一生使える!メンテナンスしやすいヴィンテージ時計の特徴を解説

2024.09.03
Written by 編集部

出演:野村×久保

【本文】

ヴィンテージ時計を長く楽しむにはメンテナンスが必要不可欠。今回は、メンテナンスしやすい時計の特徴を解説する。

ヴィンテージ時計の方がメンテナンスしやすい理由とは?

メンテナンスしやすい時計の特徴はどこにあるのだろうか。野村スーパーバイザーに聞く。

「古い時計は町の時計屋さんやデパートで分解掃除していたので、今とは設計思想が違うんだよね。現行の時計はメーカーでメンテナンスをする前提で設計されている」(野村さん)

昔の宝飾店にはお抱えの職人さんがおり、メーカーは商品開発をする際に職人さんたちに伺いを立てていたという。宝飾店では時計を売り、その後のメンテナンスも担っていたため「修理しづらい時計は仕入れない=売れない」という構図になる。そのため、昔の時計は修理しやすい設計になっていた。

「セイコーも町の時計屋さんを集めて説明会をやっていたんですよ。『今後こういう新作を考えているけれどどう?』みたいな。『いやこんなのダメでしょう』と言われたら仕入れてもらえないので、設計変更せざるを得ないこともあったんだよね」(野村さん)

「年代的にはいつまで続いていたんですか?」(久保さん)

「1990年代くらいまでかな。1970年代には時計職人の仕事は電池交換がメインになるんだよね。もう時計の分解掃除を覚えようという人がいなくなっちゃった。分解掃除できる人たちが引退する2000年代くらいになると、自分たちのところでメンテナンスをする前提で設計ができるようになるんだよね。それでも、メーカーによってはメンテナンスしやすい設計が前提のところもあるけれど、メーカーとしては抱え込める方がおいしいよね」(野村さん)

“新作の自社ムーブメント”である場合、メーカーでのメンテナンスが前提で設計されていることが多い。一方、1980〜1990年代くらいまでの時計は1960〜1970年代に設計した機械を積んでいるものが多く、比較的メンテナンスしやすいという。

メンテナンスがしやすいのは、シンプルな手巻きのノンデイト

手巻きや自動巻き、クォーツも含めていろいろなタイプがあるが、メンテナンスしやすい時計はどれなのだろうか。

「一番メンテナンスしやすいのは、カレンダーのセットをしなくていい、手巻きノンデイト。職人さん的にはラク」(野村さん)

「デイトなしとデイト付きでは、修理代金に差はあるんですか?」(久保さん)

「ファイアーキッズでは差をつけていない。日付の早送りが付いているものと付いていないものを比べると、付いていないものの方がラク。でもそこで金額に大きな差はないです」(野村さん)

ヴィンテージ時計の場合、複雑なデイト付きであってもそこまで修理代に差がないのが魅力だ。ただし、クロノグラフやムーンフェイズ、日付に加えて曜日があるものなど、より複雑な機械になると修理代は高くなる傾向にある。

マイナーなメーカーの場合はどうなのだろうか。

「マイナーで『自社で一貫生産しています』という時計も厄介。でも聞いたことのない時計でも、エボーシュというムーブメントメーカーから買っている機械が入っているとラクなことも。ただ、気をつけないといけないのが外装。同じ針や同じ形のリューズを探すのは大変。代用部品で良ければ簡単な話だけれどね。機械は共用されているものが多いから、ゼンマイとかは消耗部品扱いで比較的探すのは簡単です」(野村さん)

購入の際にはメンテナンス代も考慮しておくべし!

「ヴィンテージ時計でも、ていねいに扱ってメンテナンスもしっかりできていれば、長く使えるのが大きな利点ですね」(久保さん)

「乱暴に扱わない。あとは水にも注意。錆びている非消耗部品を探すのは大変なこと。錆が一番怖いかもしれないですね。もちろん『お金がいくらかかってもいいよ』と言うならできないことはない。例えば、オメガの『コンステレーション 1963年製 ビッグケース 純正尾錠付き クロノメーター自動巻き Ref.168.001』は22万8千円だけれど、『修理代は10万円かけます』と言ってもらえれば何とかなっちゃう。でもそんなにかけたくないのが普通。このあたりの時計だと3〜3.5万円くらいで分解掃除ができる」(野村さん)

野村さん曰く、時計代の1割程度はメンテナンス代として考えておくとよいという。ただし、ヴィンテージの場合、100万円超えの時計でもメンテナンス代は2〜3万円で済むこともある。

「時計を維持するにはメンテナンス代も考えていただくとよいので、購入する時に確認しておくといいかなと思います」(野村さん)

「ファイアーキッズでも聞いていただければお答えします」(久保さん)

「昔よく『トゥールビヨンが欲しい』と言っていた人がいるけれど、オーバーホールが80万円くらいでしかもスイス送り。スーパーカーに乗る人は維持費がかかることを理解して買うわけじゃない? トゥールビヨンはスーパーカーなんだよね。それを理解して買っている人がいるのかというと、どうなんだろう……」(野村さん)

「先を考えて購入しないと、維持費として難しいことが出てくるわけですね。せっかく買うのなら長く使ってほしいです」(久保さん)

「ファイアーキッズでは一生物として使える時計を取り扱っているつもりなので、維持していくのは必要なこと。維持できないのであれば売る手もあります(笑)」(野村さん)

時計好きの方のなかには、何本も似た時計を持っていたり、実際に使っている時計は限られていたりする方も……。すべてをメンテナンスして維持していくのが大変であれば、眠っている時計を売り、お気に入りの時計のメンテナンス代に回すのもアリだ。

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