偽物の定義とは? 高級ヴィンテージ腕時計の見分け方をプロが徹底的に議論

2024.06.23
Written by 編集部

今回は、ヴィンテージ腕時計を買う前に知っておいてほしい「偽物」の見分け方や「リダン」の注意点を議論していく。決して安くはない腕時計、「良い個体」に出会うために気をつけるべきポイントを身に付けて、お気に入りの1本を見つけてもらいたい。

ヴィンテージの偽物の認識は? 「消耗品」であるかがポイント

FIRE KIDSのようなヴィンテージ専門店では、あまりコピー品や偽物を見ることはないと言うが、そもそもヴィンテージの世界はフルオリジナルではないものが非常に多く、「偽物」の認識が人それぞれ違うのではないかと話す。

「フルオリジナルの初心な個体もあれば、色々な修理をされてパーツも交換されて、ブレスレットが交換されたり、リダンであったりとか、サービスダイヤルメーカーで交換されたものが色々あるじゃないですか。その辺を知らない方からすると『偽物』というか」(髙橋さん)

「あまり良く受け取らない人も多いかもしれないですね。趣味趣向の世界なので、人それぞれ許容範囲が違うし、完全にフルオリジナルじゃないとダメという人もいれば、文字盤は綺麗な方が良いから変わっていても問題ないという人もいれば、というところだと思うんですよね」(尾崎さん)

「僕は、ダイヤルはオリジナルであって欲しいかな?」(髙橋さん)

「なんとなくですけど、『消耗品』という位置付けのものは割と許容範囲が広いかな。ブレスレットやリューズ、風防などは消耗品」(尾崎さん)

「そこに関してはフルオリジナルじゃなくても良いものですよね」(髙橋さん)

ただその中で年代を揃えていても、ブレスレットの仕様は同じであってほしいといったこだわりを持つ場合もあれば、年代が離れていても仕方ないという方もいる。

「同じリベットでも10年離れることもあるじゃないですか? それでも良いかなくらいの。もしくはヘビーでも実用的には使いやすいから良いよなとか、社外でも雰囲気が合っていれば良いなとか」(髙橋さん)

偽物の見分け方は難しい? やはり知識と経験が必要

コピー品はあまり見たことがないと言ったものの、「どのくらいまで偽物を見たことがありますか?」という質問に「ブレスや尾錠とかですかね」と答える髙橋さん。

「僕はケースを見たことがあるんですよ。シリンダー型のケースってすごくシンプルじゃないですか? 筒を輪切りにして脚をくっつけるだけなので、あれはロンジンで偽物がありますね」(尾崎さん)

「作りやすいんだ、13ZNと」(髙橋さん)

「そう、シリンダー型の。切削する環境さえあれば、ケースの偽物は十分あり得ると思います」(尾崎さん)

「13ZNを入れてダイヤルはリダンでみたいな、作れますよね。針は適当なやつを付けてみたいな」(髙橋さん)

「シリンダーはロンジンだけのものじゃなくて、当時の色んなメーカーが採用しているので、その辺もあり得るっちゃあり得るかな」(尾崎さん)

見分けるためには、持ってみることと色味が重要なのだが、ケースをパッと見た時は同じ金属だから見抜けないことがあると話す。当時の鉄は鈍い光や重みがあるが、現代のもので簡単に使ろうと思うとアルミ感が強かったり、ピカピカとした個体になったりする。また、やたらと状態が良いものはやはり怪しい場合が多いので、気をつけたいポイントだ。

2面性があるリダン。ロレックスとオメガはリダンが多い?

FIRE KIDSには「リダン」の腕時計は置いているが、その場合はリダンであることをしっかりと表示して販売しているので安心してほしい。あまり良い解釈をされない「リダン」だが、世界的に成功しているパターンもある。

「デカバラのリダンだけは、もう万国共通で許されているところはあります。割と厳しい店でも許容している」(髙橋さん)

「ブラックのリダンだけはカッコいいし、求められるからやるっていうのは、やはりモデルによって色々あるんでしょうけどね」(尾崎さん)

「あと個人的には針は許されるかな、トリチウムで光らないなら。針ごとでも許されるモデルもあると思うんです、デイトナとか。その辺の基準って人それぞれなのかなとは思うんですけど」(髙橋さん)

「この時計にはこれです」という1つの決まりがない時もある。例えば1930〜1940年代は特に、どのメーカーも同じ文字盤針や針のメーカーに依頼をしており、ブランドが違っていても部品が共通していることがある。長く業界にいると「この文字盤にはこの針が付くよね」と分かってはくるが、大きな違いがない場合は本当の形を判断することが難しいとも言う。その年代の様式に合っているかを一つ一つ細かくチェックして、正しい評価を出すように心掛けている。

「オリジナルかどうかは初心者の方からしたら難しいと思うのですが、見極めるのが困難な場合は店員に聞いても良いんですか?」(尾崎さん)

「全然聞いていただいて。絶対に隠さないよね、言いすぎなくらい隠さない」(髙橋さん)

「新品じゃないんでね、やはりその辺は包み隠さないことが大事ですね。文字盤のリダンが多いのはロレックスですかね」(尾崎さん)

「針が変わっているのも多い、何でなんだろう? 圧倒的に多い」(髙橋さん)

「やはり、ロレックス、オメガ」(尾崎さん)

「オメガの古いやつもありますもんね。本当は剣針みたいなものにペンシルが付いているとか」(髙橋さん)

リダンとは文字盤が汚れたり、シミが入ったりした際に修復することを言う。見栄えが良い方が売りやすかったり、昔は使っている人も綺麗な方がいいよねという感覚だった可能性もあるが、今は小傷が付いても良いから製造された当時の仕様がどれだけ残っているかが重要になってきている。

フルオリジナルが良いのか、綺麗な方が良いから一部交換はOKなのか、まずは自分の許容範囲を見つけることが重要だ。良い悪いは人それぞれ。リダンだから避けた方が良いということもなく、ものによってはより価値が上がることもある。ヴィンテージならではの「昔のものの良さ」を感じられる1本を見つけて楽しんでほしい。

writer

ranking