ブランド最古のコレクションは、レーシングモデルの元祖『オータヴィア』
150年を超える長い歴史
タグ・ホイヤーは、19世紀からクロノグラフをベースに発展してきたブランドだ。150年を超えるその長い歴史は、スポーツ・ウォッチの歴史ともいえる。なかでもモータースポーツとの関わりが深く、極限のスピードに対する計時を重ねることによって精度が高められ、現在のスポーツシーンで当たり前のように見られる1/10、1/100、1/1,000秒といった計時を世界で初めて成功させている。
また、F1グランプリとの結びつきも有名だ。それは1969年F1ドライバー、ジョー・シフィールのスポンサーを務めたことに始まる。そして、その頃から本格的F1に関わっていき、71年には名門スクーデリア・フェラーリとパートナーを組んで計時を担当。85年からは、マクラーレン・チームと長いパートナーシップを結んでいる。その間、92年から2003年までF1グランプリの公式タイムキーパーを務め、現在は当たり前となっているコンピュータを連動させた計時システムを構築。レース戦略を含め、モータースポーツに大きな影響を与えている。
そんなタグ・ホイヤーにあって、とても重要なコレクションが『オータヴィア』。同社でもっとも古いコレクションで、レーシングモデルの元祖ともいえる腕時計である。
タグ・ホイヤーの歴史に“オータヴィア”の名が初めて登場したのは1933年のこと。当時の主力プロダクトであった自動車や航空機のダッシュボードタイマーの名称として使用されたのである。これは60年代初頭まで、約30年間続いたという。
このオータヴィアという名は造語で、「AUTomobile(自動車)」と「AVIAtion(航空)」を組み合わせてネーミングされた、ということだ。オータヴィアが腕時計において使用されるようになったのは、1962年にクロノグラフコレクション『オータヴィア』を発表してからである。
初めて回転式ベゼルを採用
『カレラ』同様に、4代目社長であるジャック・ホイヤーの主導によって誕生した『オータヴィア』は、初めて回転式ベゼルを採用するなど画期的な機能を装備していた。39㎜というケース径も当時としては大きめで、これが高い視認性に一役買っている。
ダイヤルのデザインはシンプルで、バーインデックス、バー針が採用されている。ほぼスタイルを変えずにつくられていたが、3カウンターも2カウンターも存在し、なかには秒針がレッドカラーになっているものなど、それなりのバリエーションがある。
この手巻きの『オータヴィア』は、62年から69年まで製造された。
その後、ホイヤー・レオニダス、ブライトリング、ハミルトン-ビューレン、デュボア・デプラの企業連合が69年に開発した自動巻きクロノグラフムーブメントCal.11、そしてそれを発展させたCal.12を搭載したモデルが、70年代初頭に製作されている。
それ以降、しばらく製作されていなかったが、2017年にインターネットでのファン投票を得て、復刻されたこともあり、ホイヤーでも人気モデルのひとつとなっている。
アンティーク市場にある『オータヴィア』は、約10年ほどしか製作されていない希少なモデル。カーレースという過酷な状況に耐えうるように堅牢につくられているので、状態のいいものは長く使用することができる。オススメである。