【オーナーインタビュー】ついつい買っちゃう! 時計浮気性が、結局、手放せないロレックスとは?~会社役員 西田栄一 文=鈴木文彦
時計好きに「あなたの時計、見せてください」
今回は、大阪の建設関連会社の役員、西田栄一さんに聞きました。時計が好きすぎて、欲望のおもむくまま買って売っての西田さんが、いまハマっている時計、そして手放せないでいる時計とは!? タイトルのネタバレを無視しつつスタート!
15年間、加熱しつづけるクルマと時計への情熱
西田栄一さんは、鉄鋼大手企業の子会社で大手ゼネコンとともに仕事をする建設関係の会社の役員。現在、60代。若い頃からの、クルマ好きで、15年ほど前から、プライベートでも仕事でも、”色々と”余裕ができたので、趣味に時間もお金もかけるようになった。そこでデビューしたのが、機械式腕時計だ。
いまや遠い日の思い出となった機械式腕時計第一号は、タグホイヤー『カレラ』だった。アイルトン・セナ、アラン・プロスト、あるいはニキ・ラウダ。彼ら世界最速のヒーローたちとともに、誰もがタグホイヤーという名前を覚えたものだ……
「クルマ好きですから、ずっとタグホイヤーには憧れがあったのですが、ある時、通りすがりにふらっとお店に入って『カレラ』に一目惚れ。勢いで買ってしまったんです」
そんな高級時計を自分が買うとはおもっていなかったし『カレラ』という具体的なモデル名も知らなかったのだという。
それから数年、今度はブライトリングが気になりだして、でも『ナビタイマー』は高級すぎるし……と逡巡した挙げ句に『スーパーオーシャン』を買ってしまう。
「私はいまでもアナログ人間なので、雑誌で見て、気になって、お店に行って……それで買ってしまう、というのが続いていますね」
一度火がついたらもう、燃え広がるだけ。腕時計業界の王様「ロレックス」が気になりだすのは時間の問題だった。
でも、ロレックスならば新品でなくてもいいのでは?と考え、地元、大阪のアンティークウォッチ専門店を訪れたら『サンダーバード』を買ってしまった。
「自分がロレックスを欲しがるなんて、数年前では考えられないことで……浮気性なんだとおもいます。情報を見ていると欲しくなって。だから、買う時計の傾向はバラバラ。売ったり買ったりするのが楽しみになっています」
6年前に東京に転勤になり、そこで噂のアンティークウォッチ専門店「FIRE KIDS」をはじめて訪れた。同じ、時計好き、クルマ好きのFIRE KIDS創業者、鈴木雄士さんとはすぐに仲よくなり、プライベートでも付き合うように。
少し前に、鈴木さんが持っていたメルセデス・ベンツ『500E』のW124型、ポルシェがつくったメルセデスとして知られる歴史的な名車を譲り受けた。
「ずっと、メンテナンスとちょっとしたアップグレードを楽しんでいて、500Eにいくらつぎ込んだか……」
ほかにもっと現代的なクルマも持っているのに、結局、500Eがもっとも使っている愛車になっているという。
時計にはそれぞれに魅力がある
そんな西田さんが最近、散財しているのが、ジェラルド・ジェンタがデザインした時計。
「ジェラルド・ジェンタの時計は、ウォッチヘッドとブレスレットがひとつなぎのデザインになっているところに魅力を感じるんです。彼の代表作『ロイヤルオーク』にはじまって、『インヂュニア』……でも『コンステレーション』もいいですよね」
オメガ『コンステレーション』は、アンティークウォッチ入門者にもオススメできる時計ではないか?とのこと。
「私が偉そうなことはいえませんが、オメガの「Cラインケース」は見ていると欲しくなりますよね……でも、それで言ったら、どんな時計にもそれぞれに良さがあるとおもうんです。見た目もそうですが、持ってみて、使ってみてわかる良さもありますよね?」
要するに、時計が好きすぎて、ひとつに絞れないのだ。まさに時計好きである。
手放せない『デイトジャスト』
常に10本程度の時計を持ち、買っては手放し、手放しては買い、を繰り返している西田さん。そんな西田さんにも、一本だけ、手放せない時計がある。
「私がいまの会社の役員になったときにしていた時計なのですが、1972年製のロレックス『デイトジャスト』。当時、私は役員になると知らなかったこともあって、本当に驚いて……その時の時計。以来、この時計をしていると、なにかいいことが起こりそうな気がしているんです」
現在も会議や打ち合わせ、商談など、ビジネスシーンでお守り的に多用している。
「オーソドックスな三針、袖口にすっと隠れるサイズ。普通のデイトジャストですが、やっぱりいい時計ですね。私のデイトジャストの面白いところは、シルバーのダイヤルがパープルっぽく変色しているところです。似たような変化をしている個体はほかにもあるようなのですが、なかなか見かけない時計だとおもいます」
時計の魅力は男性が「自分を表現できる」ところ。女性でいえば、ハンドバッグに近いのでは? とのこと。
「自分からあからさまに主張はしないけれど、自分がどんな人間なのかを表現できる。そういうものって男性にとっては時計とクルマくらいじゃないでしょうか?」
時計好き、クルマ好きと、時計とクルマの話をするのは大好き。でも、職場では時計好きがおらず、寂しいのだという。西田さんは自分から、時計やクルマの話をするようなタイプではない。
「あ、デイトジャストといえば、最近、Ref. 1600、スムーズベゼル(ポリッシュベゼル)でミラーダイヤルっていうデイトジャストを買っちゃったんです。やっぱりロレックスはいいですよね。リセールバリューもあるし……」
時計好きと出会えば、話は尽きない。年末には東京に行く予定がある。一番の楽しみはもちろん、リニューアルしたFIRE KIDSに行って鈴木さんと会うことだ。
writer
鈴木 文彦
東京都出身。フランス パリ第四大学の博士課程にて、19世紀フランス文学を研究。翻訳家、ライターとしても活動し、帰国後は、編集のほか、食品のマーケティングにも携わる。2017年より、ワインと食のライフスタイル誌『WINE WHAT』を出版するLUFTメディアコミュニケーションの代表取締役。2021年に独立し、現在はビジネス系ライフスタイルメディア『JBpress autograph』の編集長を務める。趣味はワインとパソコンいじり。好きな時計はセイコー ブラックボーイこと『SKX007』。