王道ラグスポに飽きた人必見。周りと差をつける意外な3選

2024.03.16
Written by 編集部

時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。

時計業界の一つのトレンドである「ラグスポ(ラグジュアリースポーツ)」は、薄く上品でありながらも、丈夫でスポーティーな要素を融合させた日常使いできる高級腕時計。ラグスポと聞くと、ロイヤルオークやノーチラス、APを想像する方が多いかもしれないが、今回は周りの人と被りやすい王道ラグスポを外し、少し新しい解釈で名品3選を見ていきたい。

ラグジュアリー感満載のカルティエ『パシャ シータイマー』

「これぞラグスポでしょ」と野村店長が切り出したのは、カルティエの『パシャ シータイマー 回転ベゼル 箱付き』。1990年代製で42万8000円。

「パシャってどういうモデルか知ってる? アラビアのお金持ちがちょっとプールで泳ぐ時に付けたいなってカルティエにオーダーしたモデルだよ」(野村店長)

「出自がラグジュアリーな時計ですね」(宮崎さん)

「カルティエは基本ローマ数字じゃない? カルティエにしては珍しいアラビア数字を使っているのはそういうことだよね」(野村店長)

回転ベゼルを装備したシータイマーは実用的で、青い石をはめ込んだエレガントなリューズはカルティエらしさが抜群なラグジュアリースポーツモデルだ。

「当時はまだねじ込みリューズが、多分ロレックスの特許があったりとかの関係だと思うんですけどね。リューズの上にカバーを付けて、そこに石を入れちゃう辺りカルティエだよね」(野村店長)

「カルティエですね、すごく特徴的」(宮崎さん)

「これ何が良いってサイズ感が良い。今ダイバーズと言うと40mm以下はほぼないのに、この38mmというサイズ感が良いよね」(野村店長)

「現行品のダイバーはちょっと大き過ぎる」というお客さんが多く、ミッドサイズやセイコーの150mダイバーの1stとか、ちょうど良いサイズ感を狙ってくる人がかなり増えた印象だと野村店長は話す。標準的な手首周りの方におすすめな1本だ。

セイコー最高峰の高級ライン『クレドール』

2本目は、1999年製セイコーの高級ライン『クレドール フェニックス クロノグラフ』。オニキスがセットされたリューズに、コラムホイール式を採用したセイコーのクロノグラフムーブ、6S系キャリバーを搭載している。

「クレドールはセイコーのラグスポの元祖だよね。ファーストモデルのデザイナーはジェラルド・ジェンタ氏だよ」(野村店長)

「ジェンタがデザインしたという部分では本流のラグスポの系譜ですね」(宮崎さん)

「ロイヤルオークもノーチラスもジェンタのデザインだからね。そう考えると正当なラグスポがクレドール。クレドールはセイコーの最高級ラインなんですよ、しかもこれクロノグラフ、スポーティーでね」(野村店長)

セイコーの最高峰時計と言えば、多くの人がグランドセイコーと言うと思うが、「クレドールも最高ラインですよ」と野村店長は話す。セイコークレドールはクォーツがほとんどだが、メカニカルラインもあり「メカニカルでクロノグラフ」は本当に少ない貴重な1本だ。

「1999年だとほとんどのメーカーがバルジューの7750を使っているんだけど、もっと厚いでしょ? やはりラグジュアリーな雰囲気って、分厚いモデルじゃないんだよね。だからクレドールは厚みをギリギリまで抑えているモデル」(野村店長)

クロノグラフ搭載モデルながらすっきりと端正な印象のクレドール。1999年の時点ではかなり厚みを抑えてある方だと言う。メカニカルでクロノグラフ、レア過ぎて探している人もいないということで29万8000円と狙い目な時計だ。

ラグスポの新解釈。ロレックスの『サンダーバード』

3本目は「希少な上の希少」ということで1959年製で298万円、ロレックスの『サンダーバード オリジナルブラックダイヤル Ref.6609 赤黒カレンダー』。デイトジャストにスポーティーな回転ベゼルを搭載したモデル。Ref.6609という品番自体が少ない中で、サンダーバードの黒文字盤は珍しい。

「元々、アメリカ空軍のアクロバットチームのサンダーバードの隊長が退役する時にオーダーで作らせたと言われていて、回転ベゼルを装備したデイトジャスト」(野村店長)

「退役されるタイミングで威厳と今までやってきたベゼルが、この回転ベゼルでミックスされた感じがカッコいいです」(宮崎さん)

ベゼルがホワイトゴールドなので厳密にはラグスポとは言わないかもしれないが、ホワイトで統一されており、また防水ケースで回転ベゼルを装備という部分では完全にラグスポでしょと、野村店長なりの新解釈だ。

「自分的には文字盤の色が綺麗に変化していると思います」(宮崎さん)

「綺麗というより、やれている感じ。これは好みがあるので、僕も大好きですけどね。ラグジュアリー感がないって言えばないけど、この雰囲気は抜群でしょう」(野村店長)

「ステータス感」「一目見て分かる」というのが、ラグスポが最近人気な理由ではないかと野村店長は話す。単純に高級時計と言うと、そんなに大きくなく薄型で、複雑系や素材にこだわるものが多いなか、ラグスポはある程度大きめのサイズが人気があると言う。正確な時刻はスマホを見れば分かるので精度を求めているわけでもない。

「どこの時計?」とならずに、存在感がありながらも腕に馴染むのがラグスポ。カジュアルな日常使いはもちろん、スーツなどの装いにもマッチする万能な魅力を併せ持つ。王道のラグスポもカッコいいが、周りと被りにくい少し外した1本はどうだろうか。

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