【今月の1本】藤井 翔(副店長)柔らかなフォルムがいい味を出している1969年製のオメガ『シーマスター』。なかでも希少なクロノメーターモデルがオススメ
シーマスターといえばダイバーズだが…
今回オススメしたいのは、1969年製のオメガ『シーマスター』オートマティックモデルです。『シーマスター』といえば、現在はダイバーズウォッチとして認知されています。ベゼルにメモリがついた逆回転防止ベゼルで、いかにもダイバーズという、まさにスポーツウォッチ然としたデザインが特徴となっています。
しかし、60年代から70年代にかけての『シーマスター』は、スポーツウォッチというよりも、どちらかといえばドレスウォッチっぽいデザインでした。ベゼルが薄く、柔らかなフォルムは、ロレックスの『エアキング』などにも似た感じです。それがこの時代のスタンダードな『シーマスター』だったのです。
ちなみに映画『007』シリーズで、ジェームス。ボンドがダイバーズウォッチの『シーマスター』を着用しはじめたのは、1990年代以降なのです。
この個体はケースに磨きがそれほど入っていないようで、痩せてはいません。69年製というと、もう53年も前のものですが、文字盤、針、そして、インデックスもキレイな状態を保っていて、とても稀少だと思います。
とくにこのモデルは、搭載のムーブメントが自動巻きCal.564。スイス・クロノメーター検定をパスしたもので、『コンステレーション』などにも搭載されている高級機です。『シーマスター』は人気モデルだったので、結構な本数を製造しているかと思いますが、クロノメーターは稀少です。
この年代のオメガならではの機構
時、分、秒に加え、デイト表示が3時位置に配されていて、リューズを一段引くことで時刻合わせを、二段引きでカレンダーが送れるという、この年代のオメガならではの面白い機構を持っているのも特徴です。
また、5連のライスジュビリーブレスレットが装着されているのも大きなポイントです。オリジナルだと思いますが、ブレスレットは金属なので、伸びたり、ヨレていたりすることが多いのです。コマが細かく繊細ながら、ノビやヨレがほぼない状態を保っていて、稼働範囲も広く、つけ心地のいいブレスレットを実現しています。
『シーマスター』は人気モデルで、製造本数も多いことから価格的には10万円台後半が相場だと思います。ただ、ファイアーキッズのこのモデルは、コンディションも良好ですし、クロノメーターという付加価値もついています。いまついている18万円という価格は、とてもバランスがいい設定だと思います。
ダイバーズではないですが、日常で使用する場合、それほど気を使わなくてもいい時計だと思います。オメガもロレックス同様、世間的に認知されているメーカーですので、人に見られても「いい時計だなぁ」と思ってもらえる1本です。
とくにアンティークの柔らかい感じは、他では出せない“味”だと思います。