼ばれる初期頃のモデルは、1970年代のクロノグラフとしては大きな40mm径であり、「コスモグラフ デイトナ」よりもいち早くリューズガードを装備していた。何よりも目立っていたのが、一度見たら忘れないレトロスペクティブな文字盤であり、非常に70年代らしいデザインだと言える。
チューダーのクロノグラフ「クロノタイム」は、ねじ込み式のクロノグラフプッシャーを採用したデイトナの手巻きモデルであるRef.6263、Ref.6265のと、自動巻きモデルRef.16520のデザインをミックスしたようなデザインが昔から定評があり、タイガー・ウッズとのコラボレーションモデルもある。最近では、このモデルにインスパイアされたゴールドモデルのユニークピースが、、オークション「オンリーウォッチ 2023」に出品されたことが話題となっている。
手巻きデイトナを筆頭に、ロレックスやチューダーのヴィンテージクロノグラフは高価な代物どころか、入手がすること自体が難しくなっているが、「クロノタイム」は価格も含め、まだまだ狙い目だと言えるだろう。
3.チューダー ミニサブ Ref.73090(1987年製)
ロレックスとチューダーに間において、最も酷似しているデザインを採用したモデルはおそらく『サブマリーナー』だろう。どちらもヴィンテージの初期モデルは、完全なコレクターズアイテム化していて、市場に出てくることさえ非常に稀である。現実的に購入できるヴィンテージモデルの代表格はロレックスのRef.5513だろう。
チューダーのヴィンテージモデルに関しては、ある意味ではロレックス以上に入手が難しいと言われており、残念ながら多くの偽物が出回っているの実情だ。真贋を見極めるのはプロでも簡単なことでない。
そこでお勧めしたいのが、真贋を不安がほぼ解消される4サイズでの展開を始めた時代のモデルである。
ここで紹介するのは、“ミニサブ”と呼ばれるRef.73090である。32mm径のサイズはロレックスの『サブマリーナー』には存在しないサイズであり、このサイズ感の違いは非常に大きい。さらには、夜光塗料がトリチウムであるため、ヴィンテージ感が強く押し出されている。『サブマリーナー』の変わり種として注目すべき1本である。ちなみの文字盤は、このブラックのほかにブルーがある。
4.チューダー プリンスデイト Ref.74000(1997年製 )
チューダーには、「レンジャー」というロレックスでいう「エクスプローラー」の立ち位置のコレクションがある。これらのプロフェッショナルモデルが人気である理由は、小ぶりなケースサイズのほかに、毎日使っても問題がない耐久性や防水性にあった。とはいえ、完全なヴィンテージになると、その機能は損なわれてしまっているため、日常生活防水程度に考えておくのが妥当だろう。
その点、1990年代頃の時計はヴィンテージに近いサイズ感を持ちながら、現行コレクションに近いスペック、使用感が楽しめるのが魅力である。こちらのチューダー「プリンスデイト」は、まさにそれである。ファッションに合わせやすいダークブルーの文字盤に、今のメンズウォッチにはほぼない34mm径のケース、さらにはチューダー製のジュビリーブレスレットが付くことも嬉しいポイントだろう。
Ref.74000のダイヤルデザインはひとつではない。こちらの個体が持つ3・6・9のアラビアンインデックスとジュビリーブレスレットとの組合せは、カジュアルアップに使うと効果的あることは言うまでもない。つまり、ファッションアイテムとして非常に優れているのだ。
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戸叶庸之
神奈川県出身。大学在学中に出版社でのアルバイトからマスコミ関係の仕事に携
わる。その後、カルチャー誌、ファッション誌で編集・ライターとして活動をスタート。Web媒体は黎明期から携わり、藤原ヒロシ氏が発起人のWebマガジン「ハニカム」、講談社「フォルツァスタイル」などの立ち上げに参加。現在は、各種メディアで執筆、編集、ディレクションのほか、Webマーケティングや広告案件に従事。時計については、趣味でヴィンテージロレックスを収集しつつ、年代やジャンルを問わず、様々な角度から高級時計のトレンドを常に追いかけている。