現行品派だった私がヴィンテージにハマった理由。4本の時計で語る“時計沼”入門記

2025.08.02
Written by 編集部

時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。

ロレックスの『デイトジャスト』を皮切りに、オメガ、セイコー、IWCと、現行品からヴィンテージへと趣向を変えていったFIRE KIDSスタッフの馬場。もともとは金融業界で働いていた彼が、なぜヴィンテージ腕時計の世界に惹かれたのか。4本の印象的な時計を軸に、その“時計沼”への歩みを振り返る。

金融から木工、そして時計店へ

FIRE KIDSに新たに加わった馬場さんに、ヴィンテージ腕時計にハマったきっかけを聞いてみると、ヴィンテージに興味を持つまでの意外な経歴が明らかになった。

「大学を卒業してから信託銀行で資金運用の仕事をしていたのですが、その後、人生の転機として飛騨高山で木工修行を始めたんです。そこから栃木の北欧家具工房に入り、輸入雑貨の販売なども経験しました。1950年代の北欧ヴィンテージ雑貨を扱っていたので、古いモノに惹かれる下地はその頃からあったのかもしれません」(馬場さん)

「FIRE KIDSにはどういうきっかけで?」(野村さん)

「資産運用の仕事は人と話すことが少なくて、『このままだと社会との接点がなくなってしまう』と思ったんです。そんなときFIRE KIDSの求人を見つけて、以前から動画を見ていたので『ここで働けたら』と即応募しました。最初はウォッチメイトに応募して落ちたんですけど(笑)、バックオフィスとして採用していただいて、今に至ります」(馬場さん)

時計が“他人に見せるモノ”から“自分が楽しむモノ”に

馬場さんが本格的な腕時計として最初に買ったのは、ロレックスの『デイトジャスト』だ。

「30歳の頃、社内で希望職種制度に通って運用の仕事に就けた記念に購入しました。タペストリーダイヤルでオイスターブレス。正直、それまでは『人から褒められる』『目立つ』時計が好きでした」(馬場さん)

FIRE KIDSに入社する前あたりから古いものを見るようになった馬場さん。そこから一気に趣味が変わり「今はもう新品は全然…(笑)」と話す。

「FIRE KIDSで小ぶりなヴィンテージ腕時計を手に取った瞬間に、『あれ? 小さいのにカッコいい』と思ったんです。大きい時計にはない収まりの良さやジャケットの袖口からの見え方が、自然に馴染んでいて。『小さい時計、アリかも』と思った記憶があります」(馬場さん)

ヴィンテージウォッチの魅力を4本の時計で語る

【1】セイコー『ロードマーベル』Ref.14056(1960年製)

「直径34mm程度と非常に小ぶりですが、落ち着いてるフェイスですし、主張しすぎる感じもないんですけど、自然に手に馴染んでいる感じがすごく気持ち良いんです」

【2】IWC『インヂュニア』Ref.3521(1993年製)

「このサイズ感で、遠目でもキラリと光るインデックス。小さいのに圧倒的な存在感があり、『小さい時計って実はこんなにカッコいいんだ』『自然に使いこなせるんだ』というのを発見した1本」

【3】IWC『ヨットクラブ』Ref.R811(1970年製)

「経年変化でシルバーが飴色に変わったダイヤルの美しさに衝撃を受けました。プラスチック風防のトゥルンとした丸みも相まって、何度も角度を変えて眺めたくなる」

【4】ロレックス『デイトジャスト』Ref.1601(1973年製)

「現行のものに比べて立体感のあるダイヤルや、くたびれたブレスのフィット感に驚きました。“伸びてる=ダメ”ではなく、自分の腕に馴染んだ造形美がそこにはあって、完全に沼ですね」

自分のための1本を見つけるということ

ヴィンテージ腕時計にハマってから、時計は人に見せるためのものではなく、自分が楽しむものへ変化したという馬場さん。

「昔、業界の先輩の人が言ってたんですけど、やはり現行の時計というのは、オーラを外に発している、『主張している』と言うんですかね。それに対してヴィンテージ腕時計は、引き込む引力があるみたいなことを言っていて」(野村さん)

「もしヴィンテージが気になっている方がいたら、一度店頭で手に取ってみてください。径の小ささや経年変化に戸惑うかもしれませんが、意外と馴染むものですし、実はメンテナンス費用も手頃だったりするんです。現行のロレックスを正規で修理した時は15万円くらいかかりましたが、ヴィンテージなら4〜5万円くらいのケースもあります」(馬場さん)

「でも、それも罠みたいな感じなので気をつけてくださいね。僕は持っている時計を全部メンテナンスに出したら破産します(笑)」(野村さん)

ヴィンテージ腕時計に興味はあるけれど、なんとなくハードルが高いと感じている方こそ、一度お店で実物を見て、触れてみてほしい。写真では伝わらない魅力やストーリーに、きっと心が動くはず。お気に入りの1本との出会いが、腕時計の楽しみ方を大きく変えてくれるかもしれない。

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