【ファイアーキッズ・スペシャル座談会】いまアンティーク時計市場はどうなっている?④
A=アンティーク時計店・店長 B=マーケティング業・時計愛好家 C=投資家・時計コレクター D=時計ライター
座談会第4弾は、時計店が数多く集まる中野でのこと、そして、買取価格の話についてになった。アンティークウォッチをどのような店で購入するのがいいのか、のヒントも語られている。
アンティークショップらしい売り方。
D:アンティークウォッチの昔からのファンは、現行のようなラグジュアリーな雰囲気が好き、というのとちょっと違うと思うんですけど、その加減が難しいですよね。
A:やっぱりそういう現行の雰囲気がちょっと違うな、と思っている人がアンティークショップに来てるような気がします。僕が中野に行って感じるところは、やっぱりお金の匂いは確かにするし、どこのお店に行っても楽しそうな雰囲気はないな、ということです。アンティークのお店にも、楽しそうな雰囲気はスゴく大事だと思っています。中野で楽しそうにしている雰囲気があるのは、まんだらけとか趣味のお店で、そこは楽しそうです。時計屋にいる人たちは楽しそうな感じがしないんですよ。
D:入りにくいですもんね。
A:そうですね、入りにくい感じです。
B:なんか怪しい雰囲気ありますよね。
A:ホント、そういう感じでした。
D:日本人は、そういうところに入っていくの苦手ですよね。外国人はそういうの平気ですが。
B:中野のショップで売ってるスタッフさんは、時計が好きな感じはしましたけどね。よく聞くのは「好きだけど、なんか。。。」みたいな。
D:いま中野はどうなんですか?時計を買いに来ている人の流れというのは。
B:先日行ったんですけど、1階はスゴくて、時計以外に食べ物屋やお菓子屋なんかがいっぱいあるので、お客さんが流れていました。3階はメインなんですけど人はそんなにいなくてお店に入ってる感じではなかったですね。ただJ店は相変わらずスゴくて入っていました。
C:J店は、あれだけ商品数があれば僕でもいくでしょうね。とりあえず見に行きますよね。
いま買取は抑えられている
B:あとは、K店ですね。日々ごった返してる感じがします。
A:ディーラーの間でもJ店の一人勝ちじゃないか、というような話は出てますね。K店は買取をかなり抑えているという話です。あのK店でさえも、いま、モノがダブついているのかなというような噂にはなっていますね。
C:K店ってなんであんなに人が入るんですか?謎なんですけど。
A:安いんですよ、実際に。
C:価格ですか?
A:そうですね。価格、クオリティですかね。
D:いま、K店には買いに来ている人が多いんですか?それとも売りにに来てる人が多いんですか?
B:買いに来てる人が多いんじゃないですかね、K店は。一応、J店だけはまだ買取はやっているというような話ですけど、買取価格はやっぱり安いですよ。
B:めちゃくちゃ安いです。
C:足元見る感じですか、J店は。
B:かなり見ますね。
A:うちに来るお客さまも「もうJ店には絶対査定は出さない」って言ってました。
C:バッタ屋みたいに叩くんですか?
B:もうバッタ屋ですよ。知り合いが結構珍しい『デイトナ』を持って行ったんですけど、J店に150万円とか言われて、Q店に行ったら400万円台(笑)で、K店持っていったら500万円とか。150万円で買ったら400万円くらいで売れるじゃないですかね。なので、市場がわからなかったら叩かれますよ。
C:結局、客を騙してるんですね。
注意したいお店の出自
B:上野の有名なお店も叩きますよね。
A:S店ですか?
B:そう、S店。めちゃくちゃ叩かれますよ。4桁の『エクスプローラーⅠ』を持って行ったら35万円って言われました。
C:本当はいくらですか?
B:最終的にK店で400何十万(笑)
C:マジですか!それは査定した人、素人なんじゃないですかね?
D:それはもう違う時計ですよね。
A:骨董屋さんの流れを汲んでいるお店はそんな感じですね。J店も中古カメラとかそういうのを扱う骨董屋じゃないですけど、そういうのに近い感じですし、S店なんかも骨董屋さんの流れです。変な話ですけど、騙して安く買って素人にびっくりするくらいの値段で売りつけるというのが、骨董屋さんですよ。
B:現行ではそういうのができないですけど、アンティークはそれができたりするんですよ。
A:そうですね。アンティークショップも骨董屋さんの流れを汲んでいるところ、質屋さんの流れを汲んでいるところ、本当に時計屋さんのところ、そしてコレクターがはじめたお店と、出自が違うんです。考え方もまったく違いますね。
D:そのお店がちゃんとしている、というのをどうわからせるのか。そこをどう表現するのかが難しいところですね。
A:そこなんですよ。
2023年のアンティークウォッチ市場は?
D:では最後に、2023年のアンティークウォッチ市場の見通しについて話したいと思います。
A:大崩れもないし、かといってスゴい伸びもないんじゃないかなと思っています。いまでずっと右肩上がりの雰囲気だったのですが、23年はそのまま継続なのかな、という感じはありますね。
C:歴史が証明する、ということにおいては、バブルにも踊らされないし、リーマンショックの時もそんなに下がってない、ということでいいんでしたっけ?
A:リーマンの時は、一瞬下がって半年ぐらいで相場を戻してましたね。
C:じゃあ、恐るるに足らずなんですね、不況でも。
A:そうですね、比較的堅い感じです。ただ、一時的にリーマンショックの時は買取が殺到するということがありました。でも長い目で見ると、リーマンショック前の価格よりも高くなったということになりました。
B:いま知り合いから連絡が来たんですけど「現行は全く動きません」と。
A:中野もそんな感じだとは聞いてますけどね。
C:ヴインテージブームみたいなのが来ているという記事をどこかで見たんですが、それは時計にも来るんじゃないかと思うんですよ。ようはモノが値上がりしすぎていて、余裕がないというところがある。給料が上がらないが税金は上がる。可処分所得が下がるんだから貧乏になることは間違いないですよね。可処分所得が下がっているのにモノの値段が上がってる。だとすると欲しいものをなんとか買うとしたら、アンティーク、ヴィンテージの世界になりますよね。僕は価格が枯れていて、ある程度定着しているからこそ相場に関係ないんだな、と理解しました。時計もそこに着目される年になるんじゃないかな、と思うんです。
メーカーがやろうとしている値上げに踊らされないで欲しいですね。
D:メーカーも機械式時計は一生もの、というスタンスで売っているんです。そう考えるとアンティークウォッチはその流れの中にあるものということになります。彼らの理屈でいくと。
C:アンティーク、ヴィンテージも値上がりしていくと思うんです。なぜならグローバルプライスが上がっているから。だとすると、早いうちに買っておくのは悪くない投資だと思います。現実にアンティーク時計は過去数十年上がり続けています。ほっといても価格は上がっていくんですよ。
A:アンティーク時計業界に身を置くものとしては、時計の海外流出は避けたいと思ってます。取り戻すのには相当な時間がかかるので、なるべく国内で消費してもらいたいです。