ベーシックなブラック無地タイプのダウンベストにマッチする時計
対談:ハッサン&ナカD
時計を複数持つのはもう当たり前。問題はそれをどう身に着けるのか? ドレッサーの条件はそれぞれあるが、ヴィンテージウォッチを上手に使いこなしてこそ本物のジェントルマンだ。そこで着こなしにウルサい二人がお題に則して“正解”時計をピックアップ。お互いのコーディネイト理論を戦わせながらウォッチ巧者を決めていく。果してアナタはどっちの味方?
第5回お題アイテム:ダウンベスト
寒暖の差がある春の着こなしは、アウター選びがキモとなる。暑苦しくならず、しかし保温性は確実という、ある種相反する機能を持つものが理想的。その点、袖を持たないダウンベストは非常に好都合。市場にはスポーティなカラフルタイプや個性的な柄物も多くリリースされているが、いろいろなシーンでの着回しを考慮するなら、断然ダークな無地が便利。
<バトルスタッフ紹介>
薄手のスプリングコートでは朝晩肌寒い
ハッサン 朝のお出掛け時はまだまだ寒いから、ついつい冬のスタイルで外出しがち。でも昼になると気温も上がってきて、もー暑くてイヤ!ってコトない?
ナカD それ、ハッサンがオッサン過ぎて、体温調整が利かなくなってるだけでしょ?
ハッサン うん正解っ!! じゃぁなくて、ファッション的な話題をフッてるコトに気付いてよ。
ナカS まーねー。確かにガチのダウンジャケットじゃ日中暑いときもある。といって薄手のスプリングコートでは朝晩肌寒いのは確か。
ハッサン ナカDは誰よりも早く春スタイルを楽しみたいんだよね。だから極暖二枚着込んでのスプリングコートスタイルを2月くらいから実践してる。
ナカD そうなんだけど、下着は手軽に脱ぎ着ができないから。ランチに中本の北極なんか食べちゃうと、もう汗ビッチョリw
ハッサン ソコで見直したい春アウターがダウンベストなんです。ダウンならではの優れた保温性を持ちつつ、袖ナシかつ前開きなので、通気をコントロールしやすい。しかも重ね着感が全面に出るので、お洒落している満足感がタップリ味わえます。
ナカD うん、そのリクツは分かる。でもあれってスポーツアイテムだから、大人には着用できるシーンが限られるでしょ?
ハッサン 年上のオレを子供扱いしてくれてアリガトウ。でも、最近は大人のオンスタイルにも結構使われてる。スーツの上にダウンベストを合わせるスタイルは、近年街でもチラホラ見掛けます。
ナカD 確かに若いコでも、ロングコートの上にダウンベストを重ねてたりするもんね。昔だったらとんでもなくチグハグだけど、今はそういうのがアリな時代なんだよね。
ハッサン そう。そういったスポーティ気分のスーツスタイルには、スピードマスターなんかを合わせると、非常にまとまった感じがするでしょ?
<写真 スピマス入る ケースバック画像もできれば>
ナカD お! このスピマス、1980年代のプロフェッショナル。裏スケだから手巻きのcal.863がしっかり見えるのよね。
ハッサン そう、伝統的な仕上げが加えられた名作ムーブメントは本当にグッドルッキン。仕上げがお洒落な一本なんですよ。ってなワケで、ナカDのダウンベストスタイルも教えてよ。
ナカD 僕はダウンベストにゃ定番的なフードパーカを合わせたいかな。スポーティなものはスポーティでまとめるのが自分の流儀。トリッキーなことは一切いたしません!
ハッサン まあ、分かるけど、その合わせはともすると学生さんっぽく見えません? 大人の渋味や贅沢感がちょっとほしくなる。
ナカD ソコで通な時計選びがモノを言うワケ。チューダーのビンテージとかイイ感じでしょ。
ハッサン ああ、スノーフレークね。ロレックス製のステンレス巻きブレスも渋い。レアカラーの青ベゼルに、通な雰囲気や洒落感を感じます。でも、ナカDにしては意外なほどトラッドなのが驚き。で、トラッドと言えば、個人的にはこの春、どうしてもダウンベスト&ジージャンのスタイルがしたいんです。
ナカD うん、ジージャンはイイよね! でもさ、毎年着たいと思うのは確かだけど、驚くほど防寒性がないから、もう少し暖かくなってから、なーんて後回しにしちゃうんだよ。で、スグ梅雨が来ちゃってもう着たくないw
ハッサン そう! だからダウンベストと組み合わせることで、春にもちょうど良くなるのよ。そしてこんなコーディネイトには、ホイヤーのモナコがベストマッチ。気分はスティーブ・マックイーン兄貴です。
ナカD ああ、ブルーデニムとブルー文字盤が確かにマッチしてるよね。ただマックイーンて、ジージャンのイメージありましたっけ?
ハッサン 忘れたけど確かに着てたハズ! 『ジージャン放浪記』のとき……だっけ? まぁそんなコトより、ナカDはオレみたいな伝説的な着こなしができんの?
ナカD 僕だったら、少しでもエレガントに寄せて楽しみます。例えば優しげなオフホワイトのセーターとかにあわせて。同様にオフホワイトのジーンズ等で仕上げれば、非常にクリーンな余暇スタイルが完成します。
そういった世界観に合わせて、時計はマーヴィンの金無垢ケースモデルとか。ブラック文字盤にスモセコが味わい深いでしょ?
<写真マーヴィン 入る>
ナカD まーた渋いヤツ引っ張り出してきた。でもさ、ナゼにマーヴィンなの?
ハッサン いや、マーヴィンと言えばゲバラでしょ。「伝説」の上を行くなら「革命」しかないかなと……。
ナカD ったくチェだぜ!
ハッサン ゾフィー解散しちゃったけど、オレらは仲良くしよう!
writer
長谷川剛
1969年東京都生まれ。エムパイヤスネークビルディングに所属し、『asAyan』の編集に携わる。その後(有)イーターに移籍し『asAyan』『メンズクラブ』などを編集。98年からフリー。『ホットドッグプレス』『ポパイ』等の制作に関わる。2001年トランスワールドジャパンに所属し雑誌『HYBRID』『Warp』の編集に携わる。02年フリーとなり、メンズのファッション記事、カタログ製作を中心とする編集ライターとして活動。04年、エディトリアルチーム「04(zeroyon)」を結成。19年、クリエイターオフィス「テーブルロック」に移籍。アパレル関係に加え時計方面の制作も本格化。