ヴィンテージ腕時計好きが最後に残す1本とは? “青サブ”に行き着いた理由
時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。
「もし最後に1本だけ残すとしたら、何を選ぶのか」ヴィンテージ腕時計の世界に足を踏み入れると、誰もが一度は考えるのではないだろうか。コレクションを重ね、売買や買い戻しを経験した先に残る時計には、スペックや相場だけでは語れない理由がある。今回はFIRE KIDSスタッフの中根、橋本、野村の3人が、「最後まで持っておきたい名作」をテーマに語り合う。中心となるのは、中根の私物である『青サブ』。数々のエピソードとともに、その魅力を紐解いていく。
初めての1本が価値観を決める
橋本が「今回は、中根さんが最後まで持っておきたい1本、『青サブ』について改めて聞かせてください」と、話を振る。
中根がヴィンテージ腕時計にのめり込むきっかけとなったのは、ロレックスの『デイトジャスト(Ref.16233)』だった。FIRE KIDSの前オーナー・鈴木氏の時代に店頭で出会い、3日間悩み抜いた末に購入したという。

「当時で30万円くらい。それでも自分には相当高い買い物で、手も足も震えていました」(中根)
初めの一歩が、ブルー文字盤×コンビという組み合わせ。続いて手にしたオメガの『スピードマスター』もまた、ブルーのコンビだった。
「他の人が購入しかけたのですが、売れなかったので『買っちゃおう!』と。これを逃したら…と、決心がついて思い切って買いました」(中根)
「スタッフあるあるだよね。売れそうになると、あ…やばいこれは…ってなるやつ(笑)」(野村)
青サブとの出会いは“計画外”だった
本命は別の時計だったと中根は話す。ゼニスの『レインボー』。だが、その計画を飛び越えて現れたのが、ロレックスの『サブマリーナー』、通称・青サブである。

「段階を踏んで、最終的に青サブに行こうと思っていたんです。でも、先に出会っちゃった」(中根)
極めつけは“生まれ年”の勘違いだった。店内ポップには1983年製と記されていたが、実際は1997年製。
「同窓会に生まれ年の時計を着けて行けると思っていたので、ちょっとショックでした」(中根)
「時計を勉強してたら1983年は存在しないモデルって分かるのに…鈴木さんに完全に狙われてたよね(笑)」(野村)
それでも中根は「結果的に、あの勢いがなければ買っていなかった。だから良かったと思っています」と、振り返る。
手放しても、戻ってくる時計『スピードマスター』
時計との関係にもいろいろある。以前、テレビを買うためにオメガの『スピードマスター』を手放した。だが常連客の間を巡り、再びFIRE KIDSに戻ってきたと知った瞬間、中根は“使命感”を覚えたという。「また戻ってきたら、自分が持たなきゃいけない気がして」と。
デイトジャストは青サブ購入時に下取りに出し、行方は分からない。それでも野村は「うちは買い戻しが高いから結構戻ってくるよ」という。
時計はモノでありながら、持ち主の記憶や時間をまとい、巡り巡って再会することがある。ヴィンテージならではの面白さだ。
使い続けるための“自分仕様”
中根の青サブは、いわゆる“ノーマル”ではない。バックルはシングル仕様に変更されている。
「一番縮めてもブカブカだったので、当時の職人さんにお願いしました」(中根)
「替えてでも着けたかった時計、ということですね」(橋本)
使いやすさの話になると、スピードマスターにも分がある。ねじ込みリューズではない分、日常使いでは気軽だ。それでも「好きなのは青サブ」と中根は即答する。青サブが40mm、スピードマスターは38mmと、「遠目に見たらほぼ同じ時計」と言われることもあるが、本人の中では明確な違いがある。

「もしバイオレット文字盤が出たら、そっちに乗り換えますけど」と笑いつつも、青サブを軸に楽しみ続ける姿勢は変わらない。
生まれ年へのこだわりは、今はそれほど強くないという。「1990年代の時計が好きなんです」。重要なのは年式ではなく、時間をともにしてきた実感だ。
最後に残す1本を選ぶ前に、よくある3つの疑問をQ&Aで紹介
「最後まで持っておきたい1本」を考え始めた人が、つまずきやすいポイントをQ&Aで整理します。
Q1.最後まで残す1本は、どんな基準で選べばいいですか?
A:長く使い続けたいと思えるかどうかを、基準にするのがおすすめです。
希少性や相場、状態の良さも大切ですが、最後に手元に残るのは「所有する満足感」よりも「使い続けた実感」がある時計です。迷ったときは、この先も自然に手に取るか、生活の中で無理なく使えるかを基準に考えると、後悔しにくくなります。
Q2.一度手放した時計を、買い戻すのはアリですか?
A.もちろんアリです。ヴィンテージ時計ならではの楽しみ方でもあります。
スピードマスターのように、別の持ち主の手を経て再び戻ってくるケースは珍しくありません。買い戻しを考える際は、感情だけで決めるのではなく、現在の状態や価格に納得できるか、今の生活の中で本当に使うかを確認することが大切です。「戻ってきたらまた持ちたい」と思える時計であれば、買い戻しは良い選択になりやすいでしょう。
Q3.ブレスが合わない場合、カスタムして使うのは問題ありませんか?
A.日常的に安全に使うための調整であれば、前向きに検討して問題ありません。
中根の青サブのように、コマ調整だけでは対応できない場合もありますが、そうしたときは、専門店や職人に相談し、装着感や落下防止を優先した調整を行うのも一つの選択です。将来的な価値が気になる場合は、元のパーツを保管し、元に戻せる形で対応できるかも含めて検討すると安心です。
買って、悩んで、手放して、また迎える。その積み重ねの先に、「最後まで持っていたい1本」が残る。FIRE KIDSには、そんな物語を持つヴィンテージ腕時計が並んでいる。初めての1本を探す人も、最後の1本を考え始めた人も、店頭で自分だけの腕時計に出会えるかもしれない。
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