セイコー手巻きクロノグラフの世界|Cal.5717搭載・国産初のクロノグラフを解説

2026.04.08
最終更新日時:2026.04.08
Written by 編集部

セイコーのクロノグラフといえば、Cal.6139やCal.6138を搭載した自動巻きの「スピードタイマー」が有名ですが、それ以前にセイコーが製造していた手巻きクロノグラフには、自動巻きにはない独自の魅力があります。

Cal.5717Aを搭載した手巻きクロノグラフは、国産初のクロノグラフとしても知られ、日本の時計史において極めて重要な存在です。1964年の東京オリンピックに合わせて販売されたモデルでは、裏蓋に聖火マークが刻まれた特別仕様も存在します。

この記事では、Cal.5717Aの特徴とワンプッシュクロノグラフの魅力を解説します。

セイコー手巻きクロノグラフの歴史

セイコー手巻きクロノグラフ Cal.5717A

自動巻き以前のクロノグラフ

セイコーがCal.6139で世界初の自動巻きクロノグラフを発表したのは1969年のことですが、それ以前から手巻きのクロノグラフムーブメントを製造していました。特にCal.5717Aは、国産クロノグラフの嚆矢(こうし)ともいえる重要なムーブメントです。

Cal.種類操作方式石数特徴
Cal.5717A手巻きワンプッシュ21石回転ベゼル付き、カレンダー機能付きモデルあり

プラスチックの回転ベゼルが付いたワンプッシュクロノグラフで、2時位置のプッシュボタンでクロノグラフを操作します。ワンプッシュ式という操作方式は、ひとつのボタンでスタート・ストップ・リセットをすべて行う設計で、現代のツープッシュ式(スタート/ストップとリセットが別ボタン)とは異なる操作体験を楽しめます。

Cal.5717A搭載モデル:ワンプッシュクロノグラフ

Cal.5717A搭載 ワンプッシュクロノグラフ

基本スペック

項目スペック
ムーブメントCal.5717A
巻き方式手巻き
石数21石
操作方式ワンプッシュ(2時位置)
ベゼルプラスチック回転ベゼル
カレンダークイックチェンジ機能付きモデルあり

デザインの特徴

  • ワンプッシュ操作:2時位置の単一ボタンでクロノグラフのスタート・ストップ・リセットをすべて操作
  • プラスチック回転ベゼル:タキメータースケール付き
  • カレンダー機能:クイックチェンジ機能付きのバリエーションも存在
  • 薄型ケース:自動巻きクロノグラフと比べて薄く、ドレッシーな印象

東京オリンピック記念モデル(聖火マーク)

1964年のセイコー手巻きクロノグラフの中でも特に注目されるのが、東京オリンピックに合わせて販売されたモデルです。裏蓋に聖火マークが描かれており、オリンピックイヤーの記念モデルとしてコレクション価値が高い存在です。

裏蓋の聖火マークは経年により薄くなっている場合もあり、はっきり残っているものほどコレクション価値が高く評価されます。

代表的な個体

  • 1964年製 Ref.5717-8990 カレンダー付き 回転ベゼル
  • 1964年製 聖火マーク シルバーダイヤル
  • 1964年製 聖火マーク ダークグレーダイヤル ステンレスブレス付き

手巻きクロノグラフの魅力

セイコー手巻きクロノグラフの魅力

操作する楽しさ

手巻きクロノグラフは、毎日のゼンマイ巻きに加えて、クロノグラフのスタート・ストップ・リセットという操作を楽しめます。手巻きの感触や針回し、クロノグラフ操作の滑らかさは、このモデルならではの大きな魅力です。

薄型ケースのドレッシーさ

自動巻きCal.6138/6139搭載のスピードタイマーはケース厚が厚くなりがちですが、手巻きクロノグラフは自動巻き機構がない分、ケースが薄く仕上がっています。ワイシャツの袖口に収まりやすく、ドレッシーなシーンでも使いやすい設計です。

「国産初のクロノグラフ」という歴史的価値

Cal.5717A搭載モデルは、国産初のクロノグラフとして日本の時計産業史において重要な位置を占めています。自動巻きスピードタイマーの陰に隠れがちですが、セイコーのクロノグラフ技術の出発点がここにあります。

手巻きクロノグラフの状態確認ポイント

ポイント1:プッシャーの操作感

ワンプッシュクロノグラフの操作感は、このモデルの価値を左右する重要な要素です。スタート・ストップが確実に切り替わるか、リセット時に針が12時位置に正確に戻るかを確認しましょう。

ポイント2:プラスチックベゼルの状態

プラスチック回転ベゼルは経年劣化しやすい部品です。経年で割れや欠けが生じている場合があるため、ベゼルの状態を確認することが重要です。

ポイント3:文字盤・ケースの経年変化

1964年製のモデルは60年以上前の時計です。文字盤やケースには経年なりの変化がありますが、年代を考慮した上での状態判断が求められます。

ポイント4:メンテナンスの計画

クロノグラフは3針時計と比べてムーブメントの構造が複雑なため、オーバーホールの頻度と費用が高くなる傾向があります。3〜4年に1回の定期メンテナンスを計画に入れておきましょう。

よくある質問

Q: セイコーの手巻きクロノグラフとスピードタイマーの違いは?

A: 最大の違いは巻き方式と操作方式です。手巻きクロノグラフ(Cal.5717A)は毎日ゼンマイを手で巻く必要があり、ワンプッシュ式でひとつのボタンで操作します。スピードタイマー(Cal.6139/6138)は自動巻きで着けているだけで動き、ツープッシュ式です。また、手巻きモデルはケースが薄くドレッシーな印象、自動巻きモデルはケースが大きくよりスポーティな印象です。

Q: セイコーの手巻きクロノグラフのオーバーホールは難しいですか?

A: クロノグラフは構造が複雑なため、クロノグラフの修理に精通した時計師に依頼することが重要です。ただし、Cal.5717Aはセイコー独自の設計で信頼性が高く、適切なメンテナンスを受ければ長く使い続けることができます。

Q: 聖火マーク付きモデルは特に価値が高いのですか?

A: 1964年東京オリンピック記念モデルとして販売された聖火マーク付きモデルは、歴史的・コレクション的な付加価値があります。裏蓋の聖火マークの残存状態も評価に影響します。

Q: ワンプッシュ式とツープッシュ式の違いは何ですか?

A: ワンプッシュ式は1つのボタンでスタート・ストップ・リセットを順番に操作する方式です。ツープッシュ式はスタート/ストップボタンとリセットボタンが分かれており、計測中にリセットを押してしまう誤操作を防げます。Cal.5717Aはワンプッシュ式を採用しており、シンプルな操作が楽しめます。

まとめ

セイコーの手巻きクロノグラフは、自動巻きスピードタイマーの華やかさに隠れがちですが、「国産初のクロノグラフ」という歴史的価値、薄型ケースのドレッシーさ、そしてワンプッシュ操作の楽しさにおいて、自動巻きにはない独自の魅力を持っています。

東京オリンピック聖火マーク付きモデルという唯一無二のストーリーも、このモデルを特別な存在にしている理由のひとつです。

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