今こそ手に入れたい『56GS』の魅力とは? 最後のグランドセイコーに迫る

2025.07.24
Written by 編集部

時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。

「地味で普通だけど、これが良いんだよ」。ヴィンテージ腕時計を数多く見てきたFIRE KIDSの野村と大川が、『56GS』の魅力をあらためて語る。グランドセイコーのメカニカル最終期を飾ったこのシリーズは、機械式としての完成度、サイズ感、そして価格とのバランスから、今まさに注目すべき存在ではないだろうか。デイデイト・デイト・ノンデイトと3つのモデルを通して、その奥深さをひも解いていく。

小型化と実用性を両立した“最終形態”

まず『56GS』が面白いのは、「地味」と言われがちな存在であることだ。グランドセイコーの流れでいえば、62GS、61GSに続く最終世代。野村さんは「最終形態だね。面白みがないと言えば一番面白くない(笑)」と言う。だが、『56GS』はハイビート機として小型化・薄型化を実現し、巻き上げもスムーズ。トラブルも少ないという安定感がある。

「確かに、61GSのぐるんぐるん回るローターが好きという人もいるけど、『56GS』はそういう個性がないぶん、実用品としての完成度が高い。実は傑作なんじゃないかな」。野村さんのこの一言に、多くのヴィンテージファンがうなずくのではないだろうか。

しかもFIRE KIDSではまだ19万円前後から手に入れることができる。この価格帯でグランドセイコーの実用時計が手に入るのは、今だけかもしれない。

文字盤、仕様、素材で選べる楽しさ

「バリエーションが豊富なのも『56GS』の良さ」と野村さんが言えば、大川さんも頷く。「金無垢もあるし、ノンデイトやデイデイトも。今なら3仕様とも揃っている」。今回紹介されたのは、①アイボリーダイヤルのステンレス、②金無垢デイデイト、③金無垢ノンデイトというラインナップ。

注目すべきは、③の金無垢ノンデイト。繊細なリネンダイヤルが特徴で、「白樺」の原型のような佇まいだ。「いろんな角度から見たくなる文字盤。これは本当にカッコいい。GSって感じ」と野村さん。価格は78万円と安くはないが、金無垢でこの金額は「まだまだ安い」と言える。

また、日本語表記が可能な『56GS』のデイデイトは現在、外国人観光客に特に人気で、それも『56GS』ならではの魅力だ。「若い頃は『日本語にする人いるの?』みたいな感じだったけど、今はそれが逆にカッコいい」と野村さんは語る。経年変化を楽しめるヴィンテージならではの魅力も相まって、コレクション性は高い。

最後のメカニカルGSとしての価値

1970年代に、『56GS』は“最後のグランドセイコー”として登場した。「1974年ごろまで作られて、その後グランドクォーツに変わってしまう。だからこれは機械式GSのラスト」と野村さんは話す。だからこそ、時計好きにとっては一種の区切りとしての価値がある。

「普通の時計だけど、やっぱり良いんだよね。視認性も高くて、時間を正確に知る道具としてクオリティが高い。あと老眼にも優しい(笑)」と語る野村さんの言葉には、実体験からくる説得力がある。

現行品とは違う“味”を持ちつつ、クセがない分ベルトで遊べる自由さもある。しかもサイズ感が絶妙で、「着け心地も良いし、胸の収まりも抜群」と大川さんも太鼓判を押す。

「FIRE KIDSでは、ヴィンテージ初心者の方が最初の1本に選ぶのは、グランドセイコーやキングセイコーが多い」と大川さんは言う。その中でも『56GS』は、価格・品質・入手難易度すべてのバランスが取れた“最適解”といえる。

実は、以前は金無垢のGSがスクラップ目的で解体されていた時代もあったが、今は時計としての価値が再評価されつつある。「ちゃんと評価すれば、まだまだ安いよね」と野村さん。1本手に入れるなら今がそのタイミングかもしれない。

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