キングセイコーはグランドセイコーの妥協案ではない。10万円から購入できる人気ヴィンテージ腕時計3選
時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。
MLBロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手がイメージキャラクターを務めていることでも注目を集めている、日本の名門腕時計ブランド「キングセイコー」。シンプルで高品質ながらも洗練されたデザインが特徴で、時計愛好家から支持を集めている。
比較的安価に手に入るモデルが多いこともあり、グランドセイコーを買えない人が手に取るブランドというイメージが広がっているのも事実だが、妥協案として「キングセイコー」を選ぶのではなく、「これが良い」と自信を持って身につけられるブランドだ。今回は、キングセイコーならではの良さを、FIRE KIDSの松浦マネージャーとスタッフの宮崎が語る。
シンメトリーデザインが美しい名品『44KS』
まず1本目に紹介するのは、キングセイコーの手巻きモデル『1968年製 Ref.44-9990 44KS 2nd 後期 ノンデイト』。亀戸工場で製造された人気のノンデイトで、セカンドモデルの後期型だ。

「グランドセイコーと比較してみると、44GSは60万円後半〜70万円前半くらいなんですけども、44KSこちらは21万円です」(宮崎さん)
「買いやすいですよね。元々44KSは1964年に発表されていて、実は44KSとグランドセイコーのRef.4420、この辺は非常に機械自体のレイアウトも近いんです」(松浦さん)
セイコーらしいすっきりとした堅実なデザインに、ムーブメントは手巻きのCal.44Aを搭載し、ハック付きで25石の高級ラインとなっている。
「44GSは、44KSを元にしたんじゃないかな。44GSのキャップゴールドは、ケースや針を思いっきり44KSを使っているからね」(松浦さん)
「びっくりポイントです。確かにロゴが違うくらいでそっくりですよね」(宮崎さん)
「44KSはベストセラーモデルだよね。1960年代となってくると日本は好景気になってきて、腕時計が日本全国に広がっていって、尚且つ少し高級路線のものが売れ始める時代でもあるので、44KSというのはそれだけ人から認知されていて、非常に評判の高いだったということが言えるかなと」(松浦さん)
クロノメーター検定をクリアしたハイグレードモデル『45KS』
2本目は、キングセイコーのハイグレードモデル『クロノメーター 1969年製 Ref.45-8010 ハイビート シルバーダイヤル』。キングセイコーの中でも、特別感のある優秀級クロノメーター検定をクリアしたモデルだ。価格は20万円。

「当時すごく流行りだったCラインの型。この年代特有の雰囲気を感じられる1本です、しかもノンデイト」(宮崎さん)
「特にノンデイトは人気があるので、値段が上がってきちゃってますね。取り合っているような状況が続いてます」(松浦さん)
手巻き、ノンデイト、Cライン、10振動といった要素が揃った非常に人気の高い1本。最近は、キングセイコーやグランドセイコーから、この年代のモデルがよく復刻しているという。
「このモデルは出初めの時は、文字盤にスーペリアという文字が入るんですけど、日本でクロノメーターが発足した後、1970年代くらいになると、クロノメーター表記が入ります。なんちゃってじゃないちゃんとしたクロノメーターですね」(松浦さん)
「裏蓋のメダリオンにもクロノメーターと入っていて、細かい部分に意味を感じちゃうのは、ヴィンテージ好きな人あるあるですよね」(宮崎さん)
初めて諏訪精工舎で製造されたキングセイコー『56KS』
3本目は、諏訪精工舎初のキングセイコー『1973年製 Ref.5625-7111 56KS ハイビート』。10振動の流行りが落ち着き、8振動に戻ったモデルだ。10振動であるがゆえに部品消耗の懸念もあり、また時代とともに精度が上がったことで、振動数を抑えたモデルが製造されたという。価格は13万円。

「『10振動じゃなくても良くない?』みたいな技術の上がり方があったから8振動。一般の機械式時計も大体8振動なので、そこに合わせているんじゃないでしょうかね」(松浦さん)
「こちらは1973年製で、クォーツが出てきちゃった時代ですね。数年経つと精度が高いクォーツの時計が安く手に入るから、機械式時計はピンチでしたよね」(宮崎さん)
セイコースタイルケースは腕乗りが良いサイズで、非常に使いやすい。デイト表示機能を備えた8振動自動巻きに、スクリューバックケースの実用性の高いモデルだ。
「56KSとグランドセイコーの56GSは、ブランドとしての差はあると思うんですけど、ムーブメントや見た目だったりはすごく近いものがありますよね。中身を重視するとやはりキングセイコーだとめちゃくちゃ精度が良いです」(宮崎さん)
「KSはGSよりもバリエーションが豊富ですし、『でこれでいいや』という妥協の意味が入った選び方ではなく、『これがいいんだ』の選び方をしてもらえる時計なんじゃないかなと思ってます」(松浦さん)
比較的手に取りやすい価格ながらも、精度の高さや選べる楽しさがあるキングセイコー。「グランドセイコーとキングセイコーどちらが良い?」と比較されることも多いが、それぞれ良さがあるのは当然で、世間のイメージに左右されるのではなく、自分が「どんな軸」で腕時計を探すのかが重要ではないだろうか。
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