グランドセイコーの原点美。『44GS』の魅力を再解説

2025.04.23
Written by 編集部

時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。

一目見てグランドセイコーと分かる「セイコースタイル」を確立した『44GS』。直線的でエッジの効いたケースに、光と陰が織りなす造形美は、今なお多くのGSファンを魅了し続けている。今回は、『44GS』の魅力と希少性についてFIRE KIDSの松浦とクリスが改めてひも解いていく。

『44GS 前期 ロービート手巻き』

1967年に誕生した『44GS』は、セイコースタイルを初めて明確に打ち出したモデルだ。セイコースタイルには3つの原則があり、このデザイン哲学は現行品にも受け継がれている。

1)平面を主体として、平面と二次曲面からなるデザイン。三次曲面は原則として採り入れない
2)ケース・ダイヤル・針のすべてにわたって、極力平面部の面積を多くする
3)各面は原則として鏡面とし、その鏡面からは、極力歪みをなくす

前期と後期それぞれのモデルとともに、その特徴を深掘りしていく。まずは、『グランドセイコー 1966年製 Ref.4420-9000 44GS 前期 ロービート手巻き』。初の第二精工舎(亀戸セイコー)製グランドセイコーで、製造期間が僅か2年間の希少性の高いモデルだ。

「田中太郎さんが設計・デザインされたセイコースタイルを世にアピールした1本目の時計ですね。入荷したら速攻売り切れる時計です」(クリスさん)

「この後すぐに手巻きの45GSが出てきちゃってハイビートになって、より高精度みたいなところで、44GSが結果短命になってしまったのかな。今となっては希少機種だよね」(松浦さん)

『44GS後期 セイコースタイルケース 手巻きノンデイト』

次に、後期モデルの『グランドセイコー 1968年製 Ref.4420-9000 44GS後期 セイコースタイルケース 手巻きノンデイト』を見ていく。前期・後期ともにムーブメントは手巻きのCal.4420Bを搭載しており、文字盤の6時位置にある文字が異なるデザインとなっている。

「前期が『DIASHOCK』で、後期が『亀戸マーク』ですね。本来であれば実物を見る機会ってかなり少ないと思うんですよ」(松浦さん)

「どこで折り合いをつけるか」と松浦さんが言うように、ヴィンテージのグランドセイコーもネットで調べれば出てくるが、バランスがそれなり整った平均値が取れているものに出会うのは難しいと話す。

「ネットのものが全てダメというわけではないんですが、国産時計、しかもセイコースタイルケースに関しては特に、ケースの磨きが丸くなっちゃっている個体が多いんですよね。ケースを磨くということは一層取るということなので。FIRE KIDSでは、そういった丸くなっているケースなどは今のところ扱っておりません」(クリス)

「今後は分からないですけれどね、そういうのも扱わざるを得ない時代が来るかも」(松浦さん)

「なので『今は』という言葉を(笑)本当に今がチャンスです」(クリスさん)

ケースやダイヤル、裏蓋のメダリオンのコンディションの良さというのも戻せない。価格が多少高くとも、綺麗な個体があるのであれば、今のうちに手に入れるのがおすすめだとクリスさんは言う。

「44GSは、グランドセイコーの中で1番大きいケースサイズじゃないですか? 38mmくらいあるので、サイズ感が意外ですよね」(クリスさん)

「45GSになると1〜2mm小さくなって薄くなる。多分、45GSの方が収まりが良いという人の方が多いと思うけど、44GSの場合は広くなっていて薄いじゃない? 俺の勝手なイメージは、昔のスーパーカー的な感じで、カウンタックとか平べったい感じなんですよ(笑)」(松浦さん)

「コンパクトなセイコースタイルをお探し方は、56GSなどもすごく良いチョイスですけれども、やはり44GSの1番の良いと思う理由は、ファーストセイコースタイルというところに尽きると思っています」(クリスさん)

また、『44GS』を横から見た表面の反対側をカットして仕上げて、影を作るというデザインセンスは日本独特だと2人は話す。

影や直線的なデザインを駆使してシンプルな美しさを追求したグランドセイコー。国内のみならず、海外でも高い評価を得ており、コンディションの良い個体を手に入れることが難しくなってきている人気モデルだ。ヴィンテージ好きなら1度はじっくり向き合ってみたい、そんな魅力が『44GS』には詰まっている。

writer

ranking