
自動巻き、ステンレススティールケース、45㎜径 731万5000円
市場に登場するのは1990年代
パネライという時計ブランドがある。時計製造の歴史は1930年代にはじまっており、それなりに古いが、長らく軍用として使用されていたために、市場に登場するのは1990年代と比較的新しい。なので、ヴィンテージマーケットには少量のモデルが出回っているに過ぎない。ただ、堅牢で上質な腕時計なので、いずれヴィンテージ市場でも人気が出るのは間違いないだろう。
そんなパネライから新作ウォッチが出た。『ラジオミール オットジョルニ アイリーン エクスペリエンス エディション』だ。もはや使われることもなくなっていたがそれで、わずか30本限定という希少なモデルだ。大きなポイントは、その名にあるか「アイリーン」である。
これは1936年に建造されたパネライ所有のヨットのことだ。もはや使われることもなくなっていた90年近く前のクラシカルなヨットを、パネライが修復し蘇えらせたものだ。その修復も建造当時と同じく木材と鉄を組み合わせた方法がとられ、当時の肢体を完全に再現している。乗り心地も柔らかく快適で、まさにラグジュアリーなひと時を過ごせる乗り物である。
『ラジオミール オットジョルニ アイリーン エクスペリエンス エディション』は、そのアイリーンを改修する際に回収したブロンズが組み込まれているのである。アイリーンブロンズは、細心の注意を払って鋳造のプロセスで洗浄し、新しいブロンズとブレンドして、裏蓋のメダリオン、ベゼル、リュウズに使用している。それをステンレススティールケースにPVD(物理蒸着)処理をし、その後手作業でひとつ一つブラッシングし、ヴィンテージの風合いを与えるブルニート仕上げを施しているというのである。
また、粒子の粗いベージュの文字盤は、『アイリーン』の帆を想起させる。蓄光数字とマーカーも柔らかい色調でハイライトされており、温かみのあるヴィンテージのタッチを加えている。

ムーブメントは自社製
搭載のムーブメントはパネライ自社製手巻き「キャリバー P.5000」。パネライ伝統の8日間のロングパワーリザーブを備えた、機能的なものだ。ほとんどのコンポーネントは2枚のプレートの間に挟まれており、バランスコックと中間車だけが見えるようになっている。10㎜の大きなバランスホイールは、4つの外部調整ネジによる可変慣性設計を採用することで、分解せずに正確な調整が可能なのだという。トラバースブリッジによってサポートされるこのセットアップは、クロノメトリック性能を強化し、衝撃時の精度を維持するための安定性をもたらす効果がある。
レザーストラップには『アイリーン』が進水した年である1936のホットスタンプが施されており、ケースバックのブロンズのメダリオンには「EILEAN」という文字も刻まれている。

さらには、この『ラジオミール オットジョルニ アイリーン エクスペリエンス エディション』を購入した場合、新しい試みのサービスが付加している。それが「アイリーン エクスペリエンス」であり、今回は地中海エクスペリエンスと題して、イタリア・シチリア島を旅できるのだ。
内容はヘリコプターに乗って、上空からヨーロッパで最も有名な火山のひとつ、エトナ山の臨場感あふれる絶景を楽しんだ後、爽快なハイキングに挑戦。そして、その斜面にある地元の有名なワイナリーのひとつを訪れ、シチリアワインを堪能するのである。
腕時計を購入して、さまざまなストーリーに触れられる。新しい試みである。これも腕時計における愉しみのひとつである。
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