いま改めて手にしたい『45GS』。グランドセイコー最後の手巻きモデルとは

2025.07.30
Written by 編集部

時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。

グランドセイコーが誇る10振動手巻きモデル『45GS』。その魅力を語るのは、FIRE KIDSのスタッフであり、45GSの愛用者でもある吉田と、豊富な知識を持つ松浦。今回は実機を前にしながら、45GSのデザイン、機構、時代背景に至るまで語り尽くした。『Ref.4520-8000』を通じて見える、ヴィンテージGSの奥深さとは?

セイコースタイルとハイビート、45GSに惹かれた理由

最近、45GSのキャップゴールドを購入したという吉田さん。44GSとも迷ったというが、ハイビートの滑らかな針の動きが気に入って愛用していると話す。

「金属から削り出したような面というか、鏡面の美しさとセイコースタイルケースがまず好きですし、毎日巻くという手巻きならではの楽しみ、そして自分の腕にしっくりくるサイズ感もポイントです」(吉田さん)

「話が止まらないね(笑)」(松浦さん)

今回は、FIRE KIDSに入荷した1969年製『Ref.4520-8000』をチェックしながら45GSについて解説していく。ケースのシャキッとしたエッジに加え、ノンデイト、純正尾錠付きという完璧な1本だ。

「これはすごく綺麗ですね…買うタイミングを間違えたかもしれません(笑)」(吉田さん)

天文台コンクールへの挑戦と10振動の革新性

グランドセイコーの中では、最後の手巻きになる45GS。2024年には、ステンレス製および18金モデルとして復刻されるほどの、根強い人気を誇る。

「セイコーがスイスの天文台コンクールで精度を競う中で生まれたモデル。最初は全く歯が立たなかったけれど、精度を追求する過程でたどり着いたのが『ハイビート=10振動』だったんだよね」(松浦さん)

「ハイビートってコマ回しのように『速く回るほど安定する』と例えられますよね。振動数を上げることで精度を出していたんですね」(吉田さん)

「部品の摩耗を心配されがちだけど、実際にはテンプが小型化して軽いから、耐久性にもそれほど影響が出ていないということが実証されているんだよね」(松浦さん)

天文台コンクールにも使われる機械になっていく45GS。だからこそ現代でも人気が高く、入荷してもすぐに売れてしまう。整った個体は非常に少なく、同業者でも探している人がいるくらいだという。

豊かなバリエーションと時代背景を楽しむ

45GSは、諏訪精工舎と亀戸工場(第二精工舎)が協力して生み出した成果であり、その背景を物語るディテールが随所に見られる。たとえば、文字盤に刻まれた「亀戸マーク」は、当時の製造拠点を示す証でもある。

「文字盤に亀戸マークが入っていて、手巻きのグランドセイコーも亀戸で作っていた時代だったんですね」(吉田さん)

「諏訪と亀戸で協力し合っていたからね。45GSはまさにその賜物ですよね」(松浦さん)

定番のセイコースタイルケースにとどまらず、さまざまなケースデザインや仕様が展開された。オクタゴンケースや、Cラインを思わせる丸みを帯びたデザイン、さらには金無垢の樽型ケース、最上位機種のV.F.Aなど、当時の挑戦的な設計思想を感じさせるバリエーションが揃う。

「僕はセイコースタイルから入ったので他の形は見ていませんでしたが、聞けば聞くほど気になってきました」(吉田さん)

「実は、45GSがグランドセイコーで初めてカラー文字盤を採用したんじゃないかな。オクタゴンのネイビーカラーが恐らく初めてだと思う。1969年というと高度成長期で、大卒の初任給が3万円弱。その中でこのRef.4520-8000の定価は約3万円。天文台クロノメーターは18万円で、クォーツのアストロンに至っては50万円、カローラと同じ値段だよ(笑)」(松浦さん)

「すごいですね。結構ノリノリだった時期な感じなんですかね」(吉田さん)

「手巻きとしてはやはり最高傑作になってるのかなという感じがしています」(松浦さん)

グランドセイコーの中でも、45GSは「最後の手巻き」として語り継がれる名機である。高精度を追求したハイビート、研ぎ澄まされたセイコースタイル、そして多彩なバリエーション。それぞれにストーリーがあり、ヴィンテージファンの心を掴んで離さない。今こそ、もう一度45GSの魅力に触れてみてほしい。

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