ロレックスは安かった? 1970年代のカタログをもとに“価格推移”について徹底解説
時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。
時計の王様とも呼ばれる「ロレックス」は、知名度やステータス、技術が突出し、数ある高級腕時計ブランドの中でも高い人気を誇るブランド。だが、かつてロレックスの腕時計は今よりも手に入れやすい価格だったことをご存知だろうか? 今回は、1970年代のロレックスの輸入カタログをもとに、人気モデル『デイデイト』『デイトナ』『デイトジャスト』がどれだけ値上がりしているのか、価格推移の理由などを解説していく。
プラチナで859万円? 1970年代の『デイデイト』
1970年代の貨幣価値は現在とはだいぶ違い、大卒初任給が恐らく4万円〜5万円ほどの時代だ。「その時にロレックスいくらするの?」ということで、まずは『デイデイト』の価格から見ていく。現状、販売されているダイヤのものでも「1,000万円」コースだが、1970年代はいくらだろうか。
「大学の初任給を約25万円と想定して、1,000万円だと単純に40倍というような金額ですもんね、そうなってくると100万円とかでしょうか」(久保さん)
「さあ、行ってみましょうか。デイデイトのプラチナで859万円です」(野村店長)
「とんでもない金額ですね(笑)当時の初任給の200倍とかですよね」(久保さん)
「誰が買えるの? 結構びっくり価格なんですよ。理由として1つ目は、プラチナの加工って大変なのよ。あと当時、金よりプラチナの方が高かったから」(野村店長)
価値として今は金の方が高いが、昔はプラチナの方がより希少金属として扱われており、また加工も金に比べると高い温度で作業する必要がある難しい性質で、1970年代当時はプラチナの方が、希少性と加工の手間が高かったという。
「18金だと、イエローゴールドで55万6000円。ホワイトゴールドでも72万9000円。これは革ベルトでの価格ですね」(久保さん)
「当時デイデイトは基本革ベルトで、ブレスは日本製のベルトを付けて売っていたんだよ。正規代理店がリーベルマンなんですけど、当時は税金対策で、ブレスは日本で仕立てて付けるという。だからジャパンブレスというレアものもある」(野村店長)
「現状ジャパンブレスは、当時と比べて今の方がレア度が高いとかはあるんですか?」(久保さん)
「レアだけど嫌がる人は多い。スイスの方がやはりクオリティが高いかな。でもアンティーク・ヴィンテージの世界は人が持っていないものを欲しいという考えがあるから、希少という認定で欲しい人も逆にいたり、そこが良いという人もいたりね」(野村店長)
グランドセイコーが4万円弱で売っている時代に、イエローゴールドのブレスレットだけで約15万円(ベルト付きで71万4000円)する『デイデイト』。輸入関税が高かったという理由もあるが、当時からロレックスの中でも別格な高級機として扱われていたことが分かる価格だ。
手が届きそうな価格? 1970年代の『デイトナ』
次に紹介するのは、手巻きの『デイトナ』当時の価格はなんと16万8000円とのこと。1970年代は、デイデイトの方が人気が高く、デイトナがランクとしては下がるというベースだったと言う。
「販売本数自体も少なかったんですかね?」(久保さん)
「1970年代のカタログだと、まだプッシャーの部分が防水仕様になっていない、完全防水とは言えないタイプだったので、当時ロレックス欲しい人って防水は必須条件みたいなところもあったので、あまり人気なかったというのはあると思います」(野村店長)
「ロレックスの中でも一番化けた時計なんですかね」(久保さん)
「その通り。デイトナってそんなグレードの高い時計だったっけ? みたいな感覚になるよね」(野村店長)
「当時を知っている方からしたら、ちょっとこの開きはびっくりしますよね」(久保さん)
「そんなに価値あるの? という気持ちに未だになる」(野村店長)
当時はオメガのスピードマスターでも10万円弱だったため、デイトナがそんなに安い訳ではないが、現状の価格を考えると安すぎるという感覚になるだろう。
ロレックスの象徴ともいえる1970年代の『デイトジャスト』
最後は「結構びっくりするよ」と野村店長が話す『デイトジャスト』の1970年代の価格をチェックしていく。久保さんは「15万円前後かな」と予想していたが、コンビのものでイエローゴールドのベゼル、ベルト付きで29万3000円だ。
「デイトナ2本弱みたいな、デイトジャストがすごいグレードの高い時計に見えない?」(野村店長)
「当時でそれなりにやはりすごい高級機としてデイトジャストも扱われてたんですね」(久保さん)
「デイトジャストのRef.1601というよくある、そこら中で売っているにも関わらず、この値段でも売れたというのはやはりデイトジャストはロレックスの象徴みたいなものなんだよね」(野村店長)
「高くてもそれなりに人気があったんですね、ジュビリーブレスレットですか」(久保さん)
「そう、それで日付が付いてクロノメーターで、サイクロプスレンズが付いている、もうその組み合わせこそがロレックスみたいな」(野村店長)
貨幣価値が全く違う50年前でも人気が高かったロレックス。「当時の海外におけるロレックスの需要はどうだったんですか?」という質問に、「やはりアメリカで売れていた」と野村店長。ロレックスは単純にその時、お金持ちの国で売れる流れがあり、日本人がお金持ちだったバブルの時期や2000年代くらいまでは日本でもかなり売れていたと言う。
「当時の輸入関税が43%かなという時代だったので、みんなよく『箱ギャラ』を欲しがるけど、海外で10万円の買い物をして、日本国内に持ち込む時に4万3000円取られちゃうわけ」(野村店長)
「関税でそれだけ取られるのもなんかすごい話ですね」(久保さん)
「それを恐れてみんな、箱とか保証書というのは現地で捨ててくるから箱ギャラが付いてるのは少ないんだよね。今は消費税が導入されたおかげで、消費税分(10%)を払えば良いんですけど、当時は43%、強烈でしょう」(野村店長)
「消費税は敵みたいな扱いになってますけど、良い面もあるんですね」(久保さん)
1970年代よりも、現行品もヴィンテージ相場もかなり高くなっていることが分かる。「給料の何倍だろう…」と考えながらも、なぜか欲しくなってしまうロレックス。まずは試すだけでも大歓迎、FIRE KIDSの店舗でいろいろなモデルを着けてみて欲しい。