オメガ・ロレックス・セイコーに見る、メンテナンスしやすい時計の特徴とは?

2024.02.23

出演:野村店長×高橋(販売スタッフ)

部品が少なくメンテナンスがしやすい手巻き時計

ヴィンテージ時計を扱うにはメンテナンスが必要不可欠だが、メンテナンスできるのか否か、不安をお持ちの方もいらっしゃるのでは? ということで、今回はメンテナンスがしやすいヴィンテージ時計を3本紹介する。

野村店長のチョイスによりオメガ 『30mmキャリバー Cal.286 シルバーダイヤル 1961年製』、ロレックス 『オイスターデイト 1960年代製 ブラックミラーダイヤル Ref.6694』、セイコー 『クラウンスペシャル 金張り 1963年製 オリジナル箱付き』の3本がラインナップ。すべて手巻きの時計だ。

販売スタッフの高橋さん曰く、手巻きの時計は部品が少ないためオーバーホール代が安く済み、部品が少ない分トラブルも少ないという。これらの時計は2〜4万円くらいでメンテナンスが可能で、高くても5〜6万円ほどだ。

野村店長は、オーバーホール代が安い理由を次のように語る。

「(これからの時計は)街の時計屋さんで分解掃除するように設計されている。今の時計はメーカーで分解掃除する設計に変わっているので、修理代も取り込もうという流れ。車もそうで、昔はどこにでも修理工場があってメンテナンスできるのが当たり前だったけれど、今はディーラーでやるのが当たり前になりました。そういったこともあり、現行品と違って安くメンテナンスできる」(野村店長)

「構造がシンプルで部品も丈夫。街の時計屋さんでも分解掃除できて、精度も出やすいですね」(高橋さん)

そのほか、この3本に共通する特徴はどこにあるのだろうか。

「基本的な構造が長く変わっていない時計。職人さんが嫌がらない時計をチョイスしました」(野村店長)

「(ロレックス オイスターデイト)これは精度が出やすいといわれるCal.1210」(高橋さん)

「そうですね、Cal.1210やCal.1220。Cal.1220はCal.1210の改良型。1990年くらいまで作っているので共用部品が多いですし、それだけ安定した機械ということです。構造がそんなに変わっていない。そういう意味ではCal.1200番台の機械はメンテナンスしやすく職人が嫌がらない時計です。微調整についても専用工具を使わなくていいタイプなので、より分解掃除が簡単な機械」(野村店長)

オメガの30mmキャリバーも、パーツが厚いことから扱いやすく、メンテナンスがしやすい。

「30mmキャリバーはいろんな系譜があって、30から始まって変わっていくじゃないですか? 部品はあまり変わらないですか?」(高橋さん)

「あまり変わっていないですね。あとはテンプ(反復運動の調整と制御を行うムーブメントの心臓部)まわりだとか。例えばこれも振動数が5振動ではなく5.5振動になっていたり、スムーステンプ(チラネジのないテンプ)になると精度もより安定したりするので、微調整も楽ですよね」(野村店長)

基本構造は変わらずに、少しずつアップデートされている状態だ。

セイコーは全般的にメンテナンスしやすい

セイコーのクラウンスペシャルは、高橋さんが「生まれて初めて聞いた」と語るCal.341を搭載している。

「これについては、特別メンテナンスがしやすいというより、セイコー全般がメンテナンスしやすいということです。例えば国産でも『リコーは嫌だな』とか『シチズンのクロノグラフはやりたくない』という職人さんがいるけれど、『セイコーが嫌だ』という職人さんは聞いたことがない」(野村店長)

「セイコーの3針の手巻きなんていったら、やりやすい?」(高橋さん)

「やりやすい! 一部の極端に薄く作ったものは嫌がる職人さんがいるけれど、セイコーの普通の3針やカレンダーや自動巻きを『嫌だ』という人はほぼいないですね」(野村店長)

今ヴィンテージと呼ばれるこれらの時計が発売された当時、シチズンの特約店などではない限り、ほとんどの時計屋がセイコーを取り扱っていたという。野村店長はその理由をメンテナンス性に優れているからだと分析する。

「当時はお店のご主人が分解掃除するのが当たり前だった。そして仕入れも担当する。仕入れして売ってメンテナンスをするなかで、自分がメンテナンスしにくい時計は扱わない。そういう意味でセイコーはメンテナンスしやすかった」(野村店長)

「おもしろい時代ですね」(高橋さん)

海外メーカーではオメガに注目

海外メーカーでメンテナンスのしやすい時計の筆頭に挙がるのはオメガだ。

「地方のお店でも『1社は海外の高級時計を扱いたい』というときに、ほとんどのお店がオメガをチョイスする。日本では古いオメガが流通しているじゃないですか? やはりそれが理由ですよね」(野村店長)

「オメガは“三種の神器”といわれたくらいの時計ですからね」(高橋さん)

「それだけ日本でオメガが売れたということ。メンテナンスしやすいから売れるんですよ」(野村店長)

「多く売れればより部品も流通してメンテナンスしやすくなる」(高橋さん)

古くて希少価値の高い時計には注意が必要

一方で、希少価値の高い時計を買うときは気をつけなければいけない。激レアといわれるような時計は製造数が極端に少なかったり、パーツの互換性がなかったりするので注意が必要だ。そして、とても古い時計もメンテナンスしづらいといえるだろう。

「1930年〜1940年代以前の時計となると難しいものも出てくると思います」(高橋さん)

「戦前の時計は精度が出ない問題がある場合もありますけれど、1950年代くらいから品質がグッと上がってくるので、それ以降の時計に関しては使いやすいのかなと思います。中でもセイコーのクラウンスペシャルは、分解掃除料金2万円ですから! この時計の機械がグランドセイコー ファーストのベースになっている」(野村店長)

外装の小傷に関しては、メンテナンスの一環として磨いて綺麗にしてもよいが、そのまま使い古された味わいを楽しんでもいい。ブレスに関しては、切れてしまっても直せるものが多くなっているという。

「ブレスも直せる時代になってきた。レーザー溶接などで直せるようになってきたので、以前に比べると深刻ではなくなったのかなとは思います。外装は金張りとかが剥がれてしまうと厄介ですけれど、再メッキをかけることはできるので、ケースの状態が良いものを選んでおけば間違いないです」(野村店長)

長く愛用したい人は、1950年代以降に発売されたもので、ある程度流通しているメンテナンスがしやすい時計かどうかを考慮して購入するとよいだろう。

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