オメガ『スピードマスター』の歴史・おすすめモデルを名品4本とともに再解説
時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。
オメガを代表する腕時計の1つである『スピードマスター』は、1957年に初代モデルが誕生してから70年近く経っているにも関わらず、不動の人気を誇る名作だ。今回はなぜ『スピードマスター』が有名になったのか、様々なデザインや機能を備えたおすすめの4本とともに、その魅力について語っていく。
オメガの代表的モデル『スピードマスター』の歴史とは?
オメガ『スピードマスター』は、1969年のアポロ11号の月面着陸の際に、宇宙飛行士のバズ・オルドリンが着用して月に着陸したことで世界中で広く認知されるようになり、有名になったモデルだ。
「月に行った年はクォーツショックの年なんだけど、そのおかげでスピードマスターはずっと作り続けてる。そんなモデルは本当にないよね」(野村店長)
「861という機械を1969年にはもう作り始めていたので、861は1990年代後半ぐらいまで。その後、1861というのに変わるんだけど、少しメッキが変わったかな」(野村店長)
「1969年の時点で完成されているということですか?」(宮崎さん)
「すごくない? そのくらい完成されたものなんですよ。現行品も基本デザインそのまんまだし、機械も完成品だし」(野村店長)
歴史の長い『スピードマスター』。1970年代以降は技術やデザインの変化により、自動巻きやクォーツムーブメント、新しい素材などが採用され様々なモデルが生まれている。
レアなのにプレミアがついていない“4th顔の5th”『スピードマスター 5th』
まず1本目は、定番中の定番ということで『スピードマスター5th 初期 1968年製 Ref.145.022』。1968年製の5thモデルは非常に珍しく、4thと5thが切り替わる僅かな時期に製造された「4th顔の5th」だ。
「本当は4thを出したかったけど売り切れです。月に行ったのが1969年なので、月に行った宣伝効果で売れたのはスピードマスター5thというわけで、スピードマスター4thはものすごい売れたとか、そういうのはないんですけど」(野村店長)
「5th以降売れていくという」(宮崎さん)
「世の中に5thは溢れているんだけど、この『4th顔の5th』というのがないんだよね。何が違うかと言うと、オメガマークがアップライトかという点だったり、キャタピラブレスだったりかな」(野村店長)
「ムーブメントは5thの861が入っていますね」(宮崎さん)
価格は108万円と、なかなかレアなモデルの割には「そんなに高くないね」という狙い目な5th。仮に4thでキャタピラ付きとなった場合は、倍の200万円前後くらいになってきていると言う。
「861は部品の点数が少なくなって、振動数を上げているから精度が高くなってメンテナンスしやすい。メンテナンス性の良さというのは5代目の特徴ですかね」(野村店長)
「維持もしやすいんですね」(宮崎さん)
「5thの機械はメンテナンスしやすいくせに、4thと同じ顔をしている。めちゃめちゃレアなのにプレミアが付いてない良い時計です」(野村店長)
製造期間が短くレア度も高い『スピードマスター マークⅡ』
2本目は、「顔や厚みが違いますよね」という『スピードマスター マークⅡ 1970年製 Ref.145.014』を見ていく。1969年〜1972年に発売されたスピードマスターの派生コレクション「マーク シリーズ」の初代モデルで、分厚く存在感のあるケースが特徴的だ。
「改良版ですよね。まず風防がガラスになっていて、ケースが頑丈になっているとか? あとデザインがだいぶ違います」(宮崎さん)
「頑丈にはなっているね。どこが頑丈というと防水性能を上げたんだよ」(野村店長)
「1969年の当時、どんな時計が流行り始めているかを考えると分かりやすいんだけど、ジェンタ系の時計なんかもラグが短くて、縦の長さを抑えてある感じ。結構分厚いし、存在感があるケースだけど、腕に乗せた時に意外と収まりが良い」(野村店長)
搭載された機械は861、防水性もアップしており、改良版のマークⅡは製造期間が短いためレア度も高いが、価格は49万8000円。チョコレート文字盤となっており、海外では100万円オーバーのモデルなので、かなりお得感がある。
「実は、自動巻きクロノグラフ時代が来ていたタイミングで、有名なのはエルプリメロとかクロノマチック、セイコー6139とかあるんですけど、それにも関わらずオメガは少し出遅れたので、マークⅡをやめてマークⅢを出した」(野村店長)
「デビューした時から宇宙に行ったモデルがいて、その後に自動巻きクロノグラフに挟まれた短命な悲劇の主人公みたいな」(宮崎さん)
自動巻きクロノグラフの『マークⅢ』を出すために製造が終了となった『マークⅡ』だが、復刻モデルが出たりと人気は高い。
初めてムーンフェイズが搭載された『スピードマスター プロフェッショナル』
3本目は「バリバリのクォーツ全盛期」に登場した『スピードマスター プロフェッショナル 1985年製 ムーンフェイズ Ref.345.0809 箱、ギャラ付き』だ。
「その頃にこんなぶっ飛んだ時計を出すというのは何か背景とかあったんですか?」(宮崎さん)
「1980年代前半ぐらいからドイツ市場でスピードマスターは意外と人気があったみたいで、1982年ぐらいからドイツ限定みたいなモデルがあったり、マークⅤという少し特殊な時計が出たりするんですけど、その流れで当時売れたのは日本とドイツぐらいなんじゃないかなと」(野村店長)
1985年に1300本限定で発売され、初めてスピードマスターにムーンフェイズが搭載された通称「スピーディームーン」。
「カレンダーとムーンを送れるようになっているのね。これは簡単に言うと、ベースの機械は861なのよ。文字盤の下のところにそれを追加しているので、どちらかというと、少し上の方に付いているでしょ? だから、ムーブメントの地板と文字盤の間にその機構を詰め込んでいるんです」(野村店長)
「だから裏蓋を開けると、機械的には861に見えるという。次のモデルにも言えるんですけど、ベースのトリコンパックスとかムーンフェイズとかカレンダー付けているやつは文字盤の下で車を追加してる感じなんですよね」(野村店長)
「そのレア度とこの綺麗な状態を鑑みたら、40年前の時計になりますからね、248万円はいかがでしょうか」(宮崎さん)
バランスの良さがひかる『スピードマスター オートマチック』
最後に紹介するのは、サイズがひと回り小さく、インダイヤルが少し離れている『スピードマスター オート 1991年製 Ref.ST175.0033 修理保証カードサービスBOX,修理明細,文字盤付き』だ。
「スピードマスターはインダイヤルが真ん中にキュッと寄っているんだよね、プロフェッショナルは」(野村店長)
「オールドのクロノグラフって結構離れ目が多くて、そこは魅力だったりもするんだけど、スピードマスターに最初搭載された321という機械は元々『27CHRO』と言われていて。C21という機械なんだけど、直径27mmの機械に対して40mm少しあるケースに入れるわけだから、真ん中に集まっちゃうんだよね、インダイヤルで」(野村店長)
「ケースとムーブメントの関係性でなっているということですね」(宮崎さん)
「スピードマスターの場合は頑丈が売りで、二重蓋なっていたりとか、構造上の問題でそれは仕方ないなという部分もあるんですけど、これはオールドクロノグラフの良さみたいな、バランスの良い顔」(野村店長)
昔は「オートマチックね」と結構馬鹿にしていたという野村店長だが、今見ると「バランス良いな、カッコいいな」と全く違った印象を持っていると話す。
「クロノグラフ用の時計に比べると、部品の点数が少ないからメンテナンス性は良いのよ。これが1番スピードマスター プロフェッショナルに似た顔をしている割に、安くてサイズ感も小さくて使いやすい50万円アンダー。これは良い時計なんじゃないの? と最近すごく思う」(野村店長)
「安心安全で信頼のおけるETAですし、これはどんどん広がっていきますね」(宮崎さん)
「広がり始めていて、値段も上がってきてる。良い時計が高くなるというのはもう仕方ないよねというところはある」(野村店長)
ロングセラーの『スピードマスター』は、モデルによってデザインや機能、サイズによって様々なタイプが存在しているため迷ってしまうかもしれないが、豊富なコレクションから自分好みの1本を探す楽しみもある。スピードマスターが気になる…という方は、ぜひ店頭で着け比べをしてみて欲しい。