クロノメーター認定は「精度が良い時計」? 歴史とともに人気5選をチェック

2024.02.13
Written by 編集部

ダイヤルに「chronometer」と表示があったら「精度が良い時計」という認識は確かに間違いではないが、クロノメーターの背景や検定の理由を知っているだろうか。ヴィンテージ歴36年の野村店長と入社したばかりのスタッフ宮崎さんが、クロノメーター認定モデル5本とともに歴史やおすすめの時計について語っていく。

そもそもクロノメーターとは?

クロノメーターとは品質や精度を保障するための規格のことをいい、スイス公式クロノメーター検査協会による厳しい検査に通過するとクロノメーターと認定される。「クロノメーター分かる?」という野村さんからの早速の質問に、ヴィンテージ歴1ヶ月の宮崎さんが答える。

「精度の姿勢差だったり、温度だったりみたいなものを15日間検定をしてというところまでしか分からないです」(宮崎さん)

「正解です。昔クロノメーターというものの権威というか、そういうものが強かった時代は一つひとつの時計に認定書を付けて出荷していて。1960年代ぐらいまでは、検定を受けた結果を手書きで発行していたんです」(野村店長)

「クロノメーター検定というのは、当時どういった付加価値を付けていたのですか?」(宮崎さん)

「今はスマホを見れば正確な時間が分かる時代ですけど、クォーツの時計が1969年発売じゃない? クォーツの時計になると、ほぼクロノメーター以上の性能を有している訳なんだけど、それ以前の時代はやはり正確な時間を知る手段が限られていたんだよね」(野村店長)

すぐに「正確な時間」を知ることができる現代では、テレビやラジオの時報、電話局に電話をして時間を確認したり、それ以前になると教会の鐘だったりと「時計」の重要性を考えたことがない世代も多いはず。昔は、正確な時間を知る手段が限られていたこともあって、クロノメーターというものはそれだけ重要で「正確な時間を刻む時計」というところで強い意義を持っていた。

「では当時はクロノメーターというのがあったらステータスじゃないけど『良い時計付けているな』みたいな?」(宮崎さん)

「文字盤に『chronometer』と書いてあるのが権威だったんですよね」(野村店長)

5本用意した内の1本『セイコーマチック クロノメーター』は、セイコーが公式検査協会のルールに従い独自に検定したクロノメーターなので、スイス公式の検査協会は認定していない。スイスから「クロノメーターじゃない!」とクレームがついて、「62グランドセイコー」に変わっていく。GS規格の方が、クロノメーター検定より厳しい基準だったので「本物のクロノメーター以上の機械だというところはある」とも話す素晴らしい1本だ。

階級社会の歴史の一端を垣間見るロレックス『バブルバック』

ここからは1本ずつ特徴を見ていく。まずはロレックスの『バブルバック センターセコンド 全アラビア数字 Ref.2940』。全回転ローターを搭載した初の実用的な自動巻きと言われている。

「これはボンクリップのブレスが付いてるタイプですね。カッコいいですね凄い」(宮崎さん)

「ロレックスは主要輸出先がイギリスだったので、イギリス製のブレスが付いてるものは出てきますよね。ボンクリップってイギリス製のブレスです。イギリス軍が採用してIWCのマーク11とかに付いているブレスですね。それのちょっと太いバージョン」(野村店長)

ダイヤルは全体に強めのエイジングが入り、飴色になっている。裏蓋には膨らみがあり、視認性の高いアラビア数字が配された特徴的なモデルだ。

「第二次世界大戦があった時期なので、夜光入りの文字盤・夜光入りの針、そういったものが当時の流行じゃないですけど、士官クラスの人だと軍隊から支給されたものではなく、自分で買い求めるところもあって良い時計を着けたがるというのはありますよね」(野村店長)

特に階級社会のイギリスでは「一般市民」と「貴族階級」は違うんだ、というところを出したい人がこういう時計を買ったんじゃないかと野村店長は話す。ヴィンテージアイテムの時代背景を知ることでより一層愛着を持てるのではないだろうか。

国産ダイバーズの中でも突出して希少な『クロノマスター』

2本目は野村店長が「これは珍しすぎ、スペシャル感満載です」と話す、シチズンの『クロノマスター500m ダイバー Ref.4-540263 クロノメーター』。裏蓋の「鷲」のマークもしっかりと残っている。

「まだサブマリーナが200m防水の頃の時計です。でも結構、細かく見ても先進的なところも凄くあって、夜光塗料がフチあり夜光になっているでしょ。サブマリーナがフチあり夜光にするのは1980年代に入ってからだからね」(野村店長)

「10年以上先取りした形なんですね」(宮崎さん)

「ガラスも採用しているんだよ」(野村店長)

ロレックスがガラスを採用したのも1980年代と、シチズンが先進的だったことが分かる1本だ。分厚いガラスを斜めから見た時の屈折具合も大きい。

「むちゃくちゃ曲がってますよ。これが凄く自分はカッコいいと思いますね」(宮崎さん)

「針が短かったりするのがシチズンの苦手なところなんですけど、これは結構長めが使われていて、良いなという1本かな。本格ダイバーですよね」(野村店長)

金無垢のベゼルで金の張り『コンステレーション』

3本目はオメガの代表的なクロノメーターである『コンステレーション ゴールドトップ クロスライン』。「コンステレーション」は「星座」という意味を持ち、裏蓋の天文台マークや6時の位置の星マークがシリーズの象徴だ。

「『金張り』として売っているお店が多いんですけど、これは『トップゴールド』なのでベゼルの金無垢なんですよ。金無垢のベゼルで金の張り。張りも相当分厚いですし」(野村店長)

「やはり格差をつけていて、トップゴールドのやつなんかはシーマスター2本分くらい、普通のコンステレーションでステンレスだと1.5倍くらいの値段がしていたので」(野村店長)

「それだけクロノメーターの権威というのが分かりやすい時計かなと思います」(野村店長)

シンプルながらも存在感のある黒い貴石入りのインデックスに、クロスライン入りでホワイトがクリーム色に経年変化したダイヤルが美しい1本だ。

60年代の修理明細書まで付いた素性の良い『オイスターパーペチュアルデイト』

次に紹介するのは、歩度証明書と修理保証書が付属品として残っている貴重なロレックス『オイスターパーペチュアルデイト アイボリー Ref.1500 クロノメーター』。

「これ珍しいよね。何が珍しいって古い修理明細が全部取ってあるところ」(野村店長)

ギャラやクロノメーター証に、1960年代の古い修理明細書まで付いているかなり珍しい個体だと言う。昔は海外で買い付けをしてくると、箱や保証書などは現地に置いてくるのが普通だったため、保証書とセットで市場に出てくることは少なくなったと言う。

「なぜかというと税金が高かったから。税関で見つかっちゃうと海外で10万円で買ったら数万払わなきゃいけない」(野村店長)

「そういう背景がある中で付属されているんですね」(宮崎さん)

ダイヤルは経年変化によりアイボリーに変化しており、6・9時位置のインデックスは太く、アルファハンドとの組み合わせが良い1本だ。

『セイコーマチック』は社内検査だけど精度は高い

「インチキクロノメーターだけど(笑)、本当に良い時計です」と野村店長が語るセイコーの『セイコーマチック クロノメーター 1965年製 獅子メダリオン』。スイス公式のクロノメーター検査は通っていないが、後に62グランドセイコーになるだけの精度はある。

「グランドセイコー初の自動巻きになるけど、手巻きが付いていないやつですね。巻上げの効率が良いので、手巻きはなくてもいいと結構割り切った発想の」(野村店長)

「だからリューズが埋まっているような」(宮崎さん)

「4時位置のリューズでね。手の甲にリューズが刺さらない刺さらない感じ、これ意外とクセになります」(野村店長)

ムーブメントは62グランドセイコーにも搭載されているCal.6245Aを搭載。針の造りもクロノメーターを謳うためにしっかりとした針を付けているので、62グランドセイコーと近い。23万8000円とコストパフォーマンスも良く「この時計はもっと評価されて良い」1本だと言う。

「ヴィンテージのクロノメーター時計を今買う意味は?」という宮崎さんの問いに、「検定を受ける時計は試験に受かる前提で作られているので、やはり造りはしっかりしている」と野村店長は言う。現行品は精度自体は出て当たり前なところもあるので、わざわざ検定を受ける必要はないかもしれないが、今でもクロノメーターへの信頼感は強い。

「chronometer」表記は精度や品質を保障するための規格。腕時計を楽しむ上でのひとつのポイントとして改めて気にしてみるといいかもしれない。

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