タイムカプセルにも埋められた国産初の自動巻きハイビート!グランドセイコー『61GS』の魅力

2025.08.04
Written by 編集部

出演:クリス×吉田

ヴィンテージ時計ファン、そしてファイアーキッズファンにもおなじみの、グランドセイコー『61GS』をフィーチャー。セイコー好きなスタッフ・クリスさんと吉田さんが『61GS』の魅力を深掘りする。まずはその歴史から振り返ってみよう。

1968年生まれのロングセラー

個体はグランドセイコー『61GS 10振動自動巻き 36000 1969年製 Ref.6145-8000』を見ていく。『61GS』が発売されたのは、1968年(製造は1967年)。“61系”は1968年の発売以降1975年まで製造・販売されていた。

「グランドセイコーの歴史の中で一番長い期間製造されています。つまり、一番人の目に触れているので、グランドセイコーといえば『ファースト』ではなく『61GS』と言えるのではないでしょうか」(クリスさん)

「GSはいろいろありますが『61GS』の特徴はなんですか?」(吉田さん)

「国産初の自動巻きハイビート!」(クリスさん)

「確かに文字盤を見ると“HI-BEAT”と入っていますね」(吉田さん)

『61GS』は『62GS』を引き継いで生まれたモデル。さらに遡ると『セイコーマチック』というモデルに辿り着く。『セイコーマチック』のクロノメーター表記をなくして『62GS』が誕生。『62GS』は初の自動巻きロービートして2年間しか製造されず、その次に誕生したのが『61GS』だ。

「いろんなムーブメントがあり、例えばIWCの自動巻きだとペラトン式があるじゃないですか? それも素晴らしい機構だけれど、実は1959年に『ジャイロマーベル』が『61GS』に通じる“マジックレバー方式”という引き爪と押し爪があり上下に動くムーブメントを積んでいるんです」(クリスさん)

セイコースタイルケースの完成形は『61GS』?

グランドセイコーといえば、セイコー独自のセイコースタイルケースの話は外せない。

「田中太郎さんがデザインした『44GS』がセイコースタイルケースを確立したモデルなのですが、私が思うには『61GS』こそ、セイコースタイルケースの完成形です」(クリスさん)

「どのあたりが『61GS』が完成形になったと思うのですか?」(吉田さん)

「『61GS』は厚みがあるんです。セイコースタイルケース良さは光と影のプレイ。厚みがあることにより立体感が出ますよね。光と影のコントラストや遊びを楽しめる一本だと私は強く思っています」(クリスさん)

吉田さんは『45GS』ユーザーで薄型のケースの方が好みだったが、クリスさんの話を聞いて『61GS』にも興味が湧いてきたようだ。

日本ではレアなモデルも。バリエーション豊富な『61GS』

『61GS』は国産初の自動巻きハイビートであり、厚みのあるセイコースタイルケースが大きな特徴として挙げられるが、バリエーションが豊富であることも言及しておきたい。

「ほかのグランドセイコーと比べても『61GS』はバリエーションが多いんですよ。私が確認できている範囲でお伝えすると、ムーブメントは7種類ございます。最後に5がつくのがデイト、最後に6がつくのがデイデイトです。Cal.6145A、Cal.6146Aがスタンダードな機械。その上にスペシャルなCal.6155AとCal.6156Aがあります。さらにスペシャルなのがV.F.Aです。V.F.Aは3個のムーブメントが存在していて、Cal.6185A、Cal.6185B、Cal.6186Bがあります」(クリスさん)

「つまり『61GS』は大枠では、スタンダードな61GSとスペシャルな61GS、そしてV.F.Aと3種類ある認識で合っていますか?」(吉田さん)

「大枠では合っています! 実はなんと51バリエーション確認できています。ケースの種類は確か10通り。セイコースタイルケースではなく、座布団ケースの『61GS』があったり、日本のカタログには載っていない『61GS』もあったりするんですよ」(クリスさん)

日本のカタログには載っていない『61GS』は、シンガポールやマレーシアなどで展開されていたという。デザインはCライン型で、コンビや金無垢のモデルが存在していた。もし日本国内で見かけることがあれば、かなり貴重一本であることは間違いない。

5000年後に掘り起こされるロマンある時計

ここまで『61GS』の基本情報を振り返ってきたが、何かユニークなエピソードはあるのだろうか。

「1970年にも大阪万博がありましたが、その時に埋められたタイムカプセルに『61GS』が入っています! 確かデイデイトで当時最高峰のクオリティ。掘り起こされるのは5000年後らしいですよ。ストーリー性のあるモデルです」(クリスさん)

1970年に埋め、2000年に1度確認のために掘り起こされたようだ。クリスさん曰く、そこからは100年ごとに検査をし、5000年後に掘り起こして開封する流れになっているという壮大なプロジェクトである。

「5000年後の世界に『61GS』があるということですもんね。すごくロマンがあります。オメガの『スピードマスター』も月に行った時計としてストーリーがあるじゃないですか? それに近いものを感じました。5000年後にどれくらいアンティークウォッチ・ヴィンテージウォッチが残っているかわからないですけれど、5000年後に掘り起こされるなんて、月に行ったのと同じくらいのロマンを感じます」(吉田さん)

「いろんな人の想いや技術が集結したすごい時計ですよね。5000年後まで待てないので、みなさん今すぐゲットした方がいいと思います!」(クリスさん)

セイコースタイルケースの『61GS』は人気が高く、入荷と同時に売れていく。

ちなみに、クリスさんのお気に入りはスペシャルバージョンの『61GS』。ラグが若干斜めに細くなり、シャープさが増すからだという。

当時スタンダードは日差±3〜5秒、スペシャルが日差±3秒、V.F.Aが月差±1分(日差では±1〜2秒)の精度だ。

あなたはどんな『61GS』が好みだろうか。ファイアーキッズの店頭に足を運んでもらえれば、こうした時計談義に花を咲かせながらお気に入りの一本を見つけることができる。

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