実用性とコスパならシチズンが狙い目。予算15万円以下の名品3選

2024.03.03
Written by 編集部

時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。

国産時計を牽引してきたシチズンは、市民という名前の通り、腕時計を普及させようと一般の人たちにも買える価格帯で製品づくりを行ってきた。クオリティの高い時計が比較的割安な値段で手に入れることができる。品質やデザインを大事にしたいけど、コストパフォーマンスも気になる…という方にぜひすすめたい。

『ホーマー』実用性の高さとシンプルなデザインが日常使いに抜群

まずは「一生ものとしては安い」という、1968年製で5万8000円の『ホーマー 国鉄 手巻き 東鉄』を見ていく。国鉄時代に職員に支給されていた鉄道時計だ。

「既に55年以上経っているけど未だに元気。メンテナンスをちゃんとかけてあげれば、ここからまた何十年でも使えちゃう」(野村店長)

「まさにコスパの優れた時計ですよね」(宮崎さん)

視認性の高いアラビア数字に夜光がのったドルフィンハンドがすっきりとした印象で、裏蓋には「昭43」「腕262」「東鉄」の文字が刻印されている。実際に職員の方が使っていた歴史に触れることができる点もうれしい。

「普通のホーマーと国鉄仕様のホーマーはどこが違うんですか?」(宮崎さん)

「いかに時間が見やすいかというところで、専用の文字盤と針。もう1つは秒針規制が付いているね。リューズを引いた時に秒針が止まる機能が付いているので、朝に手巻きをして時刻を正確に合わせて仕事スタートという形ですね」(野村店長)

「裏にもしっかり書いてありますね」(宮崎さん)

「刻印が入っているね、スナップバックというタイプなんですけども、シチズンのパラウォーター系のケースなので、しっかりとゴムパッキンも入って、防水性能もある程度はあったという仕様なのにこんな安い」(野村店長)

数を作った時計なのでパーツもよく出まわり、メンテナンスもしやすいため安く手に入れることができる。「本当に実用度が高い良い時計」で、一押しだと野村店長は言う。

希少性の高い黒文字盤『アラーム』

2本目は、1967年製の『4Hアラーム オリジナルブラックダイヤル 純正ブレス付き 手巻き』。アラーム音はジリリリとしっかりと響きながらも大きすぎない音なので使いやすい。

「シチズンアラームはファーストはハンドではなく、文字盤の内側を回転させる仕様だったんだけど、ジャガールクルトからクレームがついて4ハンドに変えたタイプ」(野村店長)

「これの初期型とかもまさにジャガールクルトですよね」(宮崎さん)

「ジャガールクルト顔だったけど、機械はアシールドの機械そっくりなんですよ。色んなメーカーが使っているので、それだけ汎用性が高い機械ということでしょうね」(野村店長)

アラームウォッチで黒文字盤は、シチズンでも他のメーカーでも見たことないというぐらい珍しいというかなり狙い目な1本だ。2時位置のリューズでアラームの調整を行い、4時位置のリューズで時計の操作を行う。

「これは二重蓋になっていないので結構深めの良い音かな。二重蓋だともうちょっとけたたましい感じで、一重のタイプはそんなにびっくりしないタイプかな」(野村店長)

「2個リューズがあるというのがカッコいいですよね。アラーム時計は複雑機能なので高くなりがちだけど、シチズンだと11万8000円で買えちゃうよと」(野村店長)

日本にも有名モデルを模倣していた腕時計はあったが、機械のクオリティが非常に高くメンテナンス性も良い。ただの模倣ではなく、当時から細部にわたって正確なものづくりを行っていたことが分かる良い個体だ。

セイコーへのライバル心から生まれた『セブンスターダイバー』

「セブンって何だっけ?」と野村さんのクイズから始まった『セブンスター100mダイバー ブルーダイヤル 純正ステンレスブレス』。セイコーの『セイコー5』に対抗してつくられたというセブンスターダイバーには、日付、曜日、自動巻き、防水、耐衝撃の他に手巻き、ガラス風防が追加された。1968年製で14万8000円。

「セイコー5はセイコーマチック系の機械なので手巻きが付いていないのが多いから、そこに対抗して手巻きをつけて、さらに当時先進的だったガラスも採用して。文字盤と針に夜光を入れて、ダイバーズっぽい要素がありながらブルーの文字盤は結構思い切っているよね」(野村店長)

「やはり当時は少なかったですか?」(宮崎さん)

「60年代後半ぐらいからカラー物の文字盤を作ったりしているね」(野村店長)

オリジナルのブルーダイヤルは鮮やかで存在感があり、ケースサイズは大きめだが着け心地は良い。1960年代後半からガラスを採用したモデルやカラー物が増えた背景があり、セイコーに対する対抗意識がはっきり出ているモデルじゃないかと野村店長は話す。

「当時からしたらちょっとサイズ大きめですよね」(宮崎さん)

「1960年代半ばくらいには、サラリーマンだとか時計を必要とする人に行き渡った感が出てきて、若い人を取り込もうという部分もあったりして、それがデザインに現れたり」(野村店長)

普及機をメインとして作っていたため、現在でも価格が落ち着いているモデルだ。欲しい人の数と現存する物の数のバランスで中古の値段は決まってくる。レアなモデルでもそれほど知名度が高くなければ、大きく値段が上がることはないので狙いやすい。

安定した精度に、風化しないシンプルなデザインの実用性が高いシチズン。セイコーに比べるとまだマニアは少なく、10万円代でもレアモデルに出会うことができる。コストパフォーマンスの良いヴィンテージ腕時計を探しているならシチズンをチェックしてみてほしい。

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