オメガとロレックスのロングセラーモデルに見る、ヴィンテージと現行品の違いとは？

出演：野村×宮崎

腕時計の歴史はおよそ120年。なかには長年にわたり愛され続けているモデルも存在する。今回は、そんなロングセラー時計のヴィンテージと現行品の違いを語った。取り上げるのは、オメガの『スピードマスター』とロレックスの『エクスプローラーⅠ』だ。

細かなディテールの違いを楽しむ、オメガ スピードマスター

1本目は、オメガの『スピードマスター』。ヴィンテージの『スピードマスター5th 初期 1968年製 Ref.145.022』と、現行の『スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル』を比較する。ほとんど見た目が変わらないモデルだが、違いはどこにあるのだろうか。

「現行の方が精度も高くなっているし、サファイアガラスを使用して強度も上がっているし頑丈だよね。でもなぜヴィンテージが売れるのか——。スピードマスターはみんなが着けているじゃない？　それが嫌だって人がヴィンテージを買うんだよね。細かなディテールの違いにこだわる人がヴィンテージを狙ってくる」（野村さん）

「ブレスなんかは違いますもんね」（宮崎さん）

「夜光の雰囲気とかも。今の時計は夜光塗料も変色しづらいし、印刷の技術も上がっているからね。サファイアガラスは傷をつけなきゃ50年でも100年でも使えるわけよ。それに対してヴィンテージは劣化しやすい。プラスチック風防は細かな傷がついて透明度が落ちたり割れたりして交換しなきゃいけない。良いところも悪いところもあるけれど、今のサファイアガラスは立ち上がって丸みがあるから横から見ると格好悪いのよ」（野村さん）

「ヴィンテージはプラスチックなので立ち上がりがない。ヴィンテージの雰囲気が好きな方は、そういった細かいところが気になって見ています」（宮崎さん）

防水性能などは圧倒的に現行の方が良くできているため、ディテールのこだわりがなければ現行を選ぶ方が間違いない。価格はヴィンテージが1,080,000円、現行が1,078,000円だ。金額はほぼ変わらないが、現行の方がブレスやガラスが頑丈なため重くなっている。

野村さんは「現行の方が良い」としつつも、「100万円を出して同じ時計をしている人がいたらテンションが落ちない？　電車に乗ると同じ時計をしている人が1両に一人はいるんじゃない？」と語る。他人と被りたくない人にはヴィンテージがおすすめだ。

「紹介している時計は5thですけれど、宇宙に行った4thと同じ顔をしています。ヴィンテージの“うんちく”をプラスで語れるのは良いですよね」（宮崎さん）

「『俺の時計はちょっと違うから』と自己満足を得るために精度や防水性を気にしないでいるか、他人と同じものでも性能はしっかりしていた方が良いか、人それぞれだよね」（野村さん）

「現行の方が頑丈だし安心して使えるけれど、ヴィンテージはそれ以上にロマンが詰まっている。理屈じゃないところに魅力を感じますね」（宮崎さん）

ヴィンテージはプレミア価格！ ロレックス エクスプローラーⅠ

2本目はロレックスの『エクスプローラーⅠ』を取り上げる。ヴィンテージは『エクスプローラー 1967年製 フロッグフット Ref.1016 リベットブレス』、現行は『エクスプローラー オイスター 36mm オイスタースチール』を見ていく。

野村さんはまず、“Ⅰ（ワン）”の呼び名に言及した。

「みんなエクスプローラーⅠと言うけれど、俺の中ではただのエクスプローラー。“Ⅰ”なんてどこにも入っていない。スピードマスターもMarkⅡはあるけれど、MarkⅠとは言わないじゃん！」（野村さん）

「研究が進んで細分化されていく。『どんどん名前が付いて大変だよ』と松浦さん（スタッフ）が言っていました。それだけヴィンテージに興味があるというか、いろいろと調べて周りとは違う一本が欲しい気持ちが現れているんですね」（宮崎さん）

「俺の時計はココが違うから！というのが欲しいんだよね」（野村さん）

野村さん曰く、細かい違いを語り始めたのは日本人だという。紹介しているヴィンテージのエクスプローラーは、王冠マークがカエルの足に似ていることから“フロッグフット”の名が付いている。これはヴィンテージならではだ。

「エクスプローラーは冒険家モデルだから、冒険したい人は現行の方が良いわけよ」（野村さん）

「スピードマスターと同じ理論で、頑丈で安心な方が良いですよね」（宮崎さん）

「筋トレできるくらい重い。サファイアガラスだしケースも分厚いし壊れないよね」（野村さん）

価格は、ヴィンテージが2,780,000円、現行は1,036,200円が定価と、ヴィンテージはプレミアが付いて3倍弱も高い。残っている個体数に対し、求める人が多いことでプレミアが付く。当時のエクスプローラーはあまり売れなかったため個体数が少ないが、現在になり人気が高まっている。

「価格差を考えると現行の方が魅力的に映ってしまいますね」（宮崎さん）

「格好良いけれど当時は売れなかったんだよね。なぜかと言うと、ロレックスが欲しい人はみんなデイトジャストを欲しがった。要は特徴的な日付付きが欲しかったわけ。ブランド物が好きな人はわかりやすいものが好きじゃない？　今も昔もそうだけれど、お金をかけたらわかりやすい方が良いのよ。でもヴィンテージ好きの人は自己満足を求めるから、見るポイントはそこじゃない」（野村さん）

現在のモデルの人気順は、デイトナ、サブマリーナー、エクスプローラー、その次にデイトジャストがくる。しかし昔は逆だったという。

「当時は、5連のベルトで日付のレンズが付いたデイトジャストの方が人気だったわけじゃない？　エクスプローラーはそんなに売れない時計だった」（野村さん）

「エクスプローラーは現行まで続きますけれど、夜光だったり20mmのリベットブレスだったり、風防が違ったり。ヴィンテージはマットなブラックだけれど、現行はキラキラした文字盤」（宮崎さん）

「光るよね。現行の方が見栄を張れます！　アウトドアする人だったら夜光が光ってくれた方が嬉しい。でもヴィンテージ好きな人は光らなくても良いわけだよね」（野村さん）

「アウトドアとなると、チープカシオやセイコーのプロスペックスとかでも事足りますね」（宮崎さん）

「スマホでいいじゃん！　あっ……言っちゃった（笑）。ヴィンテージの良さがわかるのは100人に1〜2人だと思うよ」（野村さん）

性能を比べれば現行の方が良いのは言うまでもないが、他人と被らないこだわりの一本を探したければ、ぜひヴィンテージの世界を覗いてみてほしい。