秋元剛が語る。父・千代の富士から受け継いだ3本と自ら選んだ3本のヴィンテージ腕時計
時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。
ファッション業界で活躍しながら、ヴィンテージ腕時計を愛する秋元 剛さん。ファッション誌「commons&sense」での編集・広告営業を皮切りに、セレクトショップのディレクションやPRを経験。第58代横綱・千代の富士の長男でもある秋元さんは、現在は千代の富士にまつわる企画運営や飲食事業を家族と手がけつつ、ファッションブランドのPR活動も行っている。
今回は、父の面影を感じさせる1本から、自分らしい直感で選んだ1本まで、秋元さんが語る「愛用するヴィンテージ腕時計6本」を紹介する。
父から受け継いだ3本。千代の富士が選んだ意外なドレスウォッチ
秋元さんがまず見せてくれたのは、父である千代の富士から譲り受けた3本だ。ラインナップはこちら。
・パテック フィリップ『カラトラバ』(イエローゴールド)
・カルティエ『バロンブルー エクストラフラット』
・ブレゲ『パーペチュアルカレンダー』

「父は晩年は大ぶりで存在感のある時計を好んでいましたが、現役時代に愛用していたのはクラシックで小ぶりなものが多かったようです。特に『カラトラバ』は繊細で、父の印象とは少し違う意外性を感じますね」
千代の富士といえば、土俵での力強い姿を思い出す人も多いだろう。しかし実際には、ボリュームのある時計を愛用する以前は、小ぶりでエレガントなドレスウォッチを身につけていた。
パテック フィリップの『カラトラバ』は、時計以上にファッションのアイテムとしても存在感を放つと話す。秋元さんは「何も考えずに着けるくらいがちょうど良い」と笑う。フルゴールドというと派手に思われがちだが、ケースやブレスレットにはマットな質感があり、むしろ肌になじむという。
「時計というよりはブレスレットに近い感覚で、今は男性でもゴールドのジュエリーを自然に取り入れる人が増えています。だから、意外とラフに着けちゃうのが良いと思うんです」と秋元さん。日本人の肌色とも相性が良く、ホワイトやブラックの文字盤よりも柔らかに馴染むゴールドダイヤルは、着けた瞬間に上品な統一感を生み出す。
秋元さんは続ける。カルティエの『バロンブルー』は父から生前に譲られた1本だという。
「大きく見えますが、とても薄くて、腕に吸い付くような装着感があります。僕は普段大きいフェイスの時計は好みではないんですが、これはバングルのように馴染んで気に入っています」
また、「勝負っぽい時やビジネススーツのような装いの時は、ブレゲの『パーペチュアルカレンダー』を着けています」と話す。機能性もありながら華やかなモデルはビジネスシーンに最適だという。
父の力強さとは対照的に、繊細なデザインの時計を愛した横綱。その選択に、意外な一面が垣間見える。
自ら選んだ3本。直感で選ぶファッションとしての腕時計
秋元さんはアパレル業界で長年働き、PRやディレクションを手掛けてきた。そんな彼にとって時計は「ムーブメントよりも見た目」で選ぶ存在だ。
「時計好きの方は機能やムーブメントを重視されることが多いと思いますが、僕はファッションの一部として捉えています。『今日の服装にはこれを合わせたい』とか、『シルバーのメガネだから、シルバーの入った時計にしよう』といった具合です。結局は直感でカッコいいと思えるかどうかですね」
そんな彼が自分で購入した3本がこちら。
・ロレックス『チェリーニ』(レディースモデル)
・ロレックス『オイスター』(アフターダイヤル仕様・星模様)
・パテック フィリップ『カラトラバ』(1986年製)
特に印象的なのが、カルティエのレディースモデルで、イエローゴールド×ホワイトゴールド文字盤の『チェリーニ』だ。
「レディースサイズなので小ぶりなのですが、他にはない文字盤のデザインに惹かれて買いました。バンドも先細りのものをストレートに替えてもらい、アクセサリーやバングルと一緒に着けています。人から『その時計どこの?』とよく聞かれることも多いですね」
普段からジュエリーは、ゴールドとシルバーをミックス着けしているという秋元さん。文字盤に2色入ることで、手元のコーディネートの時にも、重宝している1本だと話す。
ロレックスの『オイスター』は、星が散りばめられたアフターダイヤル仕様。「もちろん市場価値を気にされる方は多いと思いますが、やはり自分の中での価値って大事にしているポイントかもしれないです」と、オリジナル性にこだわらず、自分の直感を信じて選んだモデルだ。

「ガシガシ使っているので傷だらけですが、シルバージュエリーの分量が多い時に着けることが多いかもしれません」と、ファッションに合わせて日々腕時計を選んでいることがわかる。
そして最後の1本は、自身の生まれ年である1986年製のパテック フィリップ『カラトラバ』。
「1980年代はクォーツの普及期で、機械式時計の個体数が少ない時代。だから見つけるのが難しかったのですが、出会った瞬間に『すぐ買います』と決めました。僕にとっては特別な1本です」
シンプルなデザインで、ファッションや場所を選ばず着けられるデザインだが、生まれ年のヴィンテージ腕時計ということもあり、特別視しているために頻繁には着けていないと話す。

寄り添う1本だけど、日々のコーディネートを意識
秋元さんが愛用する6本のヴィンテージ腕時計は、単なるコレクションではない。父から受け継いだ繊細なカラトラバ、意外性のあるバロンブルー、複雑機構を誇るブレゲ。そして、自分らしい直感で選んだチェリーニやオイスター、生まれ年のカラトラバ。
「人生に寄り添う1本なんですけれども、そこプラス『日々のコーディネートに何かこういったものがあったら』みたいな感じでも見ちゃいますね」と秋元さん。
彼の選択には「ファッションとしての時計」という視点が貫かれている。ファッションとして楽しみながら、世代を超えて受け継いでいく。そんなヴィンテージ腕時計の魅力が詰まっている。
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