希少な『クロノマスター500m ダイバー』の魅力とその詳細解説

2023.04.22
Written by 編集部

出演:野村店長×クリス(販売スタッフ)

こだわりすぎて売れなかった時計

 今回ご紹介するのは、野村店長が時計を目の前にして「すでに圧倒されている」と語る、シチズンの『クロノマスター500mダイバー』だ。二人とも口を揃えて「格好良い」と表現するこの時計は、「実在していたのか?」と思うほど珍しい代物だという。

「発売当初はあまり売れることもなく、今でも存在を知らない人が多いのでは?」と野村店長。その理由をクリスさんが尋ねる。

「おそらくセイコーの方が売れていたから。セイコーはある程度の球数があるけれどシチズンは球数がない。クロノメーターにしたり、こだわりがすぎちゃったりして、たぶん採算度外視で作って儲からなかったんだろうね」(野村店長)

 精度と安定性を測るクロノメーター検定所ができたのは1969年こと。『クロノマスター500mダイバー』は1969年製のため、クロノメーター最初期の時計だ。1960年代前半に“シチズンクロノメーター”を製造した時も、採算度外視で製造打ち切りになったという。

 野村店長は「(最初期だから)コストもかけたし売れなかったし、とっととやめちゃえという風になっちゃったのだと思う」と、長く流通しなかった理由を分析する。

 それを聞いたクリスさんは「なんか寂しくなってきました……」と一言。しかし“売れなかった時計”の言葉で片付けるには惜しいほどの魅力が『クロノマスター500mダイバー』にはある。

「相当頑張って作ったのだと思うよ。造りの良さからいったらね。外装の部品はほとんどをワンオフで作っているから、交換パーツを探そうとしてもない。コンデションが良いものを買うしかないね」(野村店長)

 中の機械はほかのクロノマスターと共用できる部分もあるため、クロノメーターほど中のパーツ交換は難しくないという。ただし、リューズやベゼルを無くした場合には交換が難しいため注意が必要だ。野村店長は「程度のいいものを買ってください」と改めて強調する。

『クロノマスター500mダイバー』

シチズンが最初に出したダイバーは何?

 シチズンが最初に出したダイバーは何かご存知だろうか。

 1960年代に発売された『クリスタル デイト 150m ダイバー』である。そしてその次に発売されたのが『クロノマスター500mダイバー』だ。

「150mからいきなりポーン!って500m? シチズン素晴らしいですね。セイコーに負けないぞ!みたいな勢いで」と驚きを隠せないクリスさん。

 セイコーに負けていないところは、クロノマスターでありクロノメーターであるところ。野村店長は「セイコーのダイバーではクロノメーターはない。そこがシチズンのこだわり」だと力説する。そのほか、具体的にはどんな特徴があるのだろうか。

1960年代製造とは思えない高い技術力

 メルセデスハンド(ベンツ針)も『クロノマスター500mダイバー』の特徴のひとつに挙げられるだろう。ご存知のとおり、メルセデス・ベンツのエンブレム“スリーポインテッドスター”に似たデザインが短針に施されている。これまた国産時計の中では珍しい仕様だ。

『クロノマスター500mダイバー』は、1953年に発売されて以来愛されているロレックスの『サブマリーナ』を意識したのではないかと推測する野村店長。少し硬めのベゼルはロレックスとは違い、1分ごとに回転する。このタイプのベゼルは『サブマリーナ』では1980年ぐらいに登場したことを考えると、だいぶ早くから採用されていることになる。

「分厚いガラスを採用しているし、ベゼルを回す感覚も違うし、夜光塗料の入れ方もロレックスより先を行っている。本当に技術力がすごいよ。サブマリーナもクロノメーター5512とかあるけれど、これは国産初のクロノメーターダイバーズ。すごい存在感!」と絶賛する野村店長。1960年代のものとは思えない仕上がりで、珍しすぎて滅多に触る機会がない時計だと目を丸くする。

 そこそこ市場に出回っているセイコーの600mダイバーなどに比べ、この『クロノマスター500mダイバー』は珍しすぎて個体同士を比べることが困難だ。野村店長はこのベゼルが異常に硬いのか、それとも普通なのかはわからないと話す。

気になるお値段は? そしてどんな人にオススメ?

「珍しすぎて探している人もいないのでは?」と語るほど、野村店長のキャリアのなかでも探している人に会ったことがないという。それほど珍しい『クロノマスター500mダイバー』はどんな人にオススメできる時計なのだろう。

「人が持っていないものを欲しい人。もちろん格好良いのだろうけれど、人が持っていないものを欲しい、それだけだろうね。変にプレミアも付いているし値段はズバリ高いです! 時計以上のお値段のような気がしてならない」(野村店長)

 そして、気になるお値段は……

 150万円弱!

 野村店長は「国産のダイバーズに150万円出す人って、人が持っていないから欲しい。それだけだよね」と改めて語る。

 紹介しているものは、多少の傷や使用感があるものの綺麗な分類のようだ。クリスさんは「またそれがアンティーク感があって良いですね。ロレックスのスポーツモデルやサブマリーナーが好きな人は多いじゃないですか? そういう人は一度見てみても良いかもしれないです。でも正直に言って、サブマリーナーを見慣れていたら、これを見ても欲しいとは思わないかもしれないですね(笑)でも、私は好きですよ、味があって」とオススメする。

「サブマリーナーでちょっとレアなモデルを探したら、300〜500万円はすぐに行っちゃうよ。レアといわれるサブマリーナーはだいたい扱ったことがあるけれど、こんな時計はないもん!」と言いながら、腕に着けてみる野村店長。「似合いますよ、野村さん!」の一言にまんざらでもない表情を浮かべる。

 その大きさゆえに『サブマリーナー』は買っては売る、を繰り返しているという野村店長から見ても『クロノマスター500mダイバー』は『サブマリーナー』よりも存在感があるようだ。存在感抜群であるため、比較的体格の良い人の方が似合うだろう。

「クリスくらい腕が太い方が格好良いよ」の言葉にすっかり買う気になっていたクリスさんだったが、野村店長はまだ売らずに店内に飾っておきたいようだ。希少性があるため、クリスさんは同じく希少性の高いセイコーの『天文台クロノメーター』の横に飾っておきますか?と提案。それぐらい希少性のある時計である。

 そのほか、『サブマリーナー』との違いはどこにあるのだろうか。

「サイズは大きいです。サブマリーナーと違ってラグ足がピーンと伸びているので、ベルトがストンと降りてくる感じはありますね。17ぐらい以上の手首がないと、ちょっとはみ出しちゃいます」(クリスさん)

「でもこれはラバーが本来の姿。ラバーを着けるとまたこれが格好良い。海外メーカーはステンブレスが多いけれど、国産メーカーはラバーが多いんだよね」(野村店長)

「コレクターであれば1本なくてはいけないモデルじゃないですか?」というクリスさん。それに対し「本当はそう言われてもおかしくないんだけれど、シチズンのダイバーコレクターはいるのかな? セイコーのダイバーを揃えたいという人は多いけれどね」と返す野村店長は、「俺は見た瞬間に欲しいと思ったから、たぶん変な人なんだと思います(笑)」と語った。

裏蓋も必見!シチズンの意気込みを感じる“幻の時計”

『クロノマスター500mダイバー』は裏蓋が格好良い!

 クリスさんが「孔雀のようにも見えるし、アミューズメントパークって感じもありますよね?」と独特の感性で表現するこの裏蓋のデザインは、やはりグランドセイコーやキングセイコーに対抗しているメダリオンだといえるという。シチズンのクロノマスターシリーズなどはこの裏蓋を採用している。

 そのほかの特徴として、もちろん防水性が高いためケースもしっかりしており、クリスさんが「シュッとしていて良いですね」と語るリューズガードも付いている。

「クロノメーターの機械を積んだ時点で、シチズンの意気込みが感じられる時計だよね」(野村店長)

 すり鉢状になった文字盤のデザインやカジュアルな見た目から、「スケボーやスノボをやる人に似合いそう」と話すクリスさん。しかし「スケーターには着けてほしくないな(笑)一発で“ガチャン”と割れてしまうかも」と危惧する野村店長。やはりダイバーは陸より海の方がお似合いらしい。

 最後に、野村店長にシチズン『クロノマスター500mダイバー』とは?を聞く。

「幻だね。本当に幻の時計」(野村店長)

 人とかぶらないレアな時計を探している人は、ぜひ店舗で実物を見てみてはいかがだろうか。珍しい時計を代表して、セイコーの『天文台クロノメーター』と一緒に飾ってあるかも……!?

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