クレドールをメインに70本の時計を愛用

2023.12.03

文=小山田滝音

時計好きに「あなたの時計、見せてください」。さまざまな職業の時計付きの専門家に、時計との出会いや遍歴、愛について伺うこのコーナー。ひとつの時計が持ついくつものストーリーから、知られざる時計の魅力を発信していきます。

今回、時計を見せてもらったのは、なんと大学生ながらに70本の時計を所持する髙橋龍一さん。70本の時計をどのように使い分けているのか。その中でお気に入りは何か。時計愛について髙橋さんに大いに語っていただきました。

もともと時計に興味はなかった

大学4年生ながら、時計について深い知識を持つ髙橋龍一さん。もともと時計に興味はなかったというが、出合いは今の時代らしくインターネットだという。高校2年生のあるとき、何気なくネットオークションのサイトを覗いていると1円で時計が売られていることを知り、思わず落札して購入したのが始まりだそう。

「落札した時計はタイメックスで、カラーはブレス含めてゴールド一色でした。具体的にどんなところに惹かれたのかというと正直あまり記憶にありませんが(笑)、とにかく着けたらハマってしまい、虜になるまでそんなに時間はかかりませんでした」と歯に噛む。

その後は、シチズン『セブンスター』、セイコー『ビジネスエース』など、高校生が買える1万円以内の時計を次々と落札し手に入れていった。大学に進学してからもその勢いは止まらず、週一のペースで購入していき、ひたすら時計を手に入れた。その中である時計との出合いが自身に影響を与えたそう。

「自動巻き時計のオメガ ジュネーブを買ったのですが、そこで考え方が変わりました。それまで、薄い型、つまりシンプルな作りの時計の良さがわかりませんでしたが、実際に手で持って間近で見てみると、文字盤、ケース、ムーブメント、カットの綺麗さ、サンレイ仕上げの精度など作りのすべてに感動したんです」

それまで以上に幅広い種類の時計を購入していくことになった髙橋さん。その一方で、1980年代、90年代の雑誌を手に入れて読み漁るなど、同時に知識も増やしていった。

クレドールはシームレスなデザインが光る

そんな髙橋さんが腕に巻いているのは、クレドール。「シームレスなデザインが好き」と髙橋さんが話すように、造形の美しさが際立つ時計だ。

「飽き性の自分がたまに着けたくなるのがこの時計です。光に当てて『格好良いな』とまじまじと眺めたりするんですが、その時間がたまりませんね(笑)」

実は自宅に70本の時計を所持する髙橋さん。コレクターに近い感覚で時計と向き合い、とにかく気になる時計や、好みの時計を片っ端から集めている。特に日本のメーカーが好みで、『キングセイコー』やセイコー『ライナー』、シチズン、オリエントなどを所持。最初は専用の棚を購入して並べて眺めていたそうだが、途中から溢れてしまい、いまはデスクの上にも散乱している状態だという。

「これまでトータルで100本くらいは購入してきましたが、自分が飽き性ということもあり、気に入ったものは手元に残し、着けない時計は売りに出したりしています。その方が精神衛生上良いですし、時計にとっても使われないよりはその方が良いのではと思っております。そうしているうちに、オークションで時計を売る技術と知識を身に付けていきました。古物商許可の資格も取得したので、このまま独立しようとそのときは思いました」

時計を通じた出会いで進路も変更!?

時計を通じて素敵な出会いもあったという。一昨年くらい前、SNSの広告で「時計、バックなど各分野で詳しい人を集めて辞書のようなものを作ろう」という試みがあることを知ったそう。

「おもしろそうだなと応募したところ、面談することになりました。そこで自分が思っていることを話したら一緒にやっていこうということになり、その活動を通じて、時計業界に精通している人などいろいろなつながりができました。同じ目線で時計について語れる人が周りにいなかったのでとても感動しました。この出会いがなかったら、時計の業界に進もうとは思わず、趣味で終わっていた気がします」

時計業界についてよりリアルな声を聞くことで、「自分にはまだ修行が足りないな」と思うようになり、独立を先延ばしして、買取関係の会社に就職をすることを決めたという。

時計は「手元にある芸術品」

「三度の飯より時計が好き」と話す髙橋さん。まさに食事をとることをすっかり忘れて時計に夢中になって過ごしてしまうときもあるそう。時計自体を眺めたり、業界や歴史について調べたり、ときには時計の構造を知るために分解に挑戦してみたりする時間も好きという。

もともと美術や歴史なども好きだったことから、時計を「手元にある芸術品」と例える髙橋さん。「持ち運びができるかつ機能性もある。それよりも自分のためになる芸術品」と熱く語る。

そんな髙橋さんは、将来は職人としての技術も身に付けて、ヴィンテージの時計屋を開くことを夢見ている。

「職人になれば、もちろん時計の中の細かい隙間部分の調整をしなければならない。あれを職業にするのは何年かかるんだろう…なんて思いますが、自分の店を持ちたい気持ちでいっぱいです。いま、手に入れたい時計としてはパテック フィリップ2526。あとは海外の蚤の市へ行って良い時計があったら買ってみたい。やりたいことはまだまだあります」

と、時計愛は尽きない。

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