ストーリーが詰まったパイロットウォッチ4選!

2024.12.08
Written by 戸叶庸之

名作と呼ばれるパイロットウォッチ必ずと言えるほどユニークな背景がある。ファイアーキッズの店頭から選んだ4本の逸品をピックアップした。

1.ロレックス「GMTマスター』 Ref.1675(1978年製)

1950年代初頭、ロレックスにパンアメリカ航空から国際線パイロットウォッチ開発の依頼があり、1955年に発表となった『GMTマスター』。それ以前にもデュアルタイムやワールドタイムなどの機構を搭載した腕時計あったが、ロレックスは時差に注目し、24時間表示の回転ベゼル、24時間針を取り付けることで、シンプルな操作を考案し、差別化を図った。

また当時、海外旅行は一部の富裕層だけが楽しめるレジャーであったため、パイロットウォッチ『GMTマスター』は憧れの対象になっていった。そのためかゴールドのモデルもいち早く登場している。ここで紹介する『GMTマスター』Ref.1675は、この時代のマットダイヤルの模範とも言うべき個体だ。適度に退色した赤と青のベゼルインサートに、黄色がかったトリチウムの夜光がよく似合っている。

気になるコンディションだが、時針と分針はオリジナルの夜光だが、秒針と24時間針はレタッチされているそうだ。それ以外のパーツは特に問題なくオリジナリティを保っている。

2.ブライトリング『 コ・パイロット』 Ref.7650(1960年代)

ブライトリングのフラッグシップモデルであり、民間用のナビタイマーに対して、その補足版とも言うべき戦闘用パイロット向けのクロノグラフが、1953年に発表された『コ・パイロット』である。

著名人にも愛用され、一般的にも人気を博した『コ・パイロット』は派生モデルまで登場した。こちらで紹介する1960年代の『コ・パイロット』 Ref.7659は、名機バルジュ-178Tを搭載した逸品。

このモデルの最大の特徴は、3時位置のインダイヤルに配置した15分積算計だろう。これは初代『コ・パイロット』から引き継がれた機能であり、離陸前の時間がきっちり15分だっことが理由に挙がる。視認性を高めるために5分毎ごとに夜光塗料が塗られているのも大きなポイントだ。

コンディションについて話を移そう。マットブラックのダイヤルにこれといったダメージもなく、オリジナルの夜光塗料も健在だ。ケースの保存状態もよくラグの面取りもしっかりと残している。回転ベゼルのルミナスは欠落しているが、大きなダメージはない。消耗品であるブレスレットは雰囲気の合う社外品のパーツを取り付けている。

3. オメガ『フライトマスター』 Ref.145.026(1971年製)

オメガのパイロットウォッチ『フライトマスター』は、1969~1977年まで製造されたと言われている。

この年代らしいレトロスペクティヴなデザインと裏腹に、そのスペックは驚くべきものがあり、クロノグラフとGMT表示を併せ持つ多機能モデルだ。ロスコスモス(ロシアの宇宙開発全般を担当する国営企業)によって宇宙飛行士ために選ばれた時計で、1965年に世界初の宇宙遊泳に成功した旧ソ連の宇宙飛行士アレクセイ・レオーノフが着用していたことでも知られている。

こちらは後期モデルになるのだが、その機能を解説しよう。3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドを配したクロノグラフに、8時半位置のリュウズでインナーベゼル、10時位置の

リュウズで24時間針を調整することができる。ムーブメントはオメガの『スピードマスター」で知られるCal.861に機能を追加したCal911を搭載。インダイヤルがブラウンに変色している点がいかにもヴィンテージウォッチらしい。

4.ジラール・ペルゴ 『タイプ20』(1960年製)

1954年にブレゲの『タイプ20』がパイロット用腕時計として初めてフランス軍に納入。ブレゲ以外にも『タイプ20』は製造され、ジラール•ペルゴやマセイ・ティソなどのブランドが挙がる。しかし、これらの『タイプ20』は納入された記録はなく、フランス軍の要請のもとに製造され、採用されなかったものと考えられる。

今回紹介するのは、1960年代に製造されたジラール•ペルゴ版の『タイプ20』である。

搭載されたムーブメントは、バルジューCal.72にフライバック機能を追加したCal.720。『タイプ20』以外では搭載しているモデルを見掛けないレアなムーブメントだ。

見るからにデザインは素晴らしいのだが、堅牢な作りも見逃せない。厚みのあるケースはスクリューバックで日常生活防水が期待できる。

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戸叶庸之

戸叶庸之

神奈川県出身。大学在学中に出版社でのアルバイトからマスコミ関係の仕事に携

わる。その後、カルチャー誌、ファッション誌で編集・ライターとして活動をスタート。Web媒体は黎明期から携わり、藤原ヒロシ氏が発起人のWebマガジン「ハニカム」、講談社「フォルツァスタイル」などの立ち上げに参加。現在は、各種メディアで執筆、編集、ディレクションのほか、Webマーケティングや広告案件に従事。時計については、趣味でヴィンテージロレックスを収集しつつ、年代やジャンルを問わず、様々な角度から高級時計のトレンドを常に追いかけている。

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