相棒は同い年。生まれ年の時計を探せ!

2022.04.27
Written by 鈴木 文彦

いきなり私事で恐縮だけれど、筆者、1977年生まれで、自分と同い年のロレックス『デイトジャスト』のちょっと珍しい見た目のモデルを所有してる。好調に動作しているのだけれど、リューズ操作への反応が、若干あやしい。他店で購入したものだけれど、近々、FIRE KIDSに持ち込ませてもらいたい、と野村店長に話したところ「生まれ年の時計」は人気商品なのだそうだ。

こちらが筆者のデイトジャスト

アンティーク時計ならではの「人気モデル」

「最近いらしたお客さんも、1979年生まれで、たまたま、FIRE KIDSに同い年のロレックスがありまして……運命を感じた!と買われていったんですよ」

他店も含めて、店に立つこと20余年。野村店長によれば、これまで女性でそういうお客さんに遭遇したことはないが、男性は頻繁に探している、というアンティーク時計界の人気モデルが『自分の生まれ年の腕時計』だ。

件のお客さんも男性で、亡くなったお爺さんのロレックスを奥様が修理で持ち込んだことがFIRE KIDSとの出会い。そのロレックスは1967年製だったという。当時の価格で13万円ほど。同時期の『グランドセイコー』が3万円程度で、その3万円というのが、当時の一般的な一カ月のお給料で買えるか買えないか、という金額だったというから、その4倍のロレックスとは、かなりの贅沢品だ。

こういった輸入品にかかる税金が高かったことも高値の理由。海外で購入し、装着して日本に持って帰る、ということも多く、箱や保証書などが揃わないことのほうが多いのも60年代、70年代の時計の特徴。

ところが、FIRE KIDSにあった1979年製ロレックスは箱・保証書つきだった。これも購入の決め手になったという。

ちなみに修理されたお爺さんの残したロレックスは奥様が愛用している。

クォーツショックの影響で希少に

1970年代後半から1980年代の半ば頃までは、世にいう『クォーツショック』の影響で、機械式時計は世界的に勢いも人気もなかった。このため、現存する数が多くない、という問題もある。特に状態のよいものは。

「このため、日本で手に入るよい時計は、やはりロレックスの『デイトジャスト』や『パーペチュアルデイト』、そしてオメガ『スピードマスター』といったモデルが中心になってきますね」

80年代後半になってくると、スイスの時計業界も復活してくるけれど、この時期は「デカ厚」と呼ばれるスタイルの時計のブーム黎明期でもあって、いまでは好みが分かれるのも事実。となってくると、やはりロレックスやオメガの定番モデルは安定感がある。

おなじみのオメガ『スピードマスター』

「FIRE KIDSではこの時代の時計をかなり積極的に仕入れています」

ちなみに、その時計が何年製かは、オメガやロレックスではシリアルナンバーでわかる。一部のモデルや1950年代、60年代の時計になると、シリアルナンバーがアテにならない場合もあるけれど、そのくらいの時期は、時計に年号が刻印されていることも少なくない。

使ってOK! 目減りしないのもアンティーク時計の魅力

モデルにもよるけれど、1970年代のデイトジャスト、などとなると、現在、安くても10万円は越えてくるもの。もちろん、先の話のように、それが給料4カ月分だったころと比べれば、お値打ち感があるのは、アンティークウォッチのアドバンテージ。それでも「高い買い物だし、希少なものだから……」と仕舞っておきたくなる気持ちもわかるけれど、それはもったいない。

「『デイトジャスト』などでしたら、特に、そもそもが実用時計です。しかも、どんな服装でも、どんなシチュエーションでも似合う。遠慮せずに、どんどん使ったほうがいいです。よほど乱暴に扱わない限り、それで価値が減ってしまうようなことにはなりません。むしろ、時間が経てば価値が上がり、たとえば、買い取りの値段も購入時よりも高くなるはずです。未来のことはわかりませんが、これまでも「これ以上にはならないでしょう」といわれながら値段は上がっていっていますから。僕が20代前半で初めて買ったデイトジャストは質屋さんで10万円ちょっとでしたが、いまでは60万円程度です」

ちなみに、これは筆者の個人的意見だけれど、そういう時計とはなるべく早めにお付き合いをスタートした方がいい。「自分の趣味じゃないな」とおもいつつも「自分と同い年だから」と、手に入れた時計が、付き合っているうちにかけがえのないものになっていく、などということもある。時計は変わらなくても、自分は変わっていく。一生付き合える時計なのだから、その付き合える時間はなるべく長いほうが、時計のもつ様々な魅力により多く出会えるはずだ。

>>生まれ年の時計を探そう。1本は欲しいバースイヤーウォッチ・1960〜1990年代の名作9本

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鈴木 文彦

鈴木 文彦

東京都出身。フランス パリ第四大学の博士課程にて、19世紀フランス文学を研究。翻訳家、ライターとしても活動し、帰国後は、編集のほか、食品のマーケティングにも携わる。2017年より、ワインと食のライフスタイル誌『WINE WHAT』を出版するLUFTメディアコミュニケーションの代表取締役。2021年に独立し、現在はビジネス系ライフスタイルメディア『JBpress autograph』の編集長を務める。趣味はワインとパソコンいじり。好きな時計はセイコー ブラックボーイこと『SKX007』。

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